平成ヘイセイ18年度ネンド発表ハッピョウ研究ケンキュウ論文ロンブンにおける学術的価値のレイ
平成ヘイセイ18年度ネンド著名チョメイ学術ガクジュツ雑誌ザッシ(インパクト・ファクタ3以上イジョウ)に掲載ケイサイされた研究ケンキュウ論文ロンブン
ナカから、学術ガクジュツジョウ意義イギ貢献コウケンについてご紹介ショウカイします。
発表日付 論文名ロンブンメイ メイ カンゴウ 発表ハッピョウシャ 当該分野における従来技術
または学説
本研究成果により解決、または
新たに解明されたこと
当該分野における学術上の
意義、貢献
Vol. No.
H18.4.7 Meiotic proteins Bqt1 and Bqt2 tether telomeres to form the bouquet arrangement of chromosomes CELL 125   近重 裕次,堤 千尋,山根 美穂,岡正 華澄,
原口 徳子,平岡 泰

減数分裂において、第一分裂が始まる前に、テロメア(染色体末端)が核の縁辺部の1カ所、中心体近傍にクラスターを形成する。この特徴的な染色体配置がbouquet配置ハイチである。1900年、Eisenがサンショウウオの減数分裂期染色体配置に対し、はじめてbouquetという言葉を用い、ついで、1905年には、Schreinerらがホソヌタウナギの減数分裂で、中心体に近接してテロメアクラスターが形成されることを記載している。依頼100余年、bouquet配置は、動物、植物、菌類の様々な生物種で見いだされ、減数分裂における相同染色体の対合において普遍的な役割を担っていると考えられてきた。しかし、それでは、ばらばらに存在しているテロメアがいかにして中心体付近に集まるのか、その分子機構は、まったくの謎で、中心体やテロメアの構造については、相当な知見の蓄積があるもののbouquet形成において両者を連絡する機構については、文字通りmissing linkとされてきた。

分裂酵母を材料としたゲノムワイドなスクリーニングにより、bouquet形成においてテロメアと中心体とを連結する新規タンパク質2個(Bqt1,Bqt2と命名)を発見同定し、これにより、ながらくmissing linkとされてきたbouquet配置における中心体とテロメアの連結機構を分子レベルで解明した。精細な生細胞観察により、さらに、bouquet形成期、従来、中心体の一成分と考えられていたSad1タンパク質が、核膜上を移動し、核膜下に散在するテロメアと邂逅し、これを中心体へ集合させる役割を担うことを明らかにした。

bouquet形成機構という、その発見から100年来の問題を、テロメアと中心体を連結するKey Moleculeの発見により、 分子レベルにおいてこれを解明したばかりでなく、これらの発見により、核の内側に存在する染色体と核の外側に存在する中心体とがどのような分子機構によって連絡しbouquetのような特徴的染色体配置が形成されるのかという普遍的な生物学上の問題解明へむけたパラダイムを創出した。
H18.4.14 Modulation of Alp4 function in Schizosaccharomyces pombe induces novel phenotypes that imply distinct functions for the nuclear and cytoplasmic gamma-tubulin complexes GENES TO CELLS 11  
升田 裕久,登田 隆,宮本 留美,原口 徳子,
平岡 泰

微小管ビショウカン形成ケイセイ重合核ジュウゴウカクとして機能キノウするγチューブリン複合体フクゴウタイ活性カッセイ細胞内サイボウナイにおいて時間的ジカンテキ空間的に制御クウカンテキセイギョされる分子機構ブンシキコウ不明フメイであった。分裂酵母ブンレツコウボでは核内複合体カクナイフクゴウタイ細胞質複合体サイボウシツフクゴウタイ存在ソンザイするが、従来ジュウライ突然トツゼン変異株ヘンイカブモチいた解析カイセキでは両者リョウシャ機能キノウ分離ブンリできなかった。

