報道発表



独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT。理事長:長尾 真)と国立大学法人京都大学情報学研究科(石田亨教授)を中心とする研究グループは、民・産・官・学の体制で、インターネット上の多言語サービス基盤である「言語グリッド(Language Grid)」の開発に着手します。 言語グリッドは、インターネット上の言語資源(電子辞書など)や言語処理機能(機械翻訳など)の自由な組み合わせを提供し、異文化コラボレーション活動を国内外で展開するNPOなどが, 活動に必要な多言語サービスを自ら開発できるようにするものです(補足資料1)。 言語グリッドを用いた異文化コラボレーション活動の支援をイメージしたデモを、 3月22日(東京:補足資料2)と27日(京都:補足資料3)に行います。


<背景>
2001年の9月11日の米国内同時多発テロ事件を契機に、 異文化間の相互理解の大切さがクローズアップされるようになりました。 インターネットは、世界の人々の異文化コラボレーション基盤としての役割を期待されています。 インターネット内には、電子辞書などの言語資源や機械翻訳などの言語処理機能(以下、総称して言語サービス)が数多く蓄積されていますが、その利用方法は標準化されていません。またその価格や知的財産利用・管理の複雑さから、その利用は一部IT企業に限られてきました。世界各地で異文化コラボレーション活動を展開するNPOなどが、 活動に必要な多言語サービスを自ら構築できるようにするには、インターネット上の言語サービスのアクセシビリティ(*1)やユーザビリティ(*2)の向上が必要です。

<プロジェクトの内容>
このプロジェクトでは、インターネット上の言語サービスを自由に組み合わせ、 新たな言語サービスを容易に産み出すことのできるシステム「言語グリッド(Language Grid)」を研究開発します。 各国の標準言語を対象に機械翻訳などを縦横に組み合わせる「水平型言語グリッド」と、 応用に特化し異文化コラボレーション現場が必要とする多言語サービスを生み出す「垂直型言語グリッド」の実現を目指します。 水平型言語グリッドでは、アジアの10 言語程度の電子辞書や機械翻訳を利用可能とすると共に、欧州の研究機関と連携し世界全体で20言語程度をカバーします. 垂直型言語グリッドでは、 医療通訳、絵文字コミュニケーションなどの様々な異文化コラボレーション活動のための電子辞書や用例対訳を利用可能とします。

このプロジェクトの特徴は、民・産・官・学が協力し、 大学やNICTの研究者とNPOの活動家の協働による参加型の研究開発が行われることです(補足資料4参照)。 「言語サービスオントロジ」(*3)「セマンティックWebサービス」(*4)「ビジネスワークフロー」(*5)などの最新技術が用いられます。

<今後の予定>
初期試作した言語グリッドのデモを行い、 意見や要望を収集します。 それらを参考にして 2006年4月からNICTのユニバーサル・コミュニケーション技術戦略の一環として、けいはんな研究センターで本格的なプロジェクトを発足させます。


<問い合わせ先>
情報通信研究機構 総務部 広報室
栗原則幸、大野由樹子
Tel: 042−327−6923、Fax: 042−327−7587
広報室アドレス

    <研究内容に関する問い合わせ先>
情報通信研究機構 情報通信部門
自然言語グループ 井佐原均
Tel: 0774-98-6830 Fax: 0774-98-6961
E-mail: isahara@nict.go.jp



補足資料1


[言語グリッドを用いた異文化コラボレーション活動]

1)医療通訳ボランティアの支援

外国人の診察を助ける通訳ボランティアを支援するために、簡単な初診結果を得るための医療用の対訳サービスを言語グリッドを用いて実現します。通訳ボランティアは初診結果を参考に、医療単語や医療知識を事前に調べ通訳に備えることができます。対訳サービスは入力された日本文に類似したものを医療用の用例集から探し、対応する中国語文を表示します。

図


2)子供のためのユニバーサル・プレイグラウンドの構築支援

子供のユニバーサル・プレイグラウンドの構築に必要な絵文字によるコミュニケーションを支援するために、自然言語から絵文字入り文章を生成するサービスを、言語グリッドを用いて実現します。例えば,日本人の子供と韓国人の子供のコミュニケーションには、入力された日本文を日韓翻訳により韓文に変換し、その韓文から形態素解析により識別された韓単語を絵文字辞書を用いて絵文字に置き換え、絵文字まじりの韓文を生成します。

図


3)多言語ラジオ番組の制作支援

多言語ラジオ番組の制作打ち合わせを支援するために、議論を纏めるための多言語電子黒板を、言語グリッドを用いて実現します。例えば、電子黒板上に書き込まれた日本語を、ヒンディ語話者にも理解可能にするために、ヒンディ語まじりの英文を日本文から生成します。これは、日英翻訳により英文を作成し、その英文から形態素解析により識別された英単語のうち、英ヒンディ辞書に載っている英単語をヒンディ語に置き換えることで実現します。

