報道発表


  • アジア・太平洋地域で初のe-VLBI実験成功
    〜 日本・中国・オーストラリアを結ぶネットワークを利用した電波干渉計 〜

  • 平成20年6月25日


独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫。)は、平成20年6 月17日(火)、オーストラリア国立電波望遠鏡観測網(オーストラリア)(以下「ATNF」という。)及び中国科学院上海天文台(中国)と共同で、各国の電波望遠鏡を高速インターネットで結び、高い分解能の電波天文観測を行う“e-VLBI”実験に成功した。従来は、それぞれの機関ごとに独自のデータ形式を採用していたため、合成処理を行うためにはまずデータ形式を変換する必要があり、共同観測の課題となっていた。NICTが今回の実験に向け、データ形式を観測と同時に変換し、また、ネットワークを使って高速で伝送するソフトウェアを開発したことで、従来の問題が一挙に解決でき、3機関の電波望遠鏡を合成した巨大な電波干渉計が実現した。アジア・太平洋地域の日本・中国・オーストラリア3ヶ国間で実施されたリアルタイムe-VLBI観測の成功はこれが初めてであり、今後、アジア太平洋地域での電波天文観測に実用化され、この分野での研究協力が活発化するものと期待される。





【実験の背景】

 天体の電波を複数の電波望遠鏡を合成して観測するVLBI(超長基線電波干渉計)*は、地殻の動きの精密な計測などを行う測地学や、星の誕生や宇宙の進化などを研究する電波天文学などの研究に使われる宇宙観測技術である。NICTは、米国をはじめとする世界各国の研究機関と協力して、日本で初めてのVLBI観測を成功させ、その後、この分野の技術開発をリードしてきた。天体の電波は、携帯電話などの人工の電波に比べて桁違いに微弱であり、大量のデータを合成処理して観測感度を高める必要がある。従来、記録した膨大なデータを輸送することの大変さや、異なるデータ形式を変換する困難さは、多くの国の電波望遠鏡を合成して大規模な電波干渉計を実現するための課題となっていた。
 近年、研究・教育のための光通信技術を使った高速ネットワークの整備が国際的に進み、NICTではVLBIのデータを高速ネットワークを通じて伝送する研究(e-VLBI)に積極的に取り組んできた。

 
【今回の成果】

 平成20年6月16日(月)〜18日(水)の間、中国の上海天文台で国際e-VLBIワークショップが開催された。同ワークショップにおいて、期間中に実際の“e-VLBI”観測を実施するため、多くの研究者が協力することでe-VLBIの国際間における技術的課題を解決することが提案された。そこでNICT、ATNF、上海天文台の三機関が協力し、3カ国間で初めてとなる国際リアルタイムe-VLBI観測が実現するに至った。NICTは、この実験の成功に向けて、観測と同時に、データを“Mk5”と呼ばれる上海天文台とATNFとで使用されているデータ形式に変換し、1Gbpsの速度で伝送するソフトウェアを開発した。これにより、データ形式が異なることによる諸問題が解決し、今回のe-VLBI観測成功につながり、日本・中国・オーストラリアの電波望遠鏡を合成することに成功した。

 
【今後の展望】

 今回の成功により、これまで困難であった国際間のリアルタイムe-VLBI観測が容易になり、アジア太平洋地域での観測協力が活発化することが期待される。また、今回対応したデータ形式は欧州で実用化され始めているe-VLBIのデータ形式とも互換性があるため、欧州との共同観測にも大きな展望が開けた。

 

 

<問い合わせ先>
総合企画部 広報室
 栗原則幸
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< 本件に関する 問い合わせ先 >
新世代ネットワーク研究センター
光・時空標準グループ
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Tel:0299-84-7146、7143(直通)
〒314-8501 茨城県鹿嶋市平井893-1
E-mail:sekido@マークnict.go.jp


 

 

<用語 説明>
*   VLBI(超長基線電波干渉計)
   
 

 天体の電波を複数の電波望遠鏡で観測し、合成処理することにより、地殻の動きの精密な計測などを行う測地学や、星の誕生や宇宙の進化などを研究する電波天文学などの研究に使われる。天体の微弱な信号を集めるため、多数の大型電波望遠鏡と、CD-ROM 1枚分に相当するデータを数秒で記録したり処理したりできる観測装置を必要とする。複数の電波望遠鏡で取得したデータは相関処理と呼ばれる合成処理を施され、天体の微細な構造を明らかにする電波写真を得たり、電波望遠鏡の位置の精密な計測をすることなどに役立てられる。

   
 
VLBI(超長基線電波干渉計)

 


 

 
実験の詳細 
 
 

実験の詳細

 今回のe-VLBI実験では、各国のパラボラアンテナ=電波望遠鏡: NICT鹿島34m鏡(日本)、上海天文台25m鏡(中国)、Mopra22m鏡(ATNF)、Parks64m鏡(ATNF)、ATCA22鏡(ATNF)で取得された信号が、リアルタイムに高速ネットワークを通じてデータ処理局のあるオーストラリアのパークスに伝送され、合成処理された。データの伝送には、NICTのJGN2plusなど各国の研究開発用の高速ネットワークが使用された。データの伝送速度は一つの電波望遠鏡あたり256Mbpsまたは512Mbpsであり、データ処理が行われたパークスには最高で2.5Gbpsのデータが集積した。パークスでは、オーストラリアのSwinburne 工科大学が開発したソフトウェアを使って、複数のコンピュータを駆使した分散処理によりデータ処理が行われた。

 

・ ATNF: Australia Telescope National Facility