報道発表




 独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT。理事長: 長尾 真)は、NTTエレクトロニクス株式会社(以下、NEL。社長: 戸島 知之)とアンリツ株式会社(以下、アンリツ。社長: 塩見 昭)の協力を得て、100ピコ秒(100億分の1秒)以下の高速応答可能な光パケット通信用受信機と、毎秒40ギガビット(毎秒400億ビット)の速度でパケットネットワークの特性を評価する計測装置の開発に世界で初めて成功しました。この成果により、将来の大容量ネットワーク構築に向けた光パケットネットワーク実現に向けて大きく前進しました。また、これらの装置をスウェーデン王国ストックホルム市にて開催される光通信に関する世界最大規模の国際会議(ECOC2004、会期9月5-9日)に光パケット通信送受信評価システムとしてデモンストレーションしました。

<背景>
インターネットの普及と急速なブロードバンド化の進展で、基幹ネットワークにはますます大容量化が求められています。ネットワークを大容量化するためには、光ファイバー内の光信号を電気信号に変換することなく光信号のまま取り扱う光ネットワークを実現することが必要となります。NICTでは、将来の大容量光ネットワークを実現するための光パケットネットワークの研究開発を進めており、これまでに宛先ラベルの認識処理を光信号のまま行う超高速光パケットスイッチのプロトタイプを世界に先駆けて開発しました。

私たちが普段利用しているインターネットなどのパケットネットワークでは、情報が「信号の小包」(パケットデータ)として転送されます。パケットネットワークは原理的に、受信側で受け取るパケットのネットワーク内転送所要時間がパケットごとに変動します。つまり、パケット到着の時間間隔がゆらいだり、到着順序が変わってしまったりします。ときには、パケットの抜けが生じる場合もあります(別紙図1)。もちろん、私たちが普段利用しているパケットネットワークでは、このような問題は解消されています。しかし、これまでの光通信システムは、連続信号が転送されることを前提として設計されているために、連続信号の送信・再生は問題ないのですが、パケット状の信号を送信すると、受信側でうまく同期がとれず正確に情報を再生できない問題がありました。NICTはこのような問題を解消し、将来の基幹ネットワークの大容量化に応えるために、別紙図1のような断続的なパケット信号に対しても安定して動作する光パケットネットワークの研究を実施しています。

<今回の成果>
NICTはNELの協力を得て、断続的なパケット信号に対して高速動作する超高速光パケット通信用受信機を世界で初めて開発しました(別紙図2)。応答速度はこれまで報告されたものに比べ数百倍も速い100ピコ秒(100億分の1秒)以下を達成しています。これにより、受信機での同期を取る目的でパケット信号の先頭に付加される捨てビット列であるプリアンブルが必要でなくなり、無駄を省いた効率的なシステム設計が可能となります。また開発した光パケットネットワークの性能評価をするためには、ビット誤り率やパケット損失率と呼ばれる通信品質の指標を求める必要があります。NICTはアンリツの協力を得て、断続的なパケット信号に対しても安定動作し、パケット到着の時間間隔がゆらいだり、到着順序が乱れても上記指標を求めることができる計測装置を世界で初めて開発しました(別紙図3)。本装置は毎秒40ギガビット(毎秒400億ビット)のインタフェース速度のパケットデータまで計測可能です。また、これらの装置を、スウェーデン王国ストックホルム市にて開催された光通信に関する世界最大規模の国際会議(ECOC2004、会期9月5-9日)に光パケット通信送受信評価システムとしてデモンストレーションしました。



<問い合わせ先>
総務部広報室
大崎祐次
大野由樹子
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
広報室アドレス

<研究内容に関する問い合わせ先>
情報通信研究機構 情報通信部門
超高速フォトニックネットワークグループ
和田 尚也
Tel: 042-327-6371、Fax: 042-327-7035
E-mail: wada@nict.go.jp



<別 紙>

図1

図1パケットネットワークの概念図。パケットネットワークでは、パケットネットワーク内の様々な処理時間の変化や転送経路の変動により到着時間が変化します。ときには、パケットの抜けが生じる場合もあります


図2

図2開発した光パケット受信機。超高速光パケットネットワークの受信側で光パケットデータが 到着したときに、データの最初の1ビット目から同期をとって再生することができます。


図2

図3光パケット通信送受信評価システムの構成。黄色が背景の部分は、今回開発した光パケット受信機と性能評価装置を示し、青が背景の部分は、以前に開発した超高速光パケットスイッチのプロトタイプを示します。



<用語解説>

パケット交換
伝送路を複数のユーザ間で共有するための手法。ユーザ間で通信するデータをある長さに分割し宛先情報をつけたそれぞれをパケットと呼ぶ。ハブ(ノード)ではパケットの宛先を読んで宛先検索および中継を行う。インターネットはパケット交換を用いたネットワークの代表例。

光パケットスイッチ
光パケットのデータ部分を電気変換なく中継し、同方向に向かうパケットが同時に届いた時には、衝突を防ぐためにバッファに蓄えるハブ。既存のパケットスイッチでは宛先部分が電気信号に変換された後、宛先が照合され、パケットの転送経路が求められている。また、バッファは半導体メモリで構成されているため、データを電気信号に変えて格納する必要がある。

宛先ラベル
パケットの先頭に付ける宛先のアドレス情報。インターネットで使われているIPパケットでは、IPヘッダと呼ぶデータ領域の中に宛先のアドレス情報が含まれる構成になっている。光パケット交換ではパケットの宛先の情報をそれぞれ特定の光信号パターンで記述し、読み取りではパターンマッチングにより認識処理する。

プリアンブル
受信の同期を取る目的でパケットの先頭に挿入される情報を含まない捨てビット列。光受信機では、パケット信号が入力されてから正しく同期が確立し再生が始まるまでの所要時間に相当する長さの捨てビット列が必要になるが、短いほど効率が良い。