本文へ
文字サイズ:小文字サイズ:標準文字サイズ:大
  • English Top

「使うときだけネットワークを借りる(ネットワークオンデマンド)」
技術を利用した放送ライブ実験に世界で初めて成功

さっぽろ雪まつりライブ映像を複数局間で同時配信

  • 印刷
2010年2月10日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長: 宮原 秀夫)は、平成22年2月4日(木)と6日(土)に韓国国立情報社会振興院(以下「NIA」という。)と共同で、複数の動的オンデマンドネットワークを用いた同時放送配信実験を実施し、成功しました。この実験では、実用化を目指して研究が進められている、PCE/VNTMOpenFlowDCN(ION)NetConfなど、最先端の複数の技術を駆使し、同時に全国6か所、韓国2カ所の放送局をそれぞれ必要とされるタイミングでオンデマンドに結ぶ実験ネットワークを、JGN2plus上の仮想化ネットワークを活用し複数構築しました。その上で、放送局からの接続要求に従って構築される、この動的オンデマンドネットワークを活用し、世界で初めての実放送コンテンツ(生中継を含む)を用いた国際間接続実験に成功しました。

背景

NICTでは、物理的に1台のルータを仮想化することによって複数のルータとして構成して利用できる仮想化サービスを2009年度からJGN2plusに 導入し、提供しています。今回は、JGN2plusと仮想化サービスを用いてOpenFlow、DCN、NetConf、PCE/VNTM等複数の動的オ ンデマンドネットワーク技術を同時にJGN2plus上に展開し、様々なネットワークパスを動的に作成する仕組みが動いている、複雑化したネットワーク上 にて放送利用実験を実施しました。

この実験では、新世代ネットワークの研究として取り組んでいる動的オンデマンドネットワークという技術で、必要な時に同時に、異なる接続要求条件を持った 複数のアプリケーションを独立してオンデマンドで接続し、それを単一物理ネットワーク上に実装可能であることを実証しました。さらに、仮想化や動的ネット ワークの活用により複雑化したネットワーク運用手法について課題抽出を行うことにより、本技術の実運用の手法等が洗い出されました。

なお、本実験は、補足資料に記載された構成図をもとに、別紙に記載された機関のご協力を得て実施しております。また、さっぽろ雪まつり会場からの映像を本実験のハイビジョン映像伝送実験の一部として地上テレビジョン放送でも放映しました。

実験のポイント

  • 複数の異なる技術の動的オンデマンドネットワークが仮想化技術を用いて同一ネットワーク上で動いている世界で初めてとなるネットワーク運用の実施
  • 新世代ネットワークテストベッド構築に向けた性能面・機能面・運用面の評価及び問題点の抽出
  • OpenFlow、DCN、NetConf、PCE/VNTM等の技術方式を放送利用という切り口から評価及び問題点の抽出 CM中の対地切り替え等、実際の想定される放送中継シナリオを実施

今後の展望

今回確立した複数の動的オンデマンドネットワークを用いる技術及び運用手法は、サーバ環境でのクラウドサービスモデルに似たオンデマンドネットワーク資源の提供や、通信・放送事業サービスにおける新しいビジネスモデル構築の可能性などをもたらします。加えて、ネットワークへの投資の重複を解消することで、エネルギー問題や過剰なインフラ投資の問題の解決に役立ちます。

また、OpenFlowとDCNについては、現在JGN2plus上にテストベッド環境の構築を進めており、テストベッドを用いた新世代ネットワーク技術の研究開発の推進と、テストベッド間の国際連携を目指します。

別 紙

実証実験参加機関
 
  1. 主催
    • 独立行政法人情報通信研究機構 大手町ネットワーク研究統括センター
  2. 協力団体
    • 朝日放送株式会社(ABC)
    • 株式会社スカイ・エー(スカイ・A)
    • 株式会社GAORA
    • 株式会社毎日放送(MBS)
    • 北海道テレビ放送株式会社(HTB)
    • 北海道放送株式会社(HBC)
    • OBS京仁TV - 韓国
    • TJB大田放送 - 韓国
    • NTTコミュニケーションズ株式会社
    • 日本電信電話株式会社
    • KDDI株式会社
    • 西日本電信電話株式会社
    • 北海道総合通信網株式会社(HOTnet)
    • 株式会社アクタスソフトウェア
    • 株式会社オービス(OBIS)
    • 株式会社電通国際情報サービス
    • 株式会社日立国際電気
    • シスコシステムズ合同会社
    • ジュニパーネットワークス株式会社
    • アラクサラネットワークス株式会社
    • 日本電気株式会社
    • 株式会社日立製作所
    • ファットウェア株式会社
    • 倉敷芸術科学大学
    • 筑紫女子学園大学
    • 東京大学
    • 岡山県
    • 岡山県高度情報化推進協議会
    • 沖縄県
    • 沖縄県名護市
    • 沖縄県宜野座村
    • 沖縄県北部広域市町村圏事務組合
    • 高知県
    • 高知県安芸市
    • 韓国国立情報社会振興院(National Information Society Agency) - 韓国
    • QGPOP (Kyushu GigaPop Project)
    • KOREN (Korea Advanced Research Network) - 韓国
    • サイバー関西プロジェクト(CKP)
    • 特定非営利活動法人 NDA
    • 日本学術振興会日韓拠点事業
    • Asia-Pacific Advanced Network(APAN)