γチューブリン複合体フクゴウタイ構成コウセイタンパクシツ断片ダンペン核局在配列カクキョクザイハイレツおよび細胞質局在配列サイボウシツキョクザイハイレツ融合ユウゴウさせ、分裂酵母ブンレツコウボ核内複合体カクナイフクゴウタイ細胞質複合体サイボウシツフクゴウタイ機能キノウ別々ベツベツ阻害ソガイするプローブを開発カイハツした。核内複合体カクナイフクゴウタイはG2/M境界期キョウカイキとMにおける細胞周期進行サイボウシュウキシンコウ必須ヒッスであり、細胞質複合体サイボウシツフクゴウタイ間期カンキにおけるカク位置決定イチケッテイ細胞極性サイボウキョクセイ制御セイギョ重要ジュウヨウであることがわかった。

核内カクナイγチューブリン複合体フクゴウタイ阻害ソガイによりG2/M境界期の進行シンコウがWee1依存的イゾンテキ阻害ソガイされることから、核内カクナイγチューブリン複合体の活性カッセイをチェックして、細胞周期サイボウシュウキ進行シンコウ制御セイギョする分子機構のブンシキコウノソ存在ソンザイ示唆シサされた。
H18.4.14 The carboxy-terminus of Alp4 alters microtubule dynamics to induce oscillatory nuclear movement led by the spindle pole body in Schizosaccharomyces pombe GENES TO CELLS 11   升田 裕久,宮本 留美,原口 徳子,平岡 泰
細胞内サイボウナイにおけるカク位置イチキ決定ケッテイ核運動カクウンドウは、細胞分裂サイボウブンレツや、初期発生ショキハッセイにおいて、非常ヒジョウ重要ジュウヨウである。オオくの場合バアイ微小管ビショウカンと、モータータンパクシツ依存イゾンする。分裂酵母ブンレツコウボにおいては、位置決定イチケッテイ微小管ビショウカンのダイナミックスに依存イソンし、核運動カクウンドウ微小管依存性ビショウカンイゾンセイのモータータンパクシツ依存イゾンすることが報告ホウコクされていた。

細胞質γサイボウシツガンマチューブリン複合体フクゴウタイ機能キノウ阻害ソガイすることにより、核運動カクウンドウ誘導ユウドウされた。核運動カクウンドウはモータータンパクシツ依存イゾンせず、微小管ビショウカンダイナミックスの変化ヘンカによって誘導ユウドウされることがわかった。核運動カクウンドウ細胞サイボウまった一端側イッタンガワカタヨっておこることから、細胞極性サイボウキョクセイ調節チョウセツ関係カンケイしていることがわかった。

核運動カクウンドウ微小管ビショウカンとモータータンパクシツ依存イゾンしてこることが従来ジュウライカンガカタであったが、微小管ビショウカンダイナミクスを変化ヘンカさせるだけで、核運動カクウンドウこることをシメした。γチューブリン複合体フクゴウタイ機能キノウ調節チョウセツすることにより、カク位置イチケッテイをかえたり核運動カクウンドウ誘導ユウドウできることをアキらかにした。
H18.5.1 Two-dimensional optical beam deflector operated by wavelength tuning OPTICS EXPRESS 14 9 豊嶋 守生,Franz Fidler,Martin Pfennigbauer,
Walter R. Leeb

光を空間的クウカンテキ走査ソウサさせるには、(1)鏡やプリズムを機械的に動かす方式、(2)実時間書き換えが可能なホログラムを用いる方式、(3)フェーズドアレーを用いたビーム偏向方式等がある。(1)や(2)の場合は応答速度が遅く、(3)の場合には光の屈折率変化を電気光学効果などにより位相制御を行うため高速に光ビーム偏向が可能である。しかし、これらはヒカリ位相イソウわせて複数フクスウビームを合波するなどハード製作セイサクにおいて複雑になるため、構成するのが難しく実用的でないシステムとなっていた。

