報道発表




 独立行政法人通信総合研究所(理事長:飯田尚志、CRL)は、ハイビジョンの4倍の解像度を持つ800万画素超高精細CMOS動画像カメラを実用レベルで完成し、これを用いた超高精細画像ライブ伝送実験に成功しました。「同期バッファ並列伝送方式」を用いて、サッカー映像を国立霞ヶ丘競技場(国立競技場、新宿区)及び県立カシマサッカースタジアム(鹿嶋市)と当所けいはんな情報通信融合研究センター(京都府)の間で超高精細映像をライブ伝送することに成功しました。



<背景>
CRLは、次世代通信技術の基盤技術としてハイビジョンを超える超高精細画像処理技術とその伝送技術(超ブロードバンド通信技術)の研究開発を進めております。

<概要>
今回、世界で初めて、ハイビジョンの4倍である800万画素(3,840×2,048画素)の解像度を持つ超高精細動画像カメラを実用レベルで完成しました。また、新たに開発した「同期バッファ並列伝送方式」を用いて、MPEG2画像伝送装置(ハイビジョン相当)を4式並列使用し、このカメラで撮影した800万画素超高精細ライブ映像を、遠距離ライブ伝送(東京・鹿嶋−京都間)することに成功しました。
今回開発したカメラの撮像素子には、従来のカメラで主流であるCCDではなく、日本ビクター(株)が世界に先駆けて開発に成功したCMOS撮像素子技術を用いました。CMOSで実用レベルの画質を実現し、かつCCDでは困難であった、カメラシステムを実用レベルにまで小型化することにも成功しました。
これらの新規技術により、今回、国立競技場およびカシマスタジアムで行われたサッカー試合を、通信・放送機構(TAO)が運用する「研究開発用ギガビットネットワーク(JGN)」を用いて、競技場から当所けいはんな情報通信融合研究センター(京都府)へライブ伝送することに成功しました。

<今後>
今後、この基礎技術を超ブロードバンド通信(超広帯域・高速通信)の基盤技術として実用化する予定です。今回、開発した800万画素超高精細画像処理伝送技術を遠隔医療福祉、教育・エンターテイメント(特にスポーツ映像)分野等において応用展開し、実証・実用化する計画です。


<問い合せ先>
けいはんな情報通信融合研究センター
画像グループ 荒川佳樹
Tel: 0774-95-2470



<補足資料>

1.800万画素超高精細CMOS動画像カメラ

<従来技術>
800万画素レベルの動画像カメラはこれまでにも発表されていますが、まだ試作レベルであり、実用化された例はありません。また、その撮像素子にはCCDが使用されており、そのために大型の装置となっています。屋外に持ち出すことが出来るレベルに小型化された実用レベルのものはありませんでした。

<開発カメラシステム>
今回、デジタルスチルカメラ(デジカメ)に代表される高精細カメラ技術であるCMOS撮像素子を採用することにより、800万画素(3,840×2,048画素)超高精細動画像カメラを実用レベルで開発することに成功しました。
撮像素子には、従来の主流技術であるCCDとは異なり、小型化が容易で低消費電力であるCMOS構造の素子を新規に開発することにより、これまでの課題を一挙に解決しました。このCMOS撮像素子は、日本ビクター(株)が世界に先駆けて開発に成功したものです。 また、今回開発したCMOSカメラの画質は、現在の主流技術であるCCDと比較しても遜色のない実用レベルとなっています。
カメラの大きさも、通常のビデオカメラと同程度の大きさであり、屋外の使用にも十分耐えれる可搬性があります。今回の実験でも、スタジアムに持ち出して使用しました。

800万画素超高精細CMOS動画像カメラ


2.同期バッファ並列画像伝送方式 (超高精細画像伝送)

<ギガビットネットワークJGN>
今回、この800万画素カメラを国立霞ケ丘競技場(国立競技場:新宿区)および県立カシマサッカースタジアム(鹿嶋市)に設置し、競技場と当所けいはんな情報通信融合研究センター(京都府)の間を、「ギガビットネットワーク(JGN)」を用いてATM600Mbpsで接続しました。
なお、「研究開発用ギガビットネットワーク(JGN)」は、TAOが運用している研究開発用のネットワークです。

<同期バッファ並列画像伝送方式>
HD(ハイビジョン)画像伝送では、MPEG2が標準の符号化方式となっています。今回の実験では、800万画素(3,840×2,048画素)の画像を4つのサブ画像(ハイビジョン相当)に分割し、MPEG2画像符号化伝送装置4式を並列に用いて4並列伝送しました。
しかし、ただ単純に並列伝送するだけでは、伝送遅延等の理由により、各サブ画像間に「ズレ」が発生します。従来の並列伝送では、このズレをなくすために各サブ画像に時刻データ等を挿入する「時刻同期並列伝送方式」が一般的に行われてきました。この方式では、時刻データ等の付加データを各画像データに挿入する等の処理が必要であり、伝送系が複雑になります。
近年、ネットワークの品質は飛躍的に向上してきており、伝送路および伝送機器の遅延等のズレも少なくなってきています。このような前提のもとで、今回、「同期バッファ並列伝送方式」を新たに開発しました。この方式では「同期バッファ」を用いることにより、各画像伝送のズレを吸収し同期させます。このため時刻データ等の付加データを各画像データに挿入する等の従来方式の処理は不要となり、伝送系を大幅に単純化することができました。
また、MPEG2符号化方式においては、より符号化処理時間のバラツキが少ない「フレーム間非圧縮モード」を使用しました。これと「同期バッファ」を組み合わせることにより「同期バッファ並列伝送方式」を実現しました。

同期バッファ並列伝送方式



3.800万画素超高精細画像表示装置

CRLと日本ビクター(株)は共同で、これまでに800万画素(横3,840×縦2,048画素)の画像(ハイビジョンの4画面分)を1画面として表示可能なプロジェクタを世界で初めて開発しています。
このプロジェクタでは、日本ビクター(株)が開発した先進のテクノロジーである反射型液晶表示素子D−ILAを使用しています。今回は、このプロジェクタを表示装置として用いました。


4.伝送実験の概要

今回の800万画素超高精細画像伝送実験では、以下のサッカー試合のライブ映像を用いて、実証・評価を行いました。

カシマスタジアムに設置された超高精細カメラ(3月22日)


カシマスタジアムからけいはんなへ伝送された超高精細映像


<用語解説>

ATM:
Asynchronous Transfer Modeの略。音声やコンピュータのデータなど、あらゆるデータを53バイトの小さなセルに分割して送るデータ通信方式。

CCD:
Charge Coupled Deviceの略。電荷転送により高S/Nの撮像信号が得られる。製造工程が複雑で消費電力が大きく、画素数の多い撮像素子には向いていない。

CMOS:
Complementary Metal Oxide Semiconductor(相補性金属酸化膜半導体)の略で素子毎に撮像信号を取り出すことが出来る。従来S/Nが悪かったが、プロセス工程での精度向上と画素構成の改良等により、CCDと比較しても遜色ないレベルになってきた。
特に製造工程数が少ないことと,消費電力が少ないことから超高精細の撮像素子に向いている。

MPEG:
Moving Pictures Experts Groupの略。デジタル動画の標準的な圧縮技術。CD-ROMへの動画の収録を目的とし、1〜1.5Mbps程度のデータ転送速度に対応したMPEG-1、高品質なデジタルテレビ放送などへの応用を目的とし、4〜70Mbpsのデータ転送速度に対応したMPEG-2、電話などの低速な通信手段への対応も考慮し,標準化作業が進行しているMPEG-4等があります。