巻頭言

日本の技術を国際地球回転事業の発展のために

時空計測研究推進委員会

委員長 杉浦 行

近年の宇宙測地技術の発展には目ざましいものがあります。VLBI、SLR、LLR、 GPS等の宇宙測地のハイテク技術に支えられ、園際地球回転事業(IERS)は地球回 転の精密観測を開始しました。そしてその素晴らしい観測結果はわれわれの地球像を変え つつあります。本事業は地球を対象としているため、息の長い観測を必要とします。一方、 その間も絶え間なく進歩続ける科学技術を観測技術に反映することが必要であり、技術 開発を事業の一環として取り込むことが不可欠と考えられます。このような認識のもとに、 1990年10月に米国ヴァージニア州で開催された国際地球回転事業評議会で、通信 総合研究所は米国へイスタツク観測所とともに同事業におけるVLBI技術開発センター の指名を受けました。このことは、当研究所の技術が評価されたぱかりでなく、これまで 当研究所を支えてきた関係各機関全体の技術が世界的に認められたものと考えられ、日本 の高い技術力へ大きな期待がかけられております。これに応えるため、今後、センターと して全力をあける所存でございますので、関係機関の一層のご協力を賜りたいと存します。

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技術開発センターの設立目的

技術開発センター(以下「技開センター」と呼ぶ)はIERSにおける

(1) VLBIの観測技術を維持発展させることにより
(2) 地球回転および宇宙時代の測位の研究を推進するほか、
(3) 新技術の普及にも努める。
(4) またこの組織は国内外に開かれたものとし、

新たに開発された技術の憶報提供にとどまらす、研究者の交換、R&D実験等を通じて英 知を集め、人類の知的財産の拡大につながる高度な技術の開発、実験のための場を提供す るよう努めます。

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組織

IERSの組織における技開センターの位置づけは第1図をご覧ください。日本国内 には国立天文台に置かれたVLBI観測センター、VLBI解析センタ一とともに3つの センターが存左することになります。技開センターは、通信総合研究所長直属の時空計測 研究推進委員会をもって運営され、委員は委員長(標準測定部長)によって指名される所 内委員と、通信総合研究所所長により委嘱される所外の委員(専門委員)から構成されま す。本センターの性格から、その運営および技術開発について専門委員のアドバイスを受 けることになっています。

図1:国際地球回転事業(IERS)の組織構成


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運営

技開センターは国際地球回転事業において有効と思われる新技術開発テーマを検討し 、開発計画を作成します。計画は技術開発センター会議における意見を考慮し決定します 。決定された各テーマは時空計測研究推進委員会の各グループおよび国内の、関連研究グ ルーブと共同して、その実現を図ります。また、米国へイスタック観測所(米国VLBI 技術開発センター)で並行して行われる技術開発との情報交換を行い、技術の国際的な協 調を図ります。

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