小型で光ビーム偏向に機械的可動部分の無い光伝送方式について提案した。本提案方式では、1本のレーザビームを、段階的な透過率をもつ多重反射用ミラーを用いてアレー状に配置し、光周波数を変化させることで高速に2次元ジゲンビーム走査ソウサを行うもので、光のフェーズドアレーアンテナの一種である。原理確認のために、4本の同じ強度の平行ビームを形成するための光学素子(Multiple Beam Generator: MBGと命名)を試作し、実験をオコナった。これにより、光周波数変化ヘンカ比例ヒレイして光ビームを2次元テキにラスター走査ソウサ原理ゲンリテキに可能であることをシメした。

光フェーズドアレーでは、従来、ビーム毎に光位相変調回路や光フェーズロックドループ回路などが必要で複雑なシステムとなっていたが、本方式を用いることで、光フェーズドアレーが簡素な光学系により初めて実現した。この原理をモチいることで、将来、空間光通信における電子的デンシテキ高速コウソクビーム走査ソウサによる捕捉ホソク追尾ツイビや、高速コウソクFSKスイッチングなどとわせた1入力×N出力の空間クウカン高速コウソク光スイッチなどへ応用が考えられる。タガいのビームのヒカリ位相イソウ制御セイギョをしなくても2次元にビーム偏向ヘンコウ可能カノウであり、光学コウガク技術ギジュツ応用オウヨウ分野ブンヤ画期的カッキテキ成果セイカである。
H18.5.30 High-speed optical DQPSK and FSK modulation using integrated Mach-Zehnder interferometers OPTICS EXPRESS 14 10 川西 哲也,坂本 高秀,宮崎 哲弥,井筒 雅之
高度コウドヒカリ制御セイギョモチいると効率コウリツタカ光信号ヒカリシンゴウ伝送デンソウ可能カノウであることはられていたが、高度コウド制御セイギョ高速コウソク動作ドウサ両立リョウリツせずに、ヒカリ高度コウド制御セイギョ大容量ダイヨウリョウ伝送デンソウをねらうことは困難コンナンとされてきた。

集積シュウセキヒカリデバイスで高速コウソク動作ドウサ高度コウドヒカリ制御セイギョ実現ジツゲンした。これにより、25Tbpsをえるチョウ大容量ダイヨウリョウ光通信ヒカリツウシン可能カノウとなった。

ここで報告ホウコクされたデバイスにより、これまでの記録キロク大幅オオハバえるチョウ大容量ダイヨウリョウ伝送デンソウ次々ツギツギ実現ジツゲンしている。研究ケンキュウ機関キカンからもこの報告ホウコク以降イコウ同様ドウヨウのデバイスにカンする研究ケンキュウハジマっている。5年ぶりの光ファイバあたりの伝送容量記録更新の原動力となった画期的な研究成果である。伝送デンソウ容量ヨウリョウ記録キロク競争キョウソウ火付ヒツヤクとなったといえる。世界セカイ最大サイダイ伝送デンソウ容量ヨウリョウ (25Tbps)、最高サイコウ密度ミツド (3.2bps/Hz)がこの成果セイカにより達成タッセイされている。
H18.6.26 Long dephasing time in self-assembled InAs quantum dots at over 1.3 μm wavelength APPLIED PHYSICS LETTERS 88 26 早瀬 潤子,赤羽 浩一,山本 直克,佐々木 雅英,
鯨岡 真美子,江馬 一弘

量子リョウシドットを量子リョウシ情報ジョウホウデバイスに応用オウヨウするためには、量子リョウシドットナイ生成セイセイした励起子レイキシ電子デンシ正孔セイコウツイ)の位相イソウ緩和カンワ時間ジカンナガくすることが必要ヒツヨウ不可欠フカケツであると同時ドウジに、励起子レイキシ共鳴キョウメイ波長ハチョウ重要ジュウヨウなパラメタとなってくる。これまでの研究ケンキュウでは、従来ジュウライ方法ホウホウ作製サクセイしたヒズミオオきな量子リョウシドットを対象タイショウとしていたため、1.3ミクロンよりもミジカ波長ハチョウ領域リョウイキでの位相イソウ緩和カンワ時間ジカンカンする報告ホウコクしかなかった。

