- 電子タグと無線LANアドホックネットワークを用いた
大規模災害時の被災情報収集実験を実施
- 平成17年11月17日
独立行政法人情報通信研究機構(以下NICT。理事長: 長尾 真)は、11月20日(日)に愛知県豊橋市で実施される防災訓練に参加し、電子タグと無線LANアドホックネットワークを用いた被災情報収集実験を実施します。大規模災害時を想定した環境下における、初の本格的な情報収集・伝送実験です。
【背景】
NICTは2001年度から、電子タグを用いた大規模災害時の被災情報収集システムの研究開発を進めてきました(詳細は補足資料1をご参照ください)。同システム開発は電子タグの情報書き込み・読み取り機能の高度化に特化しているため、大規模災害時に利活用するためには、災害現場から電子タグによって集められた情報を、迅速に災害対策本部等に送ることが課題でした。そのため、被災情報収集用のアプリケーションと連携する必要がありました。【実験の概要】
このたび同システムを、工学院大学(学長:三浦宏文)などが開発を進めているGISベースの被害情報収集システム(補足資料2)と統合し、さらに無線LANアドホックネットワーク機能を用いた、初の本格的な大規模フィールド実証実験を行います。 同実験は、豊橋市(市長:早川勝)および国立大学法人豊橋技術科学大学(学長:西永頌)らの協力により実施される地域防災訓練の中で行われます。豊橋市内の複数の町内に火災、建物被害、あるいは道路閉塞を模擬した電子タグ付きの看板(補足資料1の図1−2)を多数設置し、統合端末を携行した現地調査員が、オリエンテーリングのように町内を巡回して、といった一連の実験を行います。
- 各電子タグに書かれている位置座標および建物構造種別などを端末によって読み取り、
- 看板写真から判断した被災状況(延焼区分、倒壊判定、要救助者数など)を各電子タグに書き込み、
- 収集した被災状況を災害対策本部に集約する、
被災状況の集約では、各調査員が持つ端末を無線LANの中継器として、「アドホックネットワーク」機能(補足資料3)により、災害対策本部までバケツリレー式にリアルタイムにデータの無線伝送を試みます。
被害現場に残された有益な情報を、通信経路を確保しながら即時的に把握し本部に集める方法として、実用化が期待されます。
<問い合わせ先>
情報通信研究機構 総務部 広報室
奥山 利幸、大野 由樹子
Tel: 042−327−6923、Fax: 042−327−7587
<担当部門問い合わせ先>
情報通信研究機構 情報通信部門
セキュリティ高度化グループ 滝澤修
Tel: 042-327-7461、Fax: 042-327-6640
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補足資料1
【用語説明】電子タグを用いた被災情報収集システム
電子タグ(RFID)は、ICチップとアンテナを内蔵した超小型の記憶装置兼無線装置であり、電源が不要で、専用端末から非接触で情報の書き込みや読み取りができます。大規模災害時にこの電子タグを記憶媒体として、被災状況の調査結果(例えば被災建物の応急危険度判定結果など)を書き込んで現場に残し、現地入りした警察、消防、行政、自衛隊など各機関の調査員が現場でその情報を共有することで、通信環境が不安定な状況下において、重複調査の無駄を削減したり、時間の経過に伴う状況の変化を蓄積したりするのに役立ちます。NICTでは、このような用途のための、電子タグの情報書き込み・読み取り端末(図1−1)を開発しています。
災害時における電子タグの応用としては、救急活動におけるトリアージ(多数の負傷者が発生した場合の、負傷の程度や治療の緊急度による搬送・治療の優先順位付け)や、避難所における避難者や救援物資の管理などへの応用が検討されていますが、災害現場に電子タグを残して被災情報の交換に供する応用を目指しているのは、本システムが唯一です。
本システムの研究開発は、2001年度にNICT(当時は通信総合研究所)が開始し、2002年度からは文部科学省委託研究「大都市大震災軽減化特別プロジェクト 被害者救助等の災害対応戦略の最適化 レスキューロボット等次世代防災基盤技術の開発」(研究代表者:NPO国際レスキューシステム研究機構 田所諭)、および2005年度からは科学研究費補助金・基盤研究B「大規模災害の事前事後における消防活動支援および情報共有化システムに関する研究」(研究代表者:NICT 滝澤修)などの予算も得て、進められています。
図1-1: 被災情報収集用電子タグ書き込み・読み取り端末(左)および使用イメージ(右)
図1-2: 実験に使用する看板(左)および電子タグを用いた被災情報収集システムの使用イメージ(右)
補足資料2
【用語説明】
GISベースの被害情報収集システム
GIS(Geographical Information Systems: 地理情報システム)は、地図上に様々な情報を重ね合わせて表示、集計、分析ができるシステムです。GISベースの被害情報収集システムは、工学院大学が開発した現地被害情報収集システムと、独立行政法人消防研究所(理事長:室崎益輝)が開発した被害情報収集システムとをベースとし、ノートパソコン、タブレットパソコン、デスクトップパソコン、身体装着型パソコン(ウェアラブルコンピュータ)などの上で動作するもので、被災場所を地図上で指定し、その被害状況,被害程度などを入力し,地図上に情報を付加するものです。
本システムの研究開発は、文部科学省 科学技術振興調整費 重要課題解決型研究「危機管理対応情報共有技術による減災対策」(研究代表者:独立行政法人防災科学技術研究所 片山恒雄)などの予算により進められています。
図2-1: GISベースの被害情報収集システム(左)と、GISの画面例(右)
補足資料3
【用語説明】
無線LANアドホックネットワーク
無線LANアドホックネットワークは、各端末を無線LANの中継器として、無線LANの電波が届く数十メートル程度以内の近所にいる端末を探し出してアドホック(その場限りの)ネットワーク接続を自動的に確立し、災害対策本部のサーバコンピュータまでマルチホップ(数珠つなぎ)で通信路を構築する機能です。通信路が開通するまで、各端末は収集したデータの送信を試み続け、開通した瞬間にまとめて送り出します。そうすることで、調査エリア内で複数の端末が動き回っていくうちに、災害対策本部までの通信路が自然に開通する瞬間ごとに、各調査データがバケツリレー式に自然に本部に集まってくることになり、被災地における情報収集作業が劇的に効率化されます。
本実験で用いるアドホックネットワークには、(株)スカイリーネットワークス(代表取締役:梅田英和)が開発した「DECENTRA」を使用しています。
図3-1: 無線LANアドホックネットワークのイメージ