次世代の非侵襲脳活動計測
〜脳活動の差の計測から絶対量の計測へ〜
現在、fMRIが広く非侵襲脳活動計測に用いられています。しかし、今のfMRIでは、2つの状態間(図の "task" と"control")の比較によって脳活動を検出するため、"control" 状態が変化していても、それを検出することは出来ません。
また、現在の計測法では、測定値そのものは脳活動についての情報をもたないため、個人間での測定値の比較や、個人内での測定値の時間的変動を調べることは出来ません。
したがって、脳活動をさらに詳細に調べるためには、脳活動の絶対量が計測できるシステムの開発が不可欠です。
現行のfMRIの問題点
現行のfMRIの最大の問題点は、計測値がそのまま脳の神経活動とは対応していないことです。したがって、脳活動の有無を調べるためには、活動をおこなっていない状態 ("rest") と、なにか活動をおこなっている状態 ("task") の2つの信号値を比較しなければなりません。
しかし、最近になって、何も課題をしていない "rest" 状態であっても、脳の様々な部位が活動していることが明らかになってきました。このことは、何も課題をしていない "rest" 状態が、脳活動を比較する上でのベースラインとしては適当ではないかもしれないということを示唆しています。
今後、fMRIの信号値に意味を持たせ、脳活動を定量的に評価するためには、"rest" 以外のベースラインを、なんらかの指標を基に設定する必要があるのです。
脳活動と信号 〜脳温度計測〜
脳活動を反映した信号には、直接脳活動を反映する一次信号、間接的に脳活動を反映する二次・三次信号があります。
一次信号は、神経の電気的活動を計測するもので、非侵襲計測ではEEGやMEGで計測が可能です。一方、二次信号である代謝活動はPET・SPECTやMRSで、三次信号である血流変化はPET、NIRS、fMRIで計測することが出来ます。
このうち、脳の神経活動を出来るだけ直接的に計測し、また定量化が可能な指標として、脳の代謝活動を反映すると考えられる脳温度が、MRIを用いた脳活動の定量化の計測値としては最適だと考えられます。
本研究プロジェクトでは、最終的にMRIによる脳温度計測による脳活動の計測を目的として、「脳温度計測の高度化」をはじめ、「神経活動-脳温度変化の連関メカニズムの解明」や「生理指標とfMRIの同時計測の研究」を進めています。さらに、臨床応用も視野に入れた活動をおこなっています。
プロジェクト担当者・担当分野
『次世代無侵襲・定量的脳機能イメージング法の開発』では、目標の達成に向けて、さまざまな分野での研究開発を行っています。
各分野における担当者は次のとおりです。