補足資料
複数の動的オンデマンドネットワーク実証実験の構成図
図 複数の動的オンデマンドネットワーク実証実験の構成図

  • 2/5~11 第60回さっぽろ雪まつり

  • 2/4
    動的オンデマンドネットワークのPCE/VNTM技術を用いて、JGN2plus及びGEMnet2上に構築したネットワークを利用しHBCよりMBSへ直接ライブ配信及び接続ネットワークの切り替え実証実験の実施。NTTが開発したHD伝送装置i-Vistoを使ったDVCproHD圧縮伝送技術を利用。同時に、ネットワーク切替の状況を高精度ネットワーク測定装置PRESTA 10Gを用いて観測。本測定実験はNICT委託研究「ダイナミックネットワーク技術の研究開発」として実施。

  • 2/6
    動的オンデマンドネットワークのOpenFlowを用いて、大阪ABCより韓国TJBへ素材伝送の実証実験の実施。NTTが開発したネットワーク対応HD蓄積装置XMSを利用。大阪のHD蓄積装置を介して、札幌と韓国間の素材伝送実験を実施。同時に、NTTが開発している120GHz帯無線技術、及び波長多重伝送技術を用いた札幌市内への映像生中継実験も実施。
    • 120GHz帯無線技術
      本技術は総務省の電波資源拡大のための委託研究「ミリ波高精細映像伝送技術の研究開発」で開発されたものを利用。

  • 2/11~12
    動的オンデマンドネットワークのDCN(ION)を用いて、大阪MBS・沖縄より韓国OBSへ素材伝送の実証実験の実施。

  • 2/1~2/27
    動的オンデマンドネットワークのNetConfを用いて、沖縄・高知よりABC・SkyAへの直接ライブ配信及び素材伝送の実証実験の実施。

用語解説

PCE/VNTM(Path Computation Element/Virtual Network Topology Manager)

NTTが先導してIETF標準化を進めた、マルチレイヤ網上で仮想IP網トポロジを提供する制御アーキテクチャ [RFC 5212, 5623]。今回の実験では、光IP統合網上で仮想IP網トポロジを提供し、超広帯域映像通信を行うユーザアプリケーションと連動したギガビットクラスの通信経路のオンデマンドな確立や、トラヒック変動や故障に応じたトポロジの動的再構成を実現した。

OpenFlow

米国Stanford大学が中心となり設立した「OpenFlowコンソーシアム(http://www.openflowswitch.org/)」が提唱しているネットワーク技術および制御プレーンインタフェース仕様の総称。NECは設立当初から同コンソーシアムに参加しており、その他にStanford、HP、ドイツテレコム等が参加している。

DCN

Dynamic Circuit Networkの略で、通信回線上に、ユーザが要求した時間帯にのみスケジューリングして、他の通信の影響を受けない仮想的な回線をつくる機構である。

NetConf

IETFのRFC4741~4744で規定されているネットワーク機器の操作を統一的なインターフェィスで行うための標準規格。現在NetConfを使いネットワーク機器の機能をモデル化することで装置の機種依存性を軽減するモデル化の議論がすすんでいる。

JGN2plus

NICTが2008年4月から運用しているオープンな研究用の超高速・高機能研究開発テストベッドネットワーク。

さっぽろ雪まつり

1950年に、地元の中・高校生が6つの雪像を大通公園に設置したことをきっかけに始まった。雪合戦、雪像展、カーニバル等を合わせて開催し、5万人あまりの人出で予想以上の大人気。以後、札幌の冬の行事として市民に定着していくことになる。1974年以後、瀋陽、アルバータ州、ミュンヘン、シドニー、ポートランドなど札幌とつながりの深い外国地域の雪像が制作され、国際色あふれるイベントとして発展。現在では毎年200万人以上の人々が訪れ、世界中の多くの人々に愛されるまつりへと成長を続けている。今回の開催で61回目。

<実証実験に関する 問い合わせ先>
連携研究部門テストベッド研究推進グループ
森信 拓、松川 良樹

Tel:03-3272-3060
Fax:03-3272-3062
E-mail:

<広報 問い合わせ先>
総合企画部広報室
報道担当 廣田 幸子

Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
E-mail: