- 多地点を高画質デジタルビデオで接続するTV会議システムを開発
− 国内3箇所、海外7箇所、計10地点を結ぶ国際TV会議で技術実証に成功 −
- 平成18年1月27日
独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT:理事長、長尾 真)と株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID:代表取締役社長、瀧浪壽太郎)は、従来のシステム及びユーザインタフェイス等に改良を加え、これまで製品化(市販)されている高速ネットワ−ク利用型の接続地点制限4箇所を大幅に越え、10地点まで接続可能な高画質TV会議システムの技術開発に成功しました。この技術は、1月25日に東京で開催されたAPAN (Asia-Pacific Advanced Network) Medical Working Group Workshop (議長:九州大学病院清水周次助教授)において、国内3箇所、海外7箇所を結ぶ多地点国際遠隔会議で実際に活用され、その機能および性能等の有用性が実証されました。
【背景】
従来のテレビ会議システムは、映像・音声信号を圧縮することで使用帯域を最小化し、ネットワークへの負荷軽減を図り、複数地点を結ぶものでした。しかし、高画質映像を求めるニ−ズの高まりと、高速ネットワ−クの普及とが重なり、伝送帯域を拡げた通常のテレビ放送以上の高画質映像を期待する DV over IP などの映像伝送技術が大きな注目を集めています。しかし、デジタルビデオ(DV) 映像は約30Mbps と広帯域で、例えば10地点を相互接続するには関連情報信号も加え合計630Mbps もの伝送速度が必要となります。このため、多地点それぞれから送信するサイトでの信号処理、それらの合成処理などの高度技術や高いCPU能力が必要となること、さらに大容量信号伝送に伴うネットワ−クへの大きな負荷対策などの課題があり、従来の低遅延ソフトウェア合成型DV テレビ会議システムとしては4地点対応までしか製品化されていません。また、会議開催地点数の増加にともない、その設置作業や機器操作がさらに複雑化するため、映像・音響の高速合成技術のみならず、操作者に優しいユーザインタフェイス技術の改良も求められていました。
【成果】
本システム開発では、従来から課題とされてきた機器及びネットワ−クに対する負荷軽減の分散化を目的として、使用ハードウェア構成の最適化を図りました。次に、高速ネットワ−クで相互接続される機器等に付随する各種プログラム及びネットワ−ク制御プログラムの更新改良を行い、受信映像信号のエンコ−ド/画面合成/デ−タ送信/送信映像信号のデコ−ド等をすべてソフトウェア上で実現しました。一方、操作性向上にも取り組み、会議参加者の操作を、汎用のWebブラウザ上で可能とする技術を開発しました。さらに、USBカメラやビデオキャプチャーカードからの映像入力も可能とし、汎用パソコンを使って簡単にテレビ会議に参加できます。これらの成果により、高速ネットワーク接続が可能な事業所・大学・研究機関等において、多地点間を結ぶ高品質なテレビ会議が実現できます。尚、1月25日に東京で開催されたAPAN (Asia-Pacific Advanced Network) Medical Working Group Workshop において、国内3箇所、海外7箇所を結ぶ多地点国際遠隔会議の場で実際に活用され、その機能および性能等の有用性が実証されました。【今後】
本成果は、NICTがこれまで推進してきた「次世代プラットフォーム技術」の要素技術を総合した研究結果でもあり、国内外を問わず多地点間を結び、高品質・低遅延が要求されるテレビ会議や遠隔教育等の分野での新たな映像活用技術としての早期実用化が期待されており、産業界への技術移転も重要であると認識しています。そうした中、ISIDは今回の技術開発成果をベースとして、10地点を結ぶDV会議システムの製品化に向けた検討を開始します。
<問い合わせ先>
情報通信研究機構 総務部 広報室
奥山 利幸、大野 由樹子
Tel: 042−327−6923、Fax: 042−327−7587
<担当部門問い合わせ先>
情報通信研究機構
