過去の研究開発と宇宙実証

ETS-6

通信総合研究所では、光宇宙通信の実現に必要な捕捉・追尾等の基礎技術を確立するため、1994年8月に宇宙開発事業団(NASDA)により打ち上げられた技術試験衛星Ⅵ型(ETS-VI)に光通信基礎実験装置(LCE)を搭載し、1994年12月から1996年7月までの間、東京都小金井市の研究所構内にある地上光学局及び米国ジェット推進研究所(JPL)の地上光学局との間で世界初の双方向光通信実験を実施しました。

最初の衛星へのレーザ伝送実験は、1994年12月7日の深夜に行われました。
衛星が静止軌道に投入されなかったことにより、実験時間が3日毎に3時間程度と制限されると共に、移動してゆく衛星を地上局から正確に追尾すること、衛星側でもLCEの光軸が地上局の方向に来るように特別な姿勢制御を行いました。
実験期間の後半には実験時間帯が昼間になり、太陽からの強い背景光のもとで捕捉追尾を行う必要がありました。
およそ1年半にわたる実験により、光通信に必要な指向追尾が実際に行えることを実証し、1.024Mbpsの光回線により衛星搭載用の光通信機の内部状態を示すテレメトリデータを実際に地上に伝送することができました。
また、地上からの送信レーザ光には大気のゆらぎにより大きな受信レベル変動(シンチレーション)が発生していることがわかりました。

ets-6
「光通信基礎実験装置(LCE)」

<光学部の外観>

LCE

金色をした熱制御用のサーマルブランケットで全体が覆われています。
上部に見える細長い筒状のフードは、太陽光の反射が装置内に入らないようにするためのもので、この筒の軸方向が地上局の方向を向くように光学部全体が衛星の地球指向面に設置されていました。
下部に見える箱の内部に半導体レーザや追尾用の光学系が搭載されています。

<光学部の内部構造>

LCE_in

光通信基礎実験装置(LCE)の光学部の内部構造を示しています。左下に2軸ジンバルミラー、その右に口径7.5cmの屈折型望遠鏡が、右下には捕捉追尾用CCDセンサ、画面右上には精追尾用の4分割フォトダイオードが設置されています。光通信用の半導体レーザ及びアバランシェ・フォトダイオードは中央の細長い箱の中に納められています。波長0.83mm、ピーク出力30mWの半導体レーザを用いています。衛星までの約38,000kmの距離にわたって光信号を伝送するためには、30μrad以下の鋭い指向性を持ったレーザ光を正確に相手の衛星に照射するための指向追尾技術が必要です。

「地上光学局」

東京都小金井市の通信総合研究所構内に設置された口径1.5mの望遠鏡で衛星からのレーザ光を受信しました。地上から衛星へのアップリンクには、波長0.51μm、出力10Wのアルゴンレーザを用いました。写真ではかすかに送信レーザ光が見えます。

beam

hikari
「双方向光通信実験」

地上望遠鏡でとらえた衛星からのレーザ光

 

地上の望遠鏡に取り付けられたCCDカメラによる衛星からのレーザ光

downlink03 地上からの送信アルゴンレーザの大気による散乱光が針状に写っている。中央の輝点は恒星で、ETS-VIは図の針の先にある。

衛星からのレーザ光が受信された場合

downlink1  

地上の望遠鏡に取り付けられたCCDカメラで撮影した動画データ