Hybrid-DTNで移動体のデータ収集効率が劇的に向上

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特徴・優位性

  • モバイル網とVDTNを適応的に切り替えることで、高いデータ収集効率を達成

用途・応用分野

  • コネクテッドカー向け大容量データ通信
  • 災害時の映像などの大容量データ転送
実証実験中

概要

自律分散処理技術を応用しデータ収集の効率面での課題解決を目指す技術です。

例えば、図1のようなコネクテッドカーを対象としたユースケースでは、一定の時間内に、必要なデータを複数の車から出来るだけ多くクラウド上に収集できることが重要です。とはいえ狭帯域のモバイル網しか利用できない地域や、モバイル通信可能エリアが十分に広くない地域でのデータ収集は、モバイル網に依存しない車車間通信が必須です。対策としてVDTN (Vehicular Delay Tolerant Network) と呼ばれるデータ転送方式が数多く提案されてきましたが、いずれの方式も大容量のデータ収集を対象に十分な収集成功率を実現できず、実用的ではありませんでした。

そこで私たちが提案するのが、新たなデータ収集アーキテクチャ「Hybrid DTN」です。Hybrid DTNはデータサイズに応じてモバイル網とVDTNを適応的に切り替えることによりデータ収集性能におけるあらゆる状況で飛躍的な性能向上をもたらします。2021年には車両上で動作する車車間通信用の標準規格IEEE802.11pを用いた分散プラットフォームを開発し、実車両を用いた実証実験を東京都小金井市のNICT本部敷地内で実施しました。

当技術は、車両に留まらず、様々な移動体での効率的なデータ収集に活用することが可能です。性能評価グラフで示されているように、既存手法と比べデータ収集効率を劇的に向上させると共に、携帯網などのネットワークやシステム全体への負荷を低減させることが可能です。今後は都市などを対象とした大規模実証を考えています。技術相談も歓迎いたしますので、お気軽にお問合せください。(2025年6月19日更新)

実用化例の説明。車載センサーからの故障情報や、コネクテッドカーから送られる車載カメラ映像や運転データなどを収集し、故障データや状況マップなどとあわせて分析。必要に応じて、車両オーナーへの故障診断アラートや、カーナビゲーション、住民への警報通知などを行う
図1.大容量データの
長期的な分析のユースケース
ハイブリッドDTNの仕組み。車両はクラウドと直接にコントロールプレーンを形成するとともに、車両から車両へ一方向のデータプレーンを通してロードサイドユニットへアクセス、クラウドストレージに情報を送る
Hybrid DTN アーキテクチャ
写真:2台の車両がすれ違う瞬間の画像
実車両を用いた実証実験の様子
グラフ:横軸に配達遅延(秒)、縦軸に配信完了率をとる。提案のハイブリット方式による配信完了率は、500秒の手前から急激に上昇し3500秒後には、エピデミック方式0.6に対し0.98が完了する
配信完了率の累積度数
グラフ:横軸にバッファサイズ(MB)、縦軸にトラヒック(メッセージ数)をとる。提案のハイブリット方式は、バッファサイズの大小を問わずコンスタントに、エピデミックの10倍程度を維持
バッファサイズとトラヒック

関連情報

  • 特許: 7215717号
  • 文献:
    • Y. Teranishi, et al. , “Hybrid Cellular-DTN for Vehicle Volume Data Collection in Rural Areas”, IEEE COMPSAC 2019.
    • 木全 崇 他,“IEEE 802.11p規格を用いたHybrid DTNの実車実証”,情報処理学会 DPS190.

担当部門

総合テストベッド研究開発推進センター テストベッド研究開発運用室

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