情報通信部門インターネットアプリケーショングループ
勝本 道哲
Tel: 042-327-6425
株式会社電通国際情報サービス 製造事業部
公共営業部 佐藤 泰彦
Tel:03-6713-8025
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補足資料
【補足資料】◆本システムでは以下の機能を実現しています。
- 10地点から送られてくるDV映像とステレオ音声をひとつに合成する機能
- 合成映像とマイナスワン音声(※1)を各地点に返送する機能
- DV映像+CD品質音声伝送(※2)のため、テレビ放送を上回る高画質
- 16パターンの表示映像を瞬時に切り替え可能
- 合成映像と全音声を暗号化マルチキャスト(※3)で配信
- 使用時にクライアント・ソフト(※4)を自動ダウンロードするため、事前インストールが不要
- USBカメラ、ビデオキャプチャーカードからの映像入力に対応(※5)
- サーバやクライアントからの送信・受信を制御するクライアント操作が容易
- 合成、画面切替などすべての処理をソフトウェアで実行(※6)し、低遅延を実現
- IPv6対応
(※1)マイナスワン音声とは、多地点からの音声合成において、自地点の音声を抜いて合成して送り返す方式のこと。合成音声に自地点の音声が含まれないため、違和感がなくなる
(※2)DV映像の伝送は国際標準(RFC3189)のプロトコルに準拠しており、DVコンバータを用いることで、ビデオ信号としてプラズマテレビなどに表示することも可能
(※3)暗号化マルチキャストはSRTPと呼ばれる国際標準(RFC3711)のプロトコルに準拠
(※4)クライアント・ソフトはWindowsXP上で稼動
(※5)ソフトウェアDVエンコーダを内蔵
(※6)10地点のDV映像・音声のソフトウェアによる合成は世界初(NICT、ISID調べ)
◆今回の国際実証実験は、APANのネットワークを利用させていただき、以下の地点を結ぶ、「国際医療会議」で実施しました。
- 東京都 秋葉原学会会場
- 福岡県 九州大学病院
- 岩手県 岩手医科大学付属病院
- 韓国 ソウル大学付属ブンダン病院
- 韓国 国立がんセンター
- 台湾 国立台湾大学病院
- 台湾 台中栄民総病院
- 中国 清華大学
- シンガポール 国立シンガポール大学
- オーストラリア フリンダー大学病院
【用語説明】DV
IEC 61834-1 として標準化されたデジタルビデオの規格。家庭用、業務用ビデオ装置として普及しており、全世界で毎年1000 万台以上が出荷されている。高画質であるため、放送局でのニュース取材用などにも使われている。RFC3189
国際標準のひとつで、DV をIP ネットワークを使って伝送する方式を定めている。この規格に準拠したソフトウェアが多数配布・販売されており、互換性が確保されているために、DV 映像伝送の普及に貢献している。RFC3711
国際標準のひとつで、SRTP(Secure Realtime Transport Protocol)と呼ばれている。映像伝送やIP電話に使われているRTP(Realtime Transport Protocol)を暗号化するプロトコルで、IP電話の暗号化方式としても知られている。APAN
Asia-Pacific Advanced Network の略。1997 年に設立されたアジア太平洋地域の教育・研究用ネットワークを提供する国際共同事業体(コンソーシアム)で、ネットワーク技術、ネットワーク・アプリケーション、ユーザ・コミュニティの3 分野で研究を行なっている。現在は日本、韓国、中国、マレーシア、タイ、シンガポール、オーストラリアなどを結んでいる。
参考URL:http://www.apan.netJGN2
独立行政法人情報通信研究機構が平成16年4月より運用を開始した全都道府県ならびに米国、タイ、シンガポールにアクセスポイントを持つ研究開発テストベッドネットワーク。次世代高度ネットワークを国内外の産・学・官・地域連携によって早期実現させ、我が国の経済社会の活性化と国際競争力の向上を目的としている。
多地点テレビ会議システムのユーザインタフェイス説明図
多地点遠隔会議システム構成(APANでの実験)の概念図