報道発表




独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT。理事長: 長尾 真)と株式会社KDDI研究所(代表取締役所長:浅見徹)は、実環境に近い実証実験フィールドであるJGNII光ファイバテストベッド上において、1波長あたり毎秒160ギガビット(毎秒1600億ビット。以下、Gb/s)の伝送速度で8波の波長多重により総容量毎秒1.28 テラビット(Tb/s=1000Gb/s)の超高速都市間光伝送(大手町-つくば JGNIIリサーチセンタ間往復 200km)に世界で始めて成功しました。

今回の成功の技術的ポイントは、160Gb/sの超高速伝送に深刻な影響を与える偏波により生じる波形歪(偏波モード分散:PMD)に対して、KDDI研究所独自の波形補償技術を波長多重伝送時において採用したことです。


<背景>
各家庭への光ファイバ接続サービスの加入者数が300万件目前となり、今後も急速なインターネットの浸透とブロードバンド化の進展により、基幹ネットワークにはますます大容量化が求められています。そうした中、現在商用化されているWDM(波長多重)技術は1波長あたり10Gb/sから40Gb/sベースへ進展しつつあります。研究開発ではさらに将来を見通して、1波長あたりの伝送容量が100Gb/sを超える超高速光通信技術の研究が世界的に進められており、主にヨーロッパの研究機関により敷設光ファイバを用いた160Gb/s光伝送の実証試験が近年の国際会議で相次いで発表されています。2004年7月にもNICTとKDDI研究所は共同でJGNII光テストベッドを用いた160Gb/s単一波長の200kmの都市間光伝送に成功し、国際学会等における発表で注目を集めました。

<今回の成果>
今回は昨年の成果をもとに1波長あたり160Gb/sの伝送速度で8波の波長多重により、総容量毎秒1.28 テラビットの波長多重光信号の200kmの安定な都市間光伝送に世界で初めて成功しました。技術的なポイントは、特に160Gb/sの超高速伝送にとって深刻な影響を与える偏波により生じる波形歪(偏波モード分散:PMD)に対して受信感度の高い差動位相変復調方式とKDDI研究所独自の簡便な補償技術を採用した点にあります。この成果は、JGNII光テストベッドが運用開始当初から期待されていたテラビット級の光ネットワーク構築技術の研究開発に活用できることを示すものであり、今後も最先端の超高速光ネットワーク技術の研究開発に活用されることが期待されます。

今回の実証実験成功を踏まえ今後5年以内に超高速光通信システムの実用化を目途とした研究開発を加速させてまいります。

また今回の成果は9月25から英国グラスゴーで開催される第31回ヨーロッパ光通信国際会議(European Conference on Optical Communication:ECOC 2005)にて発表されます。


<問い合わせ先>
情報通信研究機構 総務部 広報室
奥山 利幸、大野 由樹子
Tel: 042−327−6923、Fax: 042−327−7587
広報室アドレス

<研究内容に関する問い合わせ先>
情報通信研究機構 情報通信部門
超高速フォトニックネットワークグループ
宮崎 哲弥
Tel: 042-327-6791、Fax: 042-327-7035
E-mail: tmiyazaki@nict.go.jp


補足資料

図
図1
1.28 Tb/s超高速伝送実証実験を行った JGN II光ファイバテストベッド

図2
実証実験の光ネットワーク構成
光ネットワーク構成

図

図3偏波モード分散(PMD)とPMD自動補償方式


<用語解説>

JGNII光ファイバテストベッド
先端フォトニック的光ネットワーク技術の研究開発を加速するためNICTが2004年4月に開設した開放型テストベッドネットワーク施設であり、途中、架空敷設区間を含む等、実環境に近い実証実験フィールドを提供している。

波長多重(WDM : Wavelength Division Multiplexing)
1本の光ファイバに波長の異なる光を用いて個別に情報信号を伝送させ、受信側では波長ごとに分割して受信する方式。多重する波長数の分の情報を一括して伝送することが可能。波長ごとの変調速度(ビットレート:1秒間に送出するデジタル信号のビット数)を増大させることにより、より少ない波長数で情報を伝送することが可能になり、効率的なネットワークを構築することができる。

偏波モード分散(PMD : Polarization Mode Dispersion)
光ファイバの真円からのずれや外部環境による応力により生じる複屈折(偏波面による屈折率の違い)により光パルスの進み方に差が生じる性質。敷設光ファイバの場合は振動、温度変動により偏波モード分散も変動し光パルス波形も変動して信号品質が劣化する。特に光パルス間隔が数10ピコ秒以下となる100Gb/s越級の超高速光通信システムにおいては、偏波モード分散及びその変動の影響は深刻な信号品質劣化をもたらす。

差動位相変復調
位相の遅れ、進みにより2値変復調を行う通信方式で特に1つ前のビットとの相対位相変化量の有無により1、0の2値変復調を行う方式。無線通信では実用化されており光ファイバ通信においても近年活発に研究が行われている。

架空敷設区間
電柱等を用いて空中にぶら下がりの状態で敷設されている光ファイバ線路の区間。管路等を利用して地中に埋設された光ファイバケーブルと比較して、風、振動、温度変動などの外部環境変動の影響を受けやすく、偏波モード分散変動もより激しい。