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360度いずれの方向からも観察可能なキューブ型3Dディスプレイが完成

~ 箱の中の立体映像があなたの手に ~

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2009年4月15日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、10cm四方の箱の中に裸眼で観察可能な立体映像を再現可能なキューブ型3DディスプレイgCubikを開発しました。

今回、箱の側面すべてに立体映像を表示できるように改良し、360度いずれの方向からも観察ができるようになりました。また、センサ類によって映像とのインタラクションが行えるようになりました。

背景

NICTでは、高い臨場感を取得・再生可能な様々なコミュニケーション技術の研究開発を進めています。自然に(特別なメガネ等を必要とせずに裸眼で)立体映像が観察可能なディスプレイの技術開発に加え、立体ディスプレイを利用する場面の検討を通じて、近い将来における立体ディスプレイの普及へ向けたシナリオの提案などに取り組んでいます。その一つとして提案しているキューブ型の裸眼立体映像ディスプレイ「gCubik」は、手が届く程度の近い距離で、人と人とのコミュニケーションを支援するためのツールとしてデザインした、全く新しいコンセプトにより生まれた3Dディスプレイです(図1)。

今回の成果

今回、キューブ状のgCubikの6つの面すべてに裸眼で観察可能な立体映像を表示し、「箱の中に立体映像が存在する」という提案当初のコンセプトを具現化することに初めて成功しました。従前のシステムは、提案する立体映像の再現手法に関する原理実証を目的として、キューブの一部に見立てた3面に立体映像を表示するものでした。その成果を基にレンズの再設計や配列を工夫するなどして、今回の立体映像では従前と比較して明るさが3倍、解像度が1.4倍とより見やすくなりました(図2)。また、3Dディスプレイ部には極力制御基板等を配置しないなどの工夫により小型化することにも成功し、大きさ10cm四方程度の立体映像を実際に手に持つ(重さ950g)こともできるようになりました(図3)。さらには、ディスプレイ部の各表面にはタッチパネル、内部には姿勢と加速度が計測できるセンサやスピーカを取り付けることによって、簡単な立体映像とのインタラクションができるようになりました。これによって、次の段階であるコミュニケーションツールへ向けた議論や、アプリケーション開発が可能となりました。

今後の展望

この技術の開発により、二次元の写真の代わりに立体映像を見せ合うなどの、将来のコミュニケーション場面に新しい手段を提供できると期待されます。今後は、「手に持てる立体映像」というコンセプトならではのインタラクション手法や複数のgCubikを協調させて利用するアプリケーションの開発、さらにはワイヤレス化や、さらなる小型化、画質の改善など、実用化へ向けた取り組みを行っていきます。

成果展示

gCubikは、4月20日(月)~23日(木)に米国ラスベガスで開催されるNAB2009(http://www.nabshow.com/)に出展します。また、NICTけいはんな研究所(京都)において、ご見学いただけます。見学を希望される方は、下記の超臨場感システムグループ又は広報室まで、ご連絡下さい。

補足資料

図2 システムの全体像 図3 ディスプレイ部を手に持った状態

用語解説

立体映像の再現手法

キューブの各側面には、インテグラルフォトグラフィの原理を応用した裸眼立体ディスプレイの技術が用いられている。ある物体を観察するとき、物体までの距離や目の位置の違いから、ヒトの左右の目にはそれぞれ異なる像が写る。これを視差と呼び、視差によってヒトは立体感を知覚する。インテグラルフォトグラフィは、要素画像と呼ばれる特殊な撮影で得た写真の上に、ハエの眼状に並べた凸レンズアレイの効果によって水平ならびに垂直方向の視差を提示する方式である。gCubikでは、写真の代わりにLCDに要素画像を表示することで電子的にインテグラルフォトグラフィを実現している。

原理的に、凸レンズに入射する平行な光線群は焦点にて交差する。換言すれば、凸レンズの焦点位置にある点光源から四方八方に向かう光線群は、凸レンズの主点と点光源とを結ぶ線分に平行な光線群として凸レンズから出射する。例えば図Aのような状態を考えると、右側の橙色の方角からレンズを覗き込むと、対応する橙色の位置の画素の色でレンズ全体が光っているように見え、左側の緑色の方角からレンズを覗き込むと、緑色の位置の画素の色でレンズは光っているように見える。すなわち、ディスプレイ面を窓と見立てて、様々な角度からその窓を覗いた場合に見えるであろう風景を記録しておき、各レンズ位置に対応するLCDの画素群には、対応する方向の絵の光を設定することにより、ディスプレイを覗き込む角度に応じた適切な風景の絵が再現される。

インテグラルフォトグラフィの原理を用いることにより、上下左右いずれの方向に頭を動かしても立体像が裸眼で観察可能である。ただし、従前の技術は、TV的なおおよそ正面からの視聴を想定したものであるため、大きく頭を動かしたり、強い角度からディスプレイ面を覗き込む必然性がある箱形に組み上げた場合には、正確な立体視ができないという問題点があった。gCubikの開発にあたっては、これらの技術的な課題を精査し、レンズアレイに求められる必要充分な性能の導出、立体映像のレンダリングに必要なアルゴリズムの開発、実装による原理検証などの種々の新規な学術的検討も行っている。

なお、インテグラルフォトグラフィよりも知名度の高いレンチキュラレンズによる裸眼立体像は、インテグラルフォトグラフィの原理を水平方向成分のみで利用している立体像だと言える。

図A 凸レンズの効果
図A 凸レンズの効果

本件に関する 問い合わせ先

ユニバーサルメディア研究センター

超臨場感システムグループ
吉田、ロペス・グリベール
Tel:0774-95-1453
Fax:0774-95-2647
E-mail:

広報 問い合わせ先

総合企画部 広報室

報道担当 廣田
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
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