単周波VLBIにおける電離層補正方法の確立

近藤哲朗

電離大気中を伝播する電波は周波数および伝播路中の全電子数に依存した遅延を被る。測 地VLBIでほこうした電離圏中の伝播遅延を補正するために2周波数帯(2GHz帯と 8GHz帯)の電被を受信する。しかしながらこの2周波数帯受信がアンテナの小型化( 直径3m以下)において技術的な障害となっている。もし何らかの方法で電離圏伝播遅延 を別途補正することが可能ならば小型アンテナの持つ長所(建設費用が安く持ち運びも容 易である)を活かすことができ、機動性に富んだ観測が可能となる。そこで低価格の装置 で高精度な電離圏全電子数観測が行えるGPS衛星利用全電子数測定装置の観測データを 用いての電離圏伝播遅延補正方式の確立を行う。一般にGPS衛星方向とVLBIで観測 する電波星方向は異なるためにGPS衛星方向で観測されだ全電子数をVLBIで観測さ れる電波星方向に投影しなければならない。この投影法の確立が「単周波VLBIにおけ る電離層補正方法の確立」となる。実際に2周波VLBIとGPS観測を同時に行い、種 々の投影方法(モデル)の関発および相互比較を行っている。モデルの改良によりVLB Iで観測された伝播遅延とGPS観測で得た全電子数から求めた伝播遅延が0.18nsec 以内で一致するようになった。現在さらに改良中であり、測地に必要な精度(0.1nsec 以下の一致度)の達成を目指している。




目次に戻る