ホン研究ケンキュウでは、ヒズミ補償ホショウホウという特殊トクシュ技術ギジュツモチいて作製サクセイした量子リョウシドットをモチいることにより、1.3ミクロンをえる長波長チョウハチョウ領域リョウイキにおいてハジめて、1ナノビョウえる非常ヒジョウナガ位相イソウ緩和カンワ時間ジカン達成タッセイすることに成功セイコウした。今回コンカイられた位相イソウ緩和カンワ時間ジカンは、あらゆる波長ハチョウイキ量子リョウシドットと比較ヒカクしてもモットナガ部類ブルイ位置イチするものであり、我々ワレワレ作製サクセイした量子リョウシドットが量子リョウシ情報ジョウホウデバイスとして有力ユウリョク候補コウホであることをシメしている。

今回コンカイナガ位相イソウ緩和カンワ時間ジカン達成タッセイすることに成功セイコウした波長ハチョウヒカリ通信ツウシン波長ハチョウタイ位置イチしており、固体コタイ素子ソシによる量子情報通信の実用化に向けた画期的な成果であるといえる。また量子ドット積層セキソウ構造コウゾウモチいることで、従来測定が困難であった四光波混合信号を高いS/N比で取得することに成功したことは、量子リョウシドットチュウの位相緩和過程カテイをこれまでよりも高精度コウセイド調シラべる有効な手段を与えるものと期待キタイされ、学術ガクジュツジョウ意義イギフカいものとカンガえられる。
H18.7.26 Binary projective measurement via linear optics and photon counting PHYSICAL REVIEW LETTERS 97 4 武岡 正裕,佐々木 雅英,Norbert Luetkenhaus
2値の量子信号を判別する量子測定は、量子情報、また量子光学において最も基本的な要素である。しかしながら量子情報通信・光量子情報処理において非常に大きな役割を果たすある種の2値量子測定は、その重要性にもかかわらず物理的実現は技術的には非常に困難であり、光子レベルで動作する極めて強い非線形光学過程や、大規模な量子もつれ合いを持つ非古典的な量子状態の補助光が必要であろうと考えられてきた。

研究ケンキュウにより、光量子信号に対するあらゆる種類の2値の量子測定過程が、線形光学素子、古典的コヒーレン光、光子検出器、そして古典的なフィードバックのみを用いて構成可能であることが理論的に証明された。非古典的な補助光を使わないでもあらゆる2値量子測定が構成可能であることは、これまで予想されていなかったキワめて画期的カッキテキ成果セイカである。

ホン論文ロンブン対象タイショウとしている線形光学素子等の物理デバイスは、技術的にも確立されつつあるものばかりであり、今後、様々な光量子通信・情報処理プロトコルの設計に応用されるものと期待される。また、量子情報理論としても、本論文の理論は、1970年代にドリナーにより提案された「ドリナーの量子最適受信機」と呼ばれる量子信号検出モデルの最も一般化された理論であり、量子光学・量子情報研究の萌芽期に考えられ始めた先駆的な理論に対して、その一応の完成を与えたものとえる。
H18.8.14 Meiotic cohesins modulate chromosome compaction during meiotic prophase in fission yeast.  JOURNAL OF CELL BIOLOGY 174 4 テイ 大橋オオハシ,櫻井サクライ 伸子ノブコ,加藤カトウ 由起ユキ,伊藤イトウ 武彦タケヒコ,
シラヒゲ 克彦カツヒコ,原口ハラグチ 徳子トクコ,平岡ヒラオカ ヤスシ

細胞生物学的観察から、ほとんどすべての生物では減数分裂期前期のクロマチンに凝縮度の上昇が見られる。しかし、この凝縮度の上昇を意義イギ、また、染色体センショクタイ凝縮ギョウシュクを測定し、さらにこの染色体構造の変化を司る分子機構の解析カイセキはこれまでほとんどなされていなかった。

