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プレスリリース

光ファイバ1本の伝送容量109テラビットの世界記録を樹立
~新型マルチコアファイバで100テラビットの限界突破、1000倍伝送への道を拓く~

2011年03月10日
   情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)は、株式会社オプトクエスト(以下「オプトクエスト」、代表取締役:東 伸)、住友電気工業株式会社(以下「住友電工」、社長:松本 正義)と共同で、光通信における新型の光ファイバ1本で毎秒109テラビットの信号伝送実験に成功しました。この伝送速度は、これまでの世界記録である毎秒69.1テラビットを大きく超え、1本の光ファイバの物理的限界とされていた毎秒100テラビットをも超える世界最高記録です。また、本技術と他の光通信技術の組み合わせで、現在の1000倍以上の伝送容量の確保が期待出来ます。
  なお、今回の実験成功に先駆け、NICTでは平成22年度委託研究事業として「革新的光ファイバ技術の研究開発」を開始し、新型光ファイバ実用化に向け産学官連携の取組みも積極的に推進しております。
【背景】
   現在の光通信は、細い糸のようなファイバ中の1本の光の通路(コア)(図1)に、さまざまな光信号を送信しています。光信号は直径9ミクロンの極細のコアに閉じ込められ、コアのエネルギー密度は太陽の表面並みに非常に高く、注入できる信号パワーの限界があり、光信号が歪むことでエラーが生じたり、ファイバが熱破壊を起こす恐れがあります(図2)。伝送方式の開発により、年ごとに増加を続けていた光ファイバの伝送速度は、2001年を境に増加率が鈍り、毎秒100テラビット近辺が限界と考えられていました(図3)。
   また、現在の光ファイバ開発当時に、1本のファイバに複数コアをもつマルチコアファイバ(図1)も考えられましたが、それぞれのコアから漏れた信号が干渉しあう、ファイバの結合時にコアがずれる等の技術的問題があり、マルチコアファイバの開発は進みませんでした。

【今回の成果】
   今回NICTは、技術的に非常に難しいと考えられていたマルチコアファイバの問題を解決し、毎秒109テラビット、16.8kmの伝送実験を行い、全てのコアにおいて良好な通信品質を確認しました。NICTは、オプトクエストが開発した「既存の光ファイバ7本を7コアファイバに接続するための7コア同時空間結合装置」と、住友電工が開発した「コアからの信号漏れを大幅に低減した7コアファイバ」を利用し、本実験を実証しました(図4)。
   本実験は、既存の光ファイバで予測されていた物理限界である毎秒100テラビット伝送をマルチコア化で突破し、尚かつ世界記録である毎秒109テラビットを樹立し、マルチコアファイバの有効性を明確に示しました。本技術の確立で、更なる大容量化が確実に見込まれます。また、本技術と他の光通信技術の組み合わせで、現在の1000倍以上の通信容量確保が可能(図5)になる事が期待出来ます。

【今後の予定】
   今後、マルチコアファイバの更なるコア数の拡大と実用化をにらんで、産学官連携の取組みを積極的に推進してまいります。なお、本実験結果は米国ロスアンゼルスで開催されている光ファイバ通信国際会議(OFC/NFOEC2011、3月6日(日)~10日(木))でポストデッドライン論文として採択され、本日発表します。


< 取材依頼及び広報 問い合わせ先 >
総合企画部
広報室
報道担当 廣田 幸子
Tel:042-327-6923 
広報 問い合わせ先
<本件に関する 問い合わせ先>
新世代ネットワーク研究センター
超高速フォトニックネットワークグループ
淡路 祥成、和田 尚也
Tel:042-327-6853
本件に関するに関する 問い合わせ先
<用語解説>
テラビット
1テラ(T)ビットは1兆ビット、1ギガ(G)ビットは10億ビット、1メガ(M)ビットは100万ビット。
通常の家庭用光ファイバサービス(FTTH)は最大でも毎秒100メガビットの速度であり、100テラビットはその100万倍にあたります。


ミクロン
1ミクロンは0.001ミリメートル。

補足資料

図1 現在の光ファイバとマルチコアファイバ
現在の光ファイバとマルチコアファイバの断面の概念図。黄色の部分が光の通路であるコア。
図1  現在の光ファイバとマルチコアファイバ


図2 光ファイバへの注入パワーの限界
信号パワーを上げていくと、非線形光学効果さらにはファイバフューズが発生するため、信号パワーによる伝送容量確保は難しくなる。
図2 光ファイバへの注入パワーの限界

図3 光ファイバ伝送容量の進展
1990年代後半には伝送方式(波長多重分割方式)の開発により急激に伝送容量の伸びはあったが、2001年を境に増加率が鈍っている。
図3 光ファイバ伝送容量の進展

図4 実験概要
今回の実験イメージ図。
住友電工開発の7コアファイバとオプトクエスト開発の7コア同時空間結合装置を利用している。
光信号変調装置は、NICTと住友大阪セメント株式会社が共同で開発した超高速位相変調技術を利用。
なお、この変調技術開発の研究成果の一部は、NICTの委託研究「直交位相制御を用いた高効率光波信号発生技術の研究開発」によるものである。
図4 実験概要

図5 マルチコアファイバの伝送容量の概念図
マルチコアファイバの伝送帯域のイメージ図。
光ファイバを道路に、情報(光信号)を自動車にたとえると、従来のシングルコアファイバでは車線を横方向に拡張していく研究開発が行われてきたが、マルチコアファイバを使うと、コア数だけ階層的に車線を増やせる事から現在の1000倍以上の伝送容量が期待できる。
図5 マルチコアファイバの伝送容量の概念図



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