- JGN2長距離・広帯域伝送の実証実験を「SC|05」にて実施
−NICT JGN2北九州・大阪リサーチセンター等における実証実験の実施−
- 平成17年11月11日
独立行政法人情報通信研究機構(以下NICT。理事長: 長尾 真)は、11月12日〜18日に米国ワシントン州シアトルで開催される第17回SC|05(スーパーコンピュータ・ネットワーク・ストレージに関する国際学会、主催はACM/IEEE)において、NICTが運用・管理する研究開発テストベッドネットワークJGN2の日米回線を用いて、大容量データ伝送技術等の実証実験等を行います。
具体的にはJGN2と海外の研究ネットワーク(StarLight、Abilene等)との相互連携により長距離・超高速ネットワークのバックボーン環境を構築し、この上で、UDTプロトコルを利用した世界最速・長距離のデータ伝送の実現を目指すほか、高速ネットワークの帯域を有効利用するネットワークQoS 技術、グリッドアーキテクチャとアクセス制御技術等の次世代科学を創造する情報通信技術に関する実証実験、さらにはe-VLBIの実証実験、宇宙天気の3次元シミュレーション等の実証実験等を行う予定です。
また、このほかに、JGN2を活用して東京大学、宇宙航空研究開発機構等が長距離・大容量データ伝送実験等を行う予定です。
【NICTのJGN2リサーチセンターにおける研究開発及び今回の実証実験】
NICTでは、2004年4月より、研究開発ネットワークJGN2及び7つのJGN2リサーチセンター(東北、つくば、大手町、大阪、岡山、高知、北九州)を中心に、「次世代高機能ネットワーク基盤技術・利活用技術に関する研究開発」を実施してきているところであり、今回の実証実験は、こうしたJGN2リサーチセンターの活動の一貫として実施するものであります。北九州JGN2リサーチセンター(責任者:尾家祐二)では、"アクセス系ネットワーク技術に関する研究開発"を実施しており、大阪JGN2リサーチセンター(責任者:下條真司)では、"拠点連携型共有技術に関する研究開発"、に取り組んでおります。今回、北九州JGN2リサーチセンターでは、米国イリノイ大、ノースウェスタン大等と連携して、世界規模の最速・長距離を目指しUDTプロトコルを利用したデータ伝送実験を行います。また、大阪JGN2リサーチセンターでは、次世代科学を創造する情報通信技術の開発として、高速ネットワークの帯域を高効率に有効利用するネットワークQoS技術に関する実験を行うほか、巨大な望遠鏡や顕微鏡など各種科学観測機器(センシングデバイス)を接続するためのグリッドアーキテクチャとアクセス制御技術に関する実証実験を行います。【SC|05における各種実験の概要】
SC|05では、上記JGN2リサーチセンターが実施する研究開発のほかに、日本の研究者がJGN2を用いて世界各国の研究者と連携して、多くの実証実験を行う予定になっております。
【実験の意義】
実験参加者 実験概要 NICT北九州JGN2リサーチセンター、イリノイ大学シカゴ校(NCDM)、ノースウェスタン大学、ジョン・ポプキンズ大学、アムステルダム大学他
- UDTプロトコルを利用した大容量データ伝送実験
SDSSのテラバイトデータセットを、高速トランスポートプロトコルUDTを用いて高速伝送するデモンストレーションNICT大阪JGN2リサーチセンター、大阪大学、バイオグリッド事務局、奈良先端大他
- 高速ネットワーク帯域を有効利用するネットワークQoS実証実験
- センシングデバイス接続のためのグリッドアーキテクチャとアクセス制御実証実験
(別紙1)NICT、KDDI研究所、NTT研究所、マサチューセッツ工科大他
- e-VLBIに関するデモンストレーション
日米欧のVLBI観測用アンテナ間でVLBI観測実験を実施し膨大な観測データをリアルタイムに結合・解析し、地球規模の電波干渉計を実現するデモンストレーション東京大学
- IPv6の長距離・大容量データ伝送実験
日加蘭米にまたがる長距離伝送路上での、IPv6を使った大容量データ通信宇宙航空研究開発機構、富士通株式会社
- SFRS on Etherを利用した高速データ伝送実験
ITBLに関する大容量データ通信産業技術総合研究所、NICTつくばJGN2リサーチセンター、NICT大阪JGN2リサーチセンター、KDDI研究所、NTT研究所
- GMPLS上のグリッドに関するデモンストレーション
情報処理基盤であるグリッドの計算資源とGMPLSによるネットワーク資源管理とを連携させたデモンストレーションNICT、愛媛大学
- 宇宙天気のための3次元シミュレーションと衛星観測データのリアルタイム可視化
衛星の観測データを入力してスーパーコンピュータで宇宙天気のリアルタイムシミュレーションを行い、その結果を三次元可視化して会場に高速転送しデモを行う。
NICTでは、研究開発テストベッドネットワークJGN2及び7つのJGN2リサーチセンターを中心とし、産・学・官・地域等と連携しつつ活用し、ネットワーク関連技術の一層の高度化や多彩なアプリケーションの開発等、基礎的・基盤的な研究開発から実証実験まで幅広く活動を行ってきているところであり、将来のIT分野の研究開発を展望するとともに、未来のネットワーク社会の実現に貢献してきています。今回のSC|05における実証実験の実施は、我が国のネットワーク研究活動を国際的に展開する上で有効であるとともに、研究開発ネットワークを利用した世界規模での研究開発がより促進されるほか、次世代のインターネットへの足がかりが期待されます。また、これらの技術が、科学・教育・流通・娯楽など社会生活のあらゆる領域に広がる可能性を秘めており、今回の実証実験の結果が注目されます。
