国際VLBI事業(IVS : International VLBI Service for Geodesy and Astrometry)は、VLBI観測を実施あるいは支える機関が国際的に協力して立ち上げた組織で、1999年3月に発足した。これは、GPSやSLRで行っている国際事業(IGS(国際GPS事業)およびILRS(国際レーザー測距事業))に相当する事業をVLBIで行うことを目指して、IAG(国際測地学連合)の下に設立されたものである。
IVSの主要な目的は測地学、地球物理学や位置天文学等の研究に役立てる、高品質なVLBIデータおよび観測成果を提供するためのVLBIプログラムを促進すること、およびVLBI技術開発活動の促進である。特に国際地球回転事業(IERS)とは密接に連携し、天球基準座標系および地球基準座標系の維持と地球回転モニターに供するVLBIデータのすみやかな提供および公開を目指す。さらに、VLBIオペレータの育成及び訓練も目的としている。
IVSは、ネットワーク観測局、オペレーションセンター、相関処理局、解析センター、データセンター、技術開発センター、調整センターの各コンポーネントおよび評議委員会、会員、準会員から構成されている。IVSへコンポーネントとして参加している機関は15ヶ国(日本、オーストリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、ロシア、南アフリカ、スペイン、スェーデン、ウクライナ、米国)31機関に及んでいる。
日本からは国立天文台(ネットワーク観測局、解析センター)、国立極地研究所(ネットワーク観測局)、国土地理院(ネットワーク観測局、相関処理局)、および通信総合研究所(ネットワーク観測局、相関処理局、データセンター、解析センター、技術開発センター)が参加している。
IVS評議会は13名で構成され(議長:W.Schlueter(独)、日本からも2名が評議委員(国土地理院(松坂)および通信総合研究所(近藤->小山))として選出)、IVSの最高決定機関として調整・指導を行う。
IVS活動の主要部分となる技術開発、ネットワーク観測局の維持および質向上、データ解析の分野には、コーディネーターと呼ばれる責任者が置かれる(立候補者から評議委員会で選出)。IVS全体の調整を行う調整センターの代表はN.Vandenberg(米、NASA/GSFC)である。
今後の活動としては、IVSが制定したVLBIハードウェア標準インターフェース(VSI-H)の普及の為の啓蒙活動、標準インターフェースのソフトウェア仕様の制定、年報の出版、総会、ワークショップの定期的開催が計画されているが、日本としても、IVSに参加している4機関が中心となり、活動を展開している。
なお、総会は2年に1回開催されることとなっており、第1回は2000年2月にドイツで行われた。第2回は、2002年2月に日本での開催が決定されている。