平成26年9月27日(土)に噴火が始まった御嶽山の緊急観測を10月2日(木)に実施し、御嶽山の火口周辺の詳細なレーダ画像を取得しました。得られた画像は直ちに火山噴火予知連絡会をはじめ関係機関に提供しました。また、NICTは今後ともPi-SAR2による観測を火山活動に応じて継続する予定であり、火口付近の変化や火山灰の堆積状態の推定等を行う予定です。

本サイトではこの日の観測データを観測直後から掲載しますが、高次の処理結果についても逐次掲載していきます。

Pi-SAR2

合成開口レーダは、航空機や衛星の進行方向に対して斜め下方に電波を照射し、地表面を航空写真のような画像として観測することができます。光学写真と違って、雲や火山の噴煙に邪魔されないことや高い高度で観測しても分解能(観測の細かさ)を高くすることができます。NICTが開発したPi-SAR2は、Xバンドの電波を利用することにより、火山の噴煙はもとより、天候、昼夜等に関係なく地表面を映像化することができます。Pi-SAR2は、通常6,000 mから12,000 mの高さで観測し、合成開口処理による世界最高レベルの空間分解能(30 cm)を有しています。また、一度に5 kmから10 kmの幅の領域を観測できるのが特徴です。更に、Pi-SAR2は偏波を用いたポラリメトリ機能*1が可能で機上においても数分で2 km四方の偏波疑似カラー画像を生成する処理装置を搭載しています。これにより災害等の緊急時にも観測しながら迅速に関係機関に提供することが可能です。同時にインターフェロメトリ機能*2により2 m以下の精度で地表の高さを計測できます。

Pi-SAR2を搭載して飛び立とうとする航空機(ガルフストリーム2型機)

Pi-SARとPi-SAR2の性能比較
 Pi-SARPi-SAR2
開発年19962008
中心周波数9.55 GHz9.55 GHz / 9.65 GHz
周波数帯域100 MHz500 MHz / 300 MHz / 150 MHz
分解能(レンジ)1.5 m0.3 m / 0.5 m / 1.0 m
分解能(アジマス)1.5 m (4looks)0.3 m (1look) / 0.6 m (2looks)
観測幅> 10 km> 10 ~ 5 Km
等価雑音散乱係数< -33dB< -23 dB / -27 dB / -30 dB
記録データレート32 MB/s x 2ch.200 MB/s x 3ch.
記録媒体D1 テープレコーダー x 2ch.3.5in.HD array (500GB x 8) x 3CH.
アンテナ位置機体前方翼下
特記事項スライディングスポットライト(オプション)

今回の観測

平成26年10月2日に県営名古屋空港を出発し、12:30から14:30の間に以下に示す観測範囲のデータを取得します。レーダ画像は通常は地上の計算機で再生処理を行いますが、今回は航空機上で全体の観測データのうち火口を中心とした2km四方の領域を切りだして処理を行い、速報データを機上から空港到着後に詳細データを直ちに気象庁・火山噴火予知連絡会をはじめとする関係機関に報告しました。

Pi-SAR2による御嶽山山頂付近の拡大画像(2014年10月2日)

飛行経路1(2 km x 2 km) 12:43

飛行経路2(3 km x 3 km) 12:51

飛行経路6(3 km x 3 km) 13:38

飛行経路7(3 km x 3 km) 13:49

▲ 画像をクリックすると解析データをご覧いただけます。

飛行経路図

*1 ポラリメトリ機能
電波の振動する向き(偏波)は、地上の状況により固有変化をして反射(散乱)する。この性質を用い、偏波(振動する向き)の異なる2つの電波で地表面を観測し、それぞれの場合の反射(散乱)信号を精密に測定し、対象を詳細に識別する機能をポラリメトリ観測機能という。Pi-SAR2では地表面に対し垂直に振動する電波(垂直偏波)と水平に振動する電波(水平偏波)を観測に使用している。送信した偏波に対して受信された偏波の強さの組み合わせのうち3つを赤、緑、青の3原色に割り当てることで疑似的なカラー画像が得られる。これを偏波疑似カラー画像と呼んでいる。ここに掲載した観測画像では偏波が変化した場合を緑、水平偏波がそのまま反射されたものを赤、垂直偏波がそのまま反射されたものを青に割り当てている。一般に樹木や植物が広がっている場合には偏波が変化する。
*2 インターフェロメトリ機能
離れて配置された2つのアンテナを用いて、人間が双方の目で立体的に見ることができるのと類似の方法で3次元的像を得る。これを用いて地面の標高を計測することができる。電波の位相情報を使うため、非常に高精度で、航空写真に比べ全天候にわたって観測できるのが特長。Pi-SAR2は2 m以下の精度で高さを計測することが可能。火山灰堆積厚さや広がりを推定する事が可能。

Pi-SAR2による御嶽山山頂付近のKMZ画像

飛行経路1飛行経路2飛行経路3飛行経路4飛行経路5飛行経路6飛行経路7飛行経路8飛行経路9

※ KMZファイルはGoogle Earthにおける位置情報を示すファイルです。ファイルを開くにはGoogle Earthのインストールが必要です。
http://earth.google.com/download-earth.html

Pi-SAR2が観測した御嶽山山頂付近の火口

mp4(15.5 MB)

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