NICTとしては、今後も引き続き、次世代に向けたネットワーク運用技術の研究開発・実証実験を行っていきます。
<問い合わせ先>
総務部 広報室
奥山利幸、大野由樹子
Tel: 042−327−6923、Fax: 042−327−7587
<実証実験に関する問い合わせ先>
拠点研究推進部門テストベッド推進室
豊田麻子、三觜正幸、中尾隆之
TEL:03-3769-6865
FAX:03-5439-7320
E-mail: jgn2center@jgn2.jp![]()
【用語解説】SC|05
ACM/IEEEが2005年に主催するスーパーコンピュータ・ネットワーク・ストレージ関連の国際学会で最先端の発表やデモンストレーションが数多く行われる。今回が17回目となる。
http://sc05.supercomputing.org/about/home.phpJGN2
独立行政法人情報通信研究機構が平成16年4月より運用を開始した全都道府県ならびに米国、タイ、シンガポールにアクセスポイントを持つ研究開発テストベッドネットワーク。次世代高度ネットワークを国内外の産・学・官・地域連携によって早期実現させ、我が国、経済社会の活性化と国際競争力の向上を目的としている。UDT
UDP-based Data Transfer protocolの略。イリノイ大学シカゴ校NCDM (National Center for Data Mining) グループによって開発された広帯域・長距離のネットワークで効率的データ転送を行う事を目的とした通信プロトコル。SDSS
Sloan Digital Sky Surveyの略。宇宙の地図の作成を目的として生成された膨大なデータを対象とする宇宙ゲノムプロジェクト。IPv6
Internet Protocol version 6の略。現在、普及しているIPv4はアドレス空間が32ビットで約43億個分のIPアドレスが識別できる。しかし、加速度的なインターネットの普及に伴 い、アドレスの枯渇が問題になってきている。IPv6はこの問題を解決するために128ビットのアドレス空間を有し、同時にセキュリティ強化が実施された次世代のインターネットプロトコルである。グリッド
利用者の要求に応じて、地理的に分散した計算機やストレージ、観測装置などの様々な資源を柔軟に、容易に、統合的に、そして効果的に利用するためのネットワーク利用技術およびそれに基づく基盤(インフラストラクチャー)。e-VLBI (Very Long Baseline Interferometry)
数億光年もの距離を隔てた遠い銀河から地球に届く非常に微弱な電波の信号を、世界各国の複数の大型パラボラアンテナで同時に受信して合成処理する観測技術のことで、ネットワーク技術を駆使したVLBI観測の手法をe-VLBIと呼ぶ。宇宙天気
宇宙や地上のシステムの運用や、その信頼性に影響を与えたり、人の生命や健康にとって危険を及ぼす宇宙環境の変動。SRFS on Ether
HPCの光コネクト上で動作する分散ファイルシステムであるSRFS/BBHに対し、Gigabit Ethernetを始めとするEthernet媒体でも利用可能にしたもの。ITBL
IT-Based Laboratoryの略。このITBLは計算機シミュレーションの活用により、理論や実験に代わる研究開発の手段を提供し、幅広い層での研究開発の効率化を目指すもの。
別紙1
次世代科学を創造する情報技術近年、インターネットには、パソコンやワークステーションだけでなく、巨大な望遠鏡や顕微鏡から小型カメラといった多様な科学観測機器(センシングデバイス)などさまざまな資源が接続され、この傾向はますます加速しています。大阪 JGN2リサーチセンターでは、そのような背景から世界に先駆けいち早く、セキュリティ・高効率ネットワーキングの観点を中心とした、次世代の科学を創造する情報技術の研究開発を行っています。
SC|05国際会議における展示では、
* センシングデバイス接続のためのグリッドアーキテクチャとアクセス制御技術
* 高速ネットワークの帯域を高効率に有効利用するネットワークQoS技術
が発表予定となっております。さらに、これらの技術の今後の計画・展開について、応用アプリケーションとともに紹介されることとなっています。
具体的には、大阪JGN2リサーチセンターで産まれた技術が、環境問題への取り組みを目的としたバーチャルイメージ生成システム(用語1)、計算流体力学を用いる医療システム(下図)への応用例とともに、大阪JGN2リサーチセンター発の情報技術の有用性が紹介されます。(用語1)バーチャルイメージ生成システム
全方位カメラと呼ばれる周囲360度の画像を一度に生成できるカメラを複数台用いて、全方位カメラの設置された空間内の仮想的な画像を生成するシステム。
将来的に、本システムを水質調査などの環境へ適用することを予定。
大阪JGN リサーチセンターと奈良先端科学技術大学院大学との共同で研究が進められている。
歯科治療における発音障害を解決する次世代発音治療サービスの提供のため、必要となる複数の計算アプリケーションの連携と、膨大な計算リソース、ストレージリソースを、JGNIIを利用した高速ネットワークにより供給可能にすることが出来る。下図は、歯茎摩擦音/s/発音時の気流の流れを可視化したものであります。歯茎摩擦音は乱流から発声することがこれまでも考察されてきたが、本研究により始めて数値シミュレーションにより明らかになりました。