図



補足資料2


[3月22日のデモのご案内]

日時:3月22日 14時00分〜15時30分

場所:東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング 7F 東京21cクラブ コラボレーションスペース

地図

スケジュール:
14時00分〜14時20分
  言語グリッドに関するプレゼンテーション
14時20分〜14時40分
  言語グリッドによる異文化コラボレーション活動のデモ

  • 医療通訳ボランティアの支援
  • 子供のためのユニバーサル・プレイグラウンドの構築支援
  • 多言語ラジオ番組の制作支援
14時40分〜随時解散
  質疑応答

デモの内容:
言語グリッドを用いた異文化コラボレーション支援のイメージをデモします。 特に、絵文字を用いた子供のチャット支援では、NPOパンゲアの方々に参加いただいて異文化コラボレーション現場からのコメントを頂きます。

※お越しいただける方は、以下までご一報いただければ幸いです。

連絡先:角川栄里(tsuno@nict.go.jp
TEL: 0774-98-6865 FAX: 0774-98-6967
〒619-0289 京都府相楽郡精華町光台3-5
情報通信研究機構(NICT)けいはんな情報通信融合研究センター



補足資料3


[3月27日のデモのご案内]

日時:3月27日 14時00分〜15時30分

場所:京都市下京区水銀屋町620番地 COCON KARASUMA 4F シティラボ
     プレゼンテーションルーム(オフィス専用エレベータ向かい)

地図

スケジュール:
14時00分〜14時20分
  言語グリッドに関するプレゼンテーション
14時20分〜14時40分
  言語グリッドによる異文化コラボレーション活動のデモ

  • 医療通訳ボランティアの支援
  • 子供のためのユニバーサル・プレイグラウンドの構築支援
  • 多言語ラジオ番組の制作支援
14時40分〜随時解散
  質疑応答

デモの内容:
言語グリッドを用いた異文化コラボレーション支援のイメージをデモします。 特に、医療通訳ボランティアの支援では、多文化共生センター・きょうと、多言語ラジオ番組の制作支援では、京都コミュニティ放送の方々に参加いただいて、 異文化コラボレーション現場からのコメントを頂きます。

※お越しいただける方は、以下までご一報いただければ幸いです。

連絡先:角川栄里(tsuno@nict.go.jp
TEL: 0774-98-6865 FAX: 0774-98-6967
〒619-0289 京都府相楽郡精華町光台3-5
情報通信研究機構(NICT)けいはんな情報通信融合研究センター



補足資料4


[参加グループ]

(五十音順)

独立行政法人
情報通信研究機構 自然言語グループ

大学

大阪大学大学院 言語文化研究科 言語情報科学講座
		教授 林 良彦
関西大学 総合情報学部 総合情報学科
		助教授 喜多 千草
京都女子大学 現代社会学部 現代社会学科
		助教授 菱山 玲子
京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学専攻 広域情報ネットワーク分野
		教授 石田 亨
		助手 中西 英之
和歌山大学 システム工学部 デザイン情報学科
		助教授 吉野 孝

企業
NTTコミュニケーション科学基礎研究所

NPO団体
京都コミュニティ放送
日本初のNPOによるFM局「京都三条ラジオカフェ」を運営する団体。緊急災害時の多言語情報発信を目的として、平常時から多言語番組の制作に取り組み、在住外国人によるラジオ番組制作ワークショップを2005年5月から開始。

多文化共生センター・きょうと
「多文化共生社会」の実現のための活動を行っているNPO。現在、病院を訪れる外国人が安心して医療サービスを受けられるよう通訳者を養成し、病院へ派遣する「医療通訳システムモデル事業」を実施中。

パンゲア
絵文字チャットなどによる、こども達の「ユニバーサル・プレイグラウンド」を目指す研究開発型NPO。世界のこども達が「つながり」を感じるための「つながりアクティビティ」パッケージを開発。海外では韓国、オーストリア、ケニアに拠点を持ち活動を展開中。



補足資料5



用語解説

1* アクセシビリティ
情報やサービス,ソフトウェアなどが,どの程度広汎な人々に利用可能であるかを表す指標。

2* ユーザビリティ
情報やサービス,ソフトウェアなどが, どの程度使いやすいかを表す指標。

3* 言語サービスオントロジ
電子辞書や機械翻訳などの言語サービスの利用方法を標準的に記述する技術。

4* セマンティックWebサービス
利用方法が標準的に記述されたサービスを、 インターネットに接続されたコンピュータから利用する技術。 これにより、 世界各地の電子辞書や機械翻訳などの言語サービスが利用可能となる。

5* ビジネスワークフロー
複雑なビジネスプロセス(仕事の進め方)を、基本となる作業の組み合わせで記述する技術。インターネット上に複合的な言語サービス(例えば日独翻訳)を実現する場合には、 基本となる言語サービス(日英翻訳と英独翻訳)を組み合わせる。