報道発表


  • 超伝導単一光子検出システム開発に成功、世界最高性能を実現
    〜将来の量子情報通信技術を支えるコア技術の構築へ大きく前進〜


  • 平成20年9月30日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、将来の量子情報通信技術のキーデバイスである光子検出器を、超伝導技術により実現し、世界最高のシステム性能(動作速度50MHz、検出効率3%)を達成しました。開発したシステムは、超伝導薄膜検出素子と光ファイバを実装した超伝導検出器パッケージ及び100V、15Aで駆動可能な小型冷凍機により構成され、実用化・製品化に向けた小型化と高い可搬性を実現しました。




【背景】
 絶対に破られることのない量子暗号などの量子情報通信技術は、近年、次世代暗号技術や情報通信技術として注目されています。量子情報通信技術では、微弱な光が持つ光の粒子(単一光子)を情報のキャリアとして利用しているため、高速・低雑音な単一光子検出器の開発は不可欠となっています。現在、市販されている光子検出器はアバランシェ・フォトダイオード(APD)*1ですが、アフターパルスなどの問題により、動作速度が数メガヘルツ(MHz)まで制限されています。一方、超伝導単一光子検出器(SSPD)*2は、APDより5けた以上高い性能を示しますが、極薄超伝導薄膜の作成、微細加工の困難さとともに、極低温で動作するため、実用化に向けたシステム化、小型化にも困難であるとされています。
 
【今回の成果】

 今回、NICTの独自な高品質素子作製技術と光ファイバ実装技術、さらに実用化に向けたシステム化技術を開発し、国産第1号機となる超伝導単一光子検出システムの開発に成功しました(補足資料図1)。開発した検出システムは、100V、15Aで駆動可能な小型冷凍機と、光ファイバを実装した超伝導検出器パッケージ(補足資料 図2)の6チャンネルにより構成されています。検出素子は、厚さ5ナノメートル、幅100ナノメートルの超伝導窒化ニオブ(NbN)ナノワイヤ検出素子(補足資料 図3)です。システム性能として、動作速度50MHz、検出効率3%などの世界最高性能を示しました。

 
【今後の展望】
 今回の成果では、既に、量子暗号鍵配布フィールド実験に使用し得る性能を達成しました。今後、検出効率及び動作速度などの性能向上によって、APDなどを凌駕する究極な光子検出器として期待され、量子情報通信分野だけではなく、量子光学、宇宙物理学、生体質量分析、新薬開発、低エネルギー粒子検出など様々な分野での実用化も可能となります。
 なお、NICTは、本システムを、9月30日(火)〜10月4日(土)に幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2008」 http://www.ceatec.com/に出展します。
 


< 本件に関する 問い合わせ先 >
未来ICT研究センター ナノICTグループ
  王 鎮
Tel:078-969-2190
Fax:078-969-2199
E-mail:wang@マークnict.go.jp
< 広報 問い合わせ先 >
総合企画部 広報室
  報道担当
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
E-mail:publicity@マークnict.go.jp







<用語 解説>
   
1 アバランシェ・フォトダイオード(APD) 
   半導体におけるアバランシェ倍増(雪崩現象とも呼ばれる)現象を利用して受光感度を上昇させるフォトダイオードである。 
  APD: Avalanche Photodiodeの略語  
   
*2 超伝導単一光子検出器(SSPD)
   厚さ数ナノメートル、幅100ナノメートル(1万分の1ミリメートル)ほどの超伝導体細線に光ファイバから単一光子が入射すると、超伝導状態が壊れることを利用し、光子を検出する。
 半導体APD検出器に比べ極めて低雑音で、かつ光子の到来時間を正確にとらえることが可能。
  SSPD:Superconducting Single Photon Detectorの略語
   





 
 
図1 超伝導単一光子検出システム
図1 超伝導単一光子検出システム
 
図2 検出器パッケージ
図2 検出器パッケージ
 
図3 窒化ニオブ(NbN)ナノワイヤ検出素子
図3 窒化ニオブ(NbN)ナノワイヤ検出素子