ホン研究は減数分裂期前期のクロマチン凝縮度を生細胞において計測する方法を開発し、染色体構築の分子基盤を明らかにした。具体的には、分裂酵母減数分裂期前期の規則的な染色体配向を利用し、同じ染色体のアーム上2カ所を同時に可視化できる株でクロマチンの凝縮度を計測し、生細胞における減数分裂期前期の染色体構造変化を詳細に解析した。その結果、減数分裂期前期にクロマチンの凝縮度が減数分裂期特異的コヒーシンに依存して上昇し、減数分裂期特異的コヒーシンがないと、クロマチンが30nmファイバー程度の凝縮率になるまで低下することを明らかにした。

この研究で世界で初めて染色体の凝縮度を生細胞で実測することに成功し、染色センショク構造コウゾウ研究ケンキュウアタラしい方法ホウホウ提供テイキョウした。この方法ホウホウにより、減数ゲンスウ分裂ブンレツ特異的トクイテキ発現ハツゲンするコヒーシンタンパクシツ直接チョクセツ染色体センショクタイ構造コウゾウ制御セイギョすることをアキらかにした。従来ジュウライコヒーシンタンパクシツ姉妹シマイ染色センショクタイ接着セッチャク重要ジュウヨウであるとられているが、ホン研究ケンキュウにより、コヒーシンタンパクシツ染色体センショクタイ構造コウゾウへの直接チョクセツ関与カンヨという新規シンキ機能キノウ発見ハッケンした。
H18.10.15 Temporal characteristics of neural activity related to target detection during visual search NEUROIMAGE 33 1 早川 友恵,藤巻則夫,伊丸岡俊秀
複数フクスウ視標から目標モクヒョウ検出ケンシュツするサイには、アタえられた視覚シカク刺激シゲキ形態ケイタイ情報ジョウホウ解析カイセキテキ処理ショリするハラガワ視覚シカクケイ視標注意チュウイをむけることが、トモ必要ヒツヨウであることがられている。しかしながら背景ハイケイから視標を分離ブンリ抽出チュウシュツすることに関わる脳部位は動物を用いた実験で、第1次・第4次視覚野および側頭・頭頂など議論が一定していなかった。

脳磁界計測(MEG)の高い時間分解能と機能的磁気共鳴画像(fMRI)の高い空間分解能を利用した統合解析法で、目標モクヒョウ視標の検出に関わる複数の脳部位の時間変化をアキらかにした。視覚シカク刺激シゲキ解析カイセキテキ処理ショリ背景ハイケイから目標モクヒョウ視標分離ブンリ抽出チュウシュツするノウ活動カツドウ記録キロクでき、そのカンに視覚注意に関わるノウ活動カツドウカカわることがワカり、視標検出ケンシュツカカわるの脳内ノウナイ処理ショリのシークエンスを解明カイメイした。

ノウ磁界ジカイ計測ケイソク機能的キノウテキ磁気ジキ共鳴キョウメイ画像ガゾウ利用リヨウした統合トウゴウ解析カイセキ法で、視標検出ケンシュツカカわる複数フクスウノウ部位ブイ時間ジカン変化ヘンカアキらかにした。このことは、情報ジョウホウ氾濫ハンランナカでヒトがどのようにして的確テキカク目標モクヒョウ視標検出ケンシュツするかという問題モンダイタイして、脳科学ノウカガク立場タチバから情報ジョウホウ社会シャカイタイするアラたな知見チケンをもたらすことができたとえる。
H18.12.4 Reconstruction of the kinetochore during meiosis in fission yeast Schizosaccharomyces pombe  MOLECULAR BIOLOGY OF THE CELL 17   林 亜紀,淺川東彦,原口 徳子,平岡 泰
ヒト、マウスなどの高等真核生物の細胞は、父方と母方由来の遺伝子情報がのった染色体をそれぞれ一対持つが、配偶子形成時での生殖細胞では父方と母方由来の遺伝情報が再編され、染色体数が半数になる分配が行なわれる。通常の細胞と異なる染色体の分配は還元分配と呼ばれる。この還元分配を正確に行なうために、細胞は染色体上の動原体と呼ばれる部位に特異的な構造を形成し、その特異的構造を認識して染色体を半数になるように分配する。この特異的な構造形成には多くの蛋白質を含む複合体が関与すると考えられている。

