第128回KARCコロキウムのご案内


第128回KARCコロキウムは終了しました。ご参加ありがとうございました。

開催日時 平成29年4月27日(木) 14:30 〜 15:30
開催場所 未来ICT研究所 第二研究棟 3F TV会議室2
講演 性行動をめぐる遺伝と環境 - ショウジョウバエに学ぶ
講演者 東北大学大学院 生命科学研究科 教授
山元 大輔 氏
講演概要 本講演では、遺伝と環境とがヒトの心理・行動特性をどのように決定づけるのか、未だに論は尽きない。一方、動物行動の研究では、遺伝的に規定された定型行動の機構の解明が急ピッチで進んでいる。私は、キイロショウジョウバエの求愛行動を変化させる突然変異を作出し、この行動を規定する遺伝子と脳の機構を研究してきた。そのうち、satoriと名付けた変異体は、雄が雌に求愛せず、雄に求愛するように性指向性が変化したものである。satori変異の原因遺伝子、fruitlessのクローニングを通じて、この遺伝子産物、Fruitlessタンパク質が雄特異的に翻訳されること、さらにこのタンパク質がクロマチン修飾を介して脳の一個一個のニューロンに性差を作り出すことを明らかにした。つまり、satori変異体雄の同性愛行動は、クロマチン修飾の変化によって脳のニューロンが性転換した結果であり、遺伝子が行動を規定する一つの仕組みがこれにより解明できたと考えていた。しかし最近になり、satori変異体雄の同性愛行動が、単独飼育によって“社会経験”を剥奪すると抑制されること、この経験依存的同性愛行動が、20個のニューロンからなる求愛開始中枢、“P1”の興奮性変化に根差していることを、クローン解析とCa2+-imagingによって突き止めた。こうして、求愛行動を規定する遺伝子と環境の相互作用を支える機構の一端がようやく見えてきた。今後は、単一細胞レベルで、どのような電気現象がその基盤にあるのかを解明してゆきたい。
使用言語 日本語
参加費 無料