山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、 詩が生まれて、画ができる。

(夏目漱石 『草枕』より) 


故曰 知彼知己 百戰不殆
不知彼而知己 一勝一負
不知彼 不知己 毎戰必敗

故に曰く 彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず。
彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。
彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。

(孫子兵法 謀攻編より)


出其所不趨 趨其所不意
行千里而不勞者 行於無人之地也
攻而必取者 攻其所不守也
守而必固者 守其所不攻也

その必ず趨かざる所に出でて、 その意わざる所に趨き、
行くこと千里にして労せざる者は、 無人の地を行けばなり。
攻めて必ず取る者は、その守らざる所を攻むればなり。
守りて必ず固き者は、その攻めざる所を守ればなり。

(孫子兵法 虚実編より)


舎利子
色不異空 空不異色
色即是空 空即是色
受想行識 亦復如是

舎利子よ、
色は空に異ならず。空は色に異ならず。
色はすなわちこれ空、空はすなわちこれ色なり。
受想行識もまたまたかくのごとし。

(般若心経より)


子曰
学而不思則罔
思而不学則殆

子曰く、
学びて思わざれば罔(くら)し、
思いて学ばざれば殆(あやう)し。

(論語 為政編より)


あなたたちのうちで偉くなりたい者は、
かえってみんなのしもべとなり、
また、あなたたちのうちで頭になりたい者は、
みんなの奴隷となりなさい。

(聖書 マルコ 10章43-44節より)


喪己、斯喪人。
喪人、斯喪物。

己れを喪(うしな)えば、
斯(ここ)に人を喪う。
人を喪えば、
斯に物を喪う。

(佐藤一斎 言志録より)