測地VLBIは主にS/Xバンドで実施されている。IERSにおける主要課題である精 度向上にむけて、より高い周披数帯(22GHz帯)での測地VLBI技術の確立をめざ す。広帯域化が容易、電離層遅延が小さく補正が容易で単周波観測が可能、遅延時間変化 率の精度向上、メーザ源と準星を組み合わせた位置天文への応用等により、測位精度向上 ・弱い電被源の観測・高精度電波源位置観測が可能となる。22GHz帯でも使用できる 位相校正信号装置を開発し、1991年2月にボローニャ局(伊)−鹿島局間で測地VL BI実験を行った。広帯域化は今後の課題であるが、13チャンネル360MHz帯域の 観測を行った。相関処理・バンド幅合成に成功し、位相校正信号が22GHzでも充分使 用できることが確認され、22GHz帯長基線での相関処理技法も確立された。また、遅 延時間・変化率を用いた基線解析を行い、0.18ns、0.094ps/s残差が得ら れたが、広帯域化していないことや、電離層補正・ケーブル遅延補正がないことなどから 、通常のVLBI相当の残差である。
また、39電波源に対し22GHz帯で長基線(UV〜3フリンジ/mas)での相関振 幅・相関強度の情報が新しく得られた。構造が分解されていることや、22GHz帯連続 波での強度が弱い電被源も多いため、Xバンドにくらぺて、相関強度が1/2〜1/4以 下になっている。強皮と距離(z)との相関があることも新しく判明した。さらに、22 GHz以上では影響が大きい大気の揺らぎによるロスの評価を行う方法も確立することが できた。今後、広帯域での22GHz帯測地VLBI精度の検討や、22GHz帯測地用 電波源サーベイのため、野辺山・臼田局等の国内局と協力して実験を継続していきたい。