報道発表


  • 次世代衛星搭載用ソフトウェア無線機の実証モデルを開発
    〜柔軟で高信頼な衛星搭載通信機の軌道上実証に向けての第一歩〜

  • 平成19年11月27日


独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫。)は、次世代衛星搭載用ソフトウェア無線機*1の実証モデル“再構成通信機搭載ソフトウェア無線機部”を開発しました。本技術の開発によって、柔軟で高い信頼性を有する衛星搭載通信機の軌道上実証に向けた第一歩が踏み出され、衛星搭載通信機の高度化が図れるだけでなく、地上通信インフラに依存しない災害時の非常用通信網の効率的な運用や、さらには衛星を利用した低コストなデジタルデバイドの解消にも役立つものと期待されています。

<背景>

衛星通信は、通常の通信・放送目的のみならず、地上通信インフラに依存することなくネットワークを構築できるため、災害時の非常通信網やデジタルデバイドを解消する有力な手段として期待されています。こうした衛星通信の特長を生かすには、衛星上で高度な信号処理を行うための再生中継*2技術が必要となります。しかし、10年から15年以上と長い衛星寿命期間内に地上の通信技術は進歩し発展しますが、衛星搭載技術は更新ができず、地上技術に追従することのできる高度な再生中継器を衛星に搭載した例はありませんでした。

<今回の成果>

今回、回路構成がソフトウェアによって変更可能な素子S-RAM型FPGA*3を採用し、再構成可能な回路素子を複数搭載した次世代衛星搭載用ソフトウェア無線機フライトモデルを新たに開発しました。その後同モデルの各種試験を実施し、衛星に搭載する再生型中継器として必要な機能・性能の評価、そして通信方式の変更にも柔軟に対応できることを確認しました。さらに再構成可能という性質を生かし、故障した回路の論理的な切り離しと機能の再構成により、“柔らかく壊れる(段階的な機能劣化)”*4通信機の動作も確認できました。こうした概念を実装した衛星搭載再生中継器は、この再構成通信機が世界で初めてとなります。

<今後の展望>

再構成通信機は2010年頃の軌道上実証を目指して衛星システムを開発中です。今後は通信のみならず他の機能も実装し、より広範囲なアプリケーションに適応する中継技術を開発します。

※2007産学官技術交流フェア(11/28(水)〜11/30(金):東京ビッグサイト)に出展しデモを行ないます。
(URL: http://www.nikkan.co.jp/eve/07sangakukan/index.html)



< 広報 問い合わせ先 >
総合企画部 広報室
栗原 則幸
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
publicity@マークnict.go.jp
< 本件に関する 問い合わせ先 >
新世代ワイヤレス研究センター 宇宙通信ネットワークグループ
西永 望、鈴木 健治
Tel:042-327-6864
Fax:042-327-7553
E-mail:nisinaga@マークnict.go.jp


補足資料1

<用語解説>


*1 ソフトウェア無線機
通信方式、変調速度、搬送波周波数等をソフトウェアによって変更できる無線機のこと。S-RAM型FPGA(後述)やデジタルシグナルプロセッサ(DSP)等が搭載されている。

*2 再生中継
地上局から送られてきた信号を衛星上で一旦復調、復号して中継する処理方式。一般に用いられているベントパイプ方式に比べ、2倍以上のユーザーを対象とする通信が可能となる反面、高度な信号処理技術が必要とされる。また、これまでは軌道上の衛星搭載機器の更新ができないため、打ち上げ時の通信方式に固定されてしまう欠点を持つ。

*3 S-RAM型FPGA (Field Programmable Gate Array)
回路情報を内部の記憶素子に保持するLSIで、回路情報を自由に変更できる。ただし、実際の宇宙環境においては、太陽等からの放射線の影響によって回路情報が変更されてしまうことが生じるため、防御対策が必要となる。

*4 “柔らかく壊れる”(段階的な機能劣化: Gracefully Degradable)
従来の衛星搭載機器は、完全な正常動作をしていなければ故障、つまり機能していないとされてきた。今回開発した機器は、再構成可能な回路素子を複数搭載しているため、回路素子のいくつかが故障しても、故障した素子のみを論理的に切り離すことができ、故障していない素子だけ用いることができる。さらに回路の再構成が可能であることから、故障していない素子を用いて回路を構成することができ、装置全体としての機能維持が可能である。ただし、この場合は使用できる素子が減少するため性能が劣化する、あるいは機能に制限が生じる。

開発した再構成通信機搭載ソフトウェア無線機部フライトモデル
写真:開発した再構成通信機搭載ソフトウェア無線機部フライトモデル
サイズ:W320×D270×H131mm
重 量:7.25kg、消費電力:25W以内(定常時)


補足資料2


【再構成通信機の将来利用イメージ】

図1:再構成通信機の将来利用イメージ
図1:再構成通信機の将来利用イメージ
再構成通信機の柔軟性を生かすことにより、様々な通信要求に対して、最適な通信方式、プロトコルを提供することができる(広義の適応通信の提供が可能)。
 

【ソフトウェア無線機部構成】

図2:ソフトウェア無線機部構成
図2:ソフトウェア無線機部構成
同じ機能・性能を持つ二つのRCF(リコンフィギュラブル)ユニットと、それを接続するI/F(インターフェース)ユニットで構成。それぞれのユニットは独立に動作可能で、ループバック接続することにより相互のユニットを相互で検査することが可能。
 
図3:RCFユニット構成
図3:RCFユニット構成
一つのユニット内に、三つの再構成可能なデバイスを搭載。軌道上の放射線環境によって、全デバイスを直列につなぐ大規模モードと三重多数決する高信頼モードを有する。

【開発した再構成通信機の性能及び機能】

(1)再構成通信機の性能
送受信データレート 可変:16k,63k,250k,1Mbps, 最大 2Mbps
通信方式 QPSK(四位相偏移変調),16QAM(16値直交振幅変調)
誤り訂正方式 リードソロモン符号
*現時点で実装済み。今後他の通信方式にも対応予定。

(2)主な機能
  • 構成データアップロード機能:打ち上げ後に新しく機能を追加する機能
  • 構成データエラー検出機能:放射線等の影響により反転した構成データを検出し、自動復帰させる機構
  • デバイス故障に対する縮退機能:故障したデバイスを論理的に切り離し、正常デバイスだけを使用する機能(図4)
  • WEBサービス機能:ハードウェア化されたWEBサーバーにより、WEBサービスが提供可能。

    図4:故障時の縮退モード
    図4:故障時の縮退モード

    軌道上でFPGAが故障した場合、電源と周辺の接続を遮断することにより、論理的にデバイスを排除する。例えば、通信機の場合、変調は復調に比べ約1/3程度の複雑さで実現が可能なため、本来復調器として使用していた故障ユニットであっても、変調器としては使用可能であり、システムレベルでは機能が変化しない。また、回路構成により処理性能を犠牲にして回路面積を削減すれば、性能は悪化(スループットの低下)するが、機能は保持することができる。





  • 戻る