報道発表




独立行政法人情報通信研究機構(以下NICT。理事長: 長尾 真)は、9月26日〜29日にカリフォルニア大学サンディエゴ校にて開催された国際学会「iGrid2005」において、日米欧の研究者が行う長距離・広帯域でのIP伝送実験等に参加し、実験の成功に向け実験環境の構築を行うとともに、各種アプリケーションに適用する形でのネットワークの運用技術に関する実証実験を行いました。今回の実験では、NICTが運用・管理する研究開発テストベッドネットワーク「JGNII」と海外の研究用ネットワーク(StarLight、Abilene等)との相互連携により、総延長約15,000kmに及ぶ地球規模での長距離・超高速ネットワークを実現し、日米欧の電波望遠鏡をリアルタイムに結合する電波干渉計実験や、世界初となる4Kデジタルシネマ映像の太平洋横断ライブ配信など、今後のネットワーク社会発展に向けた実証実験を行いました。


【背景】
これからのネットワーク社会では、大容量のコンテンツ配信や高精細映像の伝送など、さまざまなアプリケーションが使われていきます。iGrid2005では、日米欧など世界各国の研究者が各アプリケーションに特化した伝送技術のデモンストレーションを行いました。それぞれのアプリケーション毎に、遅延時間が少ないことや伝送帯域が大きいことなど異なった要求条件や特性があり、NICTはこれらのデモンストレーションに参加し、JGNIIの活用を通じてネットワークの運用技術に関する実証実験を行いました。

【実験概要】
iGrid2005では世界各国の研究者によって多くのデモンストレーションが行われましたが、その中でJGNIIを利用したデモンストレーションとして、電波干渉計実験を始めとして以下のような実証実験が行われました。

実験参加者
実験概要
NICT、MIT、マンチェスター大学、他 日米欧の電波望遠鏡の観測データをリアルタイムに結合し、地球規模の電波干渉計を実現するデモンストレーション(別紙1
イリノイ大学シカゴ校(NCDM)、ジョン・ポプキンズ大学、
Korea Institute of Science and Technology(KIST) 、東京大学、NICT、他
SDSSのテラバイトデータセットを、高速トランスポートプロトコルUDTを用いて高速伝送するデモンストレーション
産業技術総合研究所、KDDI研、NTT、NICT 情報処理基盤であるグリッドをGMPLSネットワーク上に動的に構築する世界初の実証実験のデモンストレーション
慶応義塾大学、NTT、イリノイ大学シカゴ校、他 800万画素の超高精細デジタルシネマ(4Kデジタルシネマ)映像の太平洋横断リアルタイム伝送実験
東京大学 日加蘭米にまたがる長距離伝送路上での、IPv6を使った大容量データ通信


【実験の意義】
さまざまなネットワークを介した大容量コンテンツの伝送など、インターネットの多様化に向けた実証実験が成功することにより、研究開発用ネットワークを利用した世界規模での研究開発がより促進されるほか、次世代のインターネットへの足がかりが出来たと見ることができます。また、これらの技術が、科学・教育・流通・娯楽など社会生活のあらゆる領域に広がる可能性を秘めており、今回の実証実験の結果が注目されます。

NICTとしては、今後も引き続き、JGNIIを活用して、各種アプリケーションに対応していけるよう、次世代に向けたネットワーク運用技術の研究開発・実証実験を行っていきます。


<問い合わせ先>
総務部 広報室
栗原則幸
Tel: 042−327−6923、Fax: 042−327−7587
広報室アドレス

    <実証実験に関する問い合わせ先>
拠点研究推進部門テストベッド推進室
豊田麻子、三觜正幸、平紙幸一、中尾隆之
TEL:03-3769-6865
FAX:03-5439-7320
E-mail: jgn2center@jgn2.jp
JGNIIロゴマーク



【用語解説】

iGrid
Gridに関する研究発表を行う目的で開催され、今回で4回目となる。 多国における大容量R&Dネットワーク利用を推進し、ネットワークの高度利用などに関する最先端の発表やデモンストレーションが数多く行われる。

IPv6
Internet Protocol version 6の略。現在、普及しているIPv4はアドレス空間が32ビットで約43億個分のIPアドレスが識別できる。しかし、加速度的なインターネットの普及に伴 い、アドレスの枯渇が問題になってきている。IPv6はこの問題を解決するために128ビットのアドレス空間を有し、同時にセキュリティ強化が実施された 次世代のインターネットプロトコルである。

JGNII
独立行政法人情報通信研究機構が平成16年4月より運用を開始した全都道府県ならびに米国にアクセスポイントを持つ研究開発テストベッドネットワーク。次世代高度ネットワークを国内外の産・学・官・地域連携によって早期実現させ、我が国、経済社会の活性化と国際競争力の向上を目的としている。

SDSS
Sloan Digital Sky Surveyの略。宇宙の地図の作成を目的として生成された膨大なデータを対象とする宇宙ゲノムロジェクト。

UDT
UDP-based Data Transfer protocolの略。イリノイ大学シカゴ校NCDM (National Center for Data Mining) グループによって開発された広帯域・長距離のネットワークで効率的データ転送を行う事を目的とした通信プロトコル。

4Kデジタルシネマ
DCI (Digital Cinema Initiative)が定めた劇場公開映画コンテンツ配信用の規格の映像。なお今回のライブ中継など、劇場公開以外の用途のことをDCIではODS (Other Digital Staff)と呼んでいる。

グリッド
利用者の要求に応じて、地理的に分散した計算機やストレージ、観測装置などの様々な資源を柔軟に、容易に、統合的に、そして効果的に利用するためのネットワーク利用技術およびそれに基づく基盤(インフラストラクチャー)。


別紙1


e-VLBI:日米欧の電波望遠鏡をリアルタイムに結合する電波干渉計実験

数億光年もの距離を隔てた遠い銀河から地球に届く非常に微弱な電波の信号を、世界各国の複数の大型パラボラアンテナで同時に受信して合成処理する観測技術を超長基線電波干渉法(Very Long Baseline Interferometry:VLBI)と呼びます。

VLBIは、数1000km離れた各アンテナ間の距離と方向をミリの精度で測定、また1000分の1秒以下の地球自転速度のわずかな変動を検出でき、以前より大陸移動の観測に用いられてきた他、現在では人工衛星や惑星探査機などの高精度軌道決定を実現する上で重要な技術です。その他、VLBIデータは日本標準時の高精度維持にも間接的に役立てられています。

こうした観測のさらなる高精度・高感度化を目指して、VLBIデータを迅速に処理し、リアルタイムに観測結果を得るための研究を現在進めていますが、従来は大容量のVLBIデータを収めた磁気テープを郵送するほか手段がありませんでした。

今回の実験では、高速の研究用インターネットを用いて日米欧の各パラボラアンテナ間でデータを伝送し、リアルタイムでの信号処理に挑戦します。このネットワーク技術を駆使したVLBI観測の手法をe-VLBIと呼びます。e-VLBIの研究開発推進は、より高精度かつ時間分解能の高いリアルタイム観測実現に不可欠であると同時に、大容量高速データ伝送が不可欠なコンテンツとして情報通信技術の研究開発を加速させる効果もあります。

図1


写真

NICT鹿島宇宙通信研究センター
鹿島34mパラボラアンテナ(日本)

写真

Jodrell Bank Observatory
(マンチェスター大学)
Cambridge 32mパラボラアンテナ(英国)

写真

Haystack Observatory(MIT)
Westford 18mパラボラアンテナ(米国)

観測に参加するパラボラアンテナ
(これらの他、オランダ、スウェーデンの
アンテナが参加)