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独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫。)は、次世代衛星搭載用ソフトウェア無線機*1の実証モデル“再構成通信機搭載ソフトウェア無線機部”を開発しました。本技術の開発によって、柔軟で高い信頼性を有する衛星搭載通信機の軌道上実証に向けた第一歩が踏み出され、衛星搭載通信機の高度化が図れるだけでなく、地上通信インフラに依存しない災害時の非常用通信網の効率的な運用や、さらには衛星を利用した低コストなデジタルデバイドの解消にも役立つものと期待されています。 |
<背景>衛星通信は、通常の通信・放送目的のみならず、地上通信インフラに依存することなくネットワークを構築できるため、災害時の非常通信網やデジタルデバイドを解消する有力な手段として期待されています。こうした衛星通信の特長を生かすには、衛星上で高度な信号処理を行うための再生中継*2技術が必要となります。しかし、10年から15年以上と長い衛星寿命期間内に地上の通信技術は進歩し発展しますが、衛星搭載技術は更新ができず、地上技術に追従することのできる高度な再生中継器を衛星に搭載した例はありませんでした。 |
<今回の成果>今回、回路構成がソフトウェアによって変更可能な素子S-RAM型FPGA*3を採用し、再構成可能な回路素子を複数搭載した次世代衛星搭載用ソフトウェア無線機フライトモデルを新たに開発しました。その後同モデルの各種試験を実施し、衛星に搭載する再生型中継器として必要な機能・性能の評価、そして通信方式の変更にも柔軟に対応できることを確認しました。さらに再構成可能という性質を生かし、故障した回路の論理的な切り離しと機能の再構成により、“柔らかく壊れる(段階的な機能劣化)”*4通信機の動作も確認できました。こうした概念を実装した衛星搭載再生中継器は、この再構成通信機が世界で初めてとなります。 |
<今後の展望>再構成通信機は2010年頃の軌道上実証を目指して衛星システムを開発中です。今後は通信のみならず他の機能も実装し、より広範囲なアプリケーションに適応する中継技術を開発します。 |
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【開発した再構成通信機の性能及び機能】(1)再構成通信機の性能
(2)主な機能 ![]() 図4:故障時の縮退モード 軌道上でFPGAが故障した場合、電源と周辺の接続を遮断することにより、論理的にデバイスを排除する。例えば、通信機の場合、変調は復調に比べ約1/3程度の複雑さで実現が可能なため、本来復調器として使用していた故障ユニットであっても、変調器としては使用可能であり、システムレベルでは機能が変化しない。また、回路構成により処理性能を犠牲にして回路面積を削減すれば、性能は悪化(スループットの低下)するが、機能は保持することができる。 |