本研究では1000以上の分裂酵母の遺伝子に蛍光蛋白質を融合させて発現する株を作成し、この中より22個の動原体に局在する因子を得て、生細胞の生殖細胞での挙動を蛍光顕微鏡下で観察した。これらの結果より22個の蛋白質の挙動を3つのグループに分類し、さらに2つの生殖細胞特異的な因子の観察を合わせて生殖細胞での動原体部位の経時的な構造形成の順序を明らかにし、これらの因子の挙動が還元分配に必要である接合フェロモンのシグナル伝達系において制御されていることを明らかにした。

配偶子形成過程は生物にとって変化する環境への適応のための多様性を獲得する重要な過程であり、生殖細胞で起こる還元分配機構の解析は古くからの基本的問題である。しかし高等生物での解析は分子生物学的また生化学的解析が容易でなく、詳細な分子機構の解析に至っていない。今回の発表では、ゲノム解析が終了し、分子生物学的解析が容易である分裂酵母を用いて、初めて網羅的に生殖細胞周期における多数の動原体局在因子を解析し、動原体部位の構築順序と制御機構の一端を明らかにした。この論文によりさらに還元分配での動原体部位の構築とその制御の分子機構解析が進み、また高等真核生物での構築の制御にも大きな知見を与えると考えられる。
H19.1.12 Striated muscle twitchin of bivalves has the 'catchability', the ability to bind thick filaments tightly to thin filaments, representing the catch state JOURNAL OF MOLECULAR BIOLOGY 365 2 筒井 康貴,吉雄 麻喜,大岩 和弘,山田 章
タンパク質モーターの運動について、ON/OFFの制御をするだけでなく、OFF状態におけるタンパク質繊維とモーターの結合状態をも制御することは、タンパク質モーターを分子通信技術に利用する上でも、重要な要素技術であると考えられる。このような制御は、「キャッチ筋」として知られる軟体動物二枚貝平滑筋のトゥィッチンによるアクチン‐ミオシン間相互作用の制御として明らかにされ、精製したタンパク質によって再構成を行なうことができるようになっていた。しかし、トゥィッチンは「キャッチ筋」のみに存在するわけではなく、軟体動物以外の動物にも広く存在していることが知られている。これらのトゥィッチンが、「キャッチ筋」のものと同様の制御機能を有するかは不明であった。また、トゥィッチンによるこのような制御を受けるミオシンは、比較的ゆっくりとしか動かないものに限られているのではないかという予測があった。

本研究により、これまで「キャッチ筋」であるとされていなかった、二枚貝横紋筋や斜紋筋のトゥィッチンにも、「キャッチ筋」のものと同様の制御機能があることが示された。このように、この制御機能に一般性が確認されたことから、この制御能力に対して‘catchability’という新たな概念を提唱した。さらに、トゥィッチンの catchability は、ゆっくりとしか運動しないミオシンだけでなく、かなり速く運動をするミオシンに対しても有効であることが明らかにされた。この意味では、ミオシンの catchability に関しても今まで考えられてきたよりも一般的であることが示されたのである。

本研究成果は、「キャッチ筋」のトゥィッチンやミオシンに見られる catchability が「キャッチ筋」だけに限られるという従来の予測を覆し、様々な筋肉にも広く存在する機能であることを示唆する重要な意味を持っている。また、タンパク質モーターを分子通信技術等に利用し、トゥィッチンの機能を利用する際に、限られた材料しか利用できないという制限を打ち破ったほか、たとえば速く動くミオシンやゆっくりと動くミオシンなどを同じトゥィッチン分子で同様に制御可能であるなど、これまで知られていた知見に基づく場合よりも複雑で巧妙なデバイス構築が可能であると考えられる。