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図:宇宙天気現象と社会への影響

図:宇宙天気現象と社会への影響

はじめに

 本報告は、科学研究費補助金:新学術領域研究「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成 (2015-2019, 略称:PSTEP)」*1 の活動のもとにまとめられたものである。

 宇宙天気とは、主に太陽活動が源となって発生する、地球近傍宇宙の諸現象のことであり、我々の社会活動に与える影響が重要なファクターとなっている。しかしながら、従来の研究では宇宙環境の変動メカニズムおよびその予報までは対象としていたものの、その社会への定量的な影響についての議論は進められていなかった。このため、たとえ宇宙天気予報の警報を発信したとしても、そのための備えをどのようにしたら良いかについての指針がなく、その結果ユーザーの過剰な心配あるいは無関心に陥っていたのが現状である。

 本報告は、宇宙天気現象の社会への影響について、現在得られている知見を駆使し検討を行ったものである。加えて、我が国において今後どの程度の宇宙天気現象・災害が発生しうるか、その際にどのようなことが発生しうるかについて可能な限り検討を重ねた結果を示してある。

 我が国は中緯度に位置する島国と言うこともあり、例えば誘導電流による電力網への影響などは従来無視されてきた。しかしながらPSTEPの研究の中でその認識を再検討するべき結果も示されてきている。

 本稿をもとに今後宇宙天気情報のユーザーとのコミュニケーションを諮り、ユーザーサイドの具体的な対応策の検討まで進めることで、最先端の研究成果を社会活動に取り入れる好例としたい。また、本検討を進めている中で、現在の知見では十分な答えが得られない点も露わになってきた。これらを今後の課題として示し、将来の研究テーマとして検討を進めることで本稿を随時改訂していきたい。

国立研究開発法人情報通信研究機構 石井 守 (PSTEP A01 班代表)


*1 科学研究費補助金:新学術領域研究「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成 (2015-2019, 略称:PSTEP)」
 計画研究A01班「次世代宇宙天気予報のための双方向システムの開発」 (MEXT/JSPS KAKENHI Grant Number 15H05813)


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