第125回KARCコロキウムのご案内
第125回KARCコロキウムは終了しました。ご参加ありがとうございました。
開催日時 | 平成28年7月5日(火) 15:00 〜 16:30 |
開催場所 | 未来ICT研究所 第二研究棟 3F TV会議室2 |
講演 | ショウジョウバエのシナプスを使った神経伝達物質放出の遺伝学的解析 |
講演者 | マサチューセッツ工科大学 ピカワー記憶学習研究所 教授 トロイ・リトルトン 氏 |
講演概要 | 本講演では、脳の計算能力は、神経細胞(ニューロン)同士をつなぐシナプス結合に依存している。シナプスでのシグナリングがどのようにニューロン間のコミュニケーションおよびニューロン同士の結合を調節しているかを理解することを長期的な目標として、我々はショウジョウバエを使って、神経伝達物質の放出とシナプスの成長、シナプス可塑性の分子メカニズムについて研究している。神経伝達物質は、活動電位に伴って誘導されるシナプス小胞の細胞膜への融合によって放出される場合と、神経の興奮なしに自発的なシナプス小胞の細胞膜への融合(”微小シナプス電流=ミニ”と呼ばれる)によって放出される場合がある。この二つのモードを経たシナプス小胞の融合はほとんどのシナプスで見られ、全てのシナプス活動部位でこの両方のモードが起こっていることが予想されるが、古典的なアプローチによってはこれを確認することは難しかった。神経伝達物質放出の研究での主な限界は、個々のシナプス活動部位におけるシナプス小胞の細胞膜への融合を調べることができなかったことである。シナプス伝達の電気生理学的研究では、たくさんのシナプス活動部位全体での神経伝達物質放出のポストスシナプスへの効果を計測するので、個々のシナプス活動部位が小胞の融合にどのように参加し、それを制御するのかを解析することができない。我々は近年、遺伝子組換えによって作成されたツールを使ってシナプス小胞の細胞膜への融合によって放出されたグルタミン酸がポストシナプスのグルタミン酸受容体を活性化し、その受容体を通って細胞に流入するカルシウムのイメージングすることに成功した。それによって、自発的な神経伝達物質放出の経路と、活動電位によって誘発される神経伝達物質放出の経路との、両方のエクソサイトーシスを空間的に可視化することが可能になった。我々のデータから、シナプス活動部位の大多数は両方のモードの融合に参加するが、その放出確率は両方のモード間で相関せず、シナプス活動部位によって大きなバリエーションがある、ということがわかった。実際、シナプス活動部位のうちのサブセットは自発的融合に特化しており、ポストシナプスの受容体のうちの一部は自発的融合よってのみ活性化される。この新しい遺伝子組換えツールによって単一のシナプス活動部位でのエクソサイトーシスを可視化することによって我々は、単一の放出部位が、どのように働いているのか、どのような可塑性を示すのか、また、どのようにして両方のモードに参加するのかを調べている。さらに、その二つのモードを制御する分子メカニズムについても解析している。 |
使用言語 | 英語 |
参加費 | 無料 |