Tie of the KSP VLBI Network to the Global Terrestrial Reference Frame

KSP/VLBIネットワークのグローバル座標系への結合

1998.7.24 小山泰弘

1.はじめに

これまでに実施した、鹿島34mVLBI局とKSPのVLBI観測局との VLBI実験を、最新の座標系や地球回転パラメタを用いて再解析したので、 その結果について報告する。これまで、鹿島34m局とKSP観測局とで VLBI実験を行ったのは、下表のように7回ある。

実験日 参加局 備考
1995.1.19 KASHIM34, KASHIM11, KOGANEI, KOGANEI3, KANOZAN 観測数少ない・データ品質不良
1997.5.1 KASHIM34, KASHIM11, KOGANEI, MIURA, TATEYAMA 良好
1997.10.7 KASHIM34, KASHIM11, KOGANEI, MIURA, TATEYAMA KASHIM34 の基準信号に問題あり
1997.11.18 KASHIM34, KASHIM11, KOGANEI, MIURA, TATEYAMA KASHIM34 の基準信号に問題あり
1998.2.16 KASHIM34, KASHIM11, KOGANEI, MIURA, TATEYAMA 良好
1998.5.1 KASHIM34, KASHIM11, KOGANEI, MIURA, TATEYAMA 良好
1998.6.20 KASHIM34, KASHIM11, KOGANEI, MIURA, TATEYAMA 良好

実験は、1回目のみ14チャンネル・56Mbpsの観測モードで、 ほかの6回は16チャンネル・64Mbpsの観測モードでの観測を 行っている。すべてテープベースで記録をし、一部リアルタイム処理の 結果と組み合わせて解析を行っている。

2.解析方法

データ解析には、アプリオリの情報やモデルとして次のものを利用した。

さらに、推定するパラメタとして、小金井局の時系を基準とした他の局の クロックオフセットを2時間間隔の折れ線モデルで推定した。局位置は、 鹿島34m局の局位置を既値として、ほかの局の位置を推定した。

3.結果

解析した結果得られたKSP各局の位置を下図に示す。

KASHIM11 (Postscript File)
KOGANEI (Postscript File)
MIURA (Postscript File)
TATEYAMA (Postscript File)

それぞれの図で、原点は、良質なデータが取得された4回の実験の結果 から得られた局位置推定値を加重平均することにより定めた。図中の 楕円は、それぞれの実験から得られた位置推定誤差の1σを示している。 なお、それぞれの推定位置は、各局の移動速度を用いて、1997年 1月1日の位置に変換したものを使用した。KSP鹿嶋局の移動速度は、 ITRF96における鹿島34m局の移動速度をそのまま使用し、ほかの 3つのKSP観測局の移動速度は、これまでに実施されたKSP実験の 結果から最小2乗法でフィットして推定した結果に鹿島34m局の ITRF94における移動速度とITRF96における移動速度の差を 加えた値を使用した。

KSP鹿嶋局(KASHIM11)の結果に注目すると、データに問題のない4回の 実験の位置推定結果は、1σの推定誤差の範囲で非常に良い一致が 得られたと言うことができる。したがって、この4つの推定位置の加重平均 を用いることで、KSP鹿嶋局の位置をITRF96座標系で高精度に 定義することができる。4回の実験の推定位置をローカルな座標系に 変換した後、それぞれの座標軸ごとにWRMS(Weghted Root Mean Squared) を計算した結果、東西成分 1.06 mm、南北成分 0.76 mm、鉛直成分 10.69 mm という値が得られた。鹿島34m局が十分高い精度でITRF96座標系に 結合されていると仮定すると、KSP鹿嶋局の位置を水平成分で 1 mm 程度、 鉛直成分で 10 mm 程度の精度で結合できたと考えられる。

つぎに、これまでのKSP定常観測で得られた、1997年1月1日を エポックとした基線ベクトルをITRF96座標系におけるKSP鹿嶋局 の位置に加え、他の3局のITRF96座標系における位置を求めた。 この結果、KSP4局のITRF96座標系における局位置と移動速度とが つぎのように得られた。

局位置(エポック:1997年1月1日)
局名 X (mm) Y (mm) Z (mm)
KASHIM11 -3997505658.31 3276878393.29 3724240695.69
KOGANEI -3941937433.67 3368150896.10 3702235287.62
MIURA -3976129956.66 3377927877.39 3656753837.14
TATEYAMA -4000983402.88 3375275950.81 3632213183.01

移動速度
局名 Vx (mm/year) Vy (mm/year) Vz (mm/year)
KASHIM11 -1.30 2.40 -12.90
KOGANEI -2.79 2.01 -7.83
MIURA 12.43 -1.17 -5.18
TATEYAMA 11.32 -0.03 -0.06

4.今後の課題

これまでの7回の結合VLBI実験により、鹿島34m局の局位置を 介在として、KSPのVLBI観測局の位置がITRF96に高精度に 結合できた。今後は、このような実験を継続し、KSPの観測網と グローバルな座標系との関係を把握しておくことが重要である。 また、これまでの結果では、鹿島34m局というひとつの点を介して 結合されているだけであり、その基準としている位置に誤差がある 場合にはそれがそのままKSP観測網のグローバルな座標系への 結合誤差として含まれていることになる。このため、鹿島26m局や、 国外のVLBI局との実験を行うことで、より信頼性の高い結合 データを得ることが必要である。 そのうえで、GPSやSLRの基準点位置との比較を行うことにより、 座標系の結合に有意義なデータが提供できるものと考えられる。