TWCP

Carrier-Phase Two-Way Satellite Frequency Transfer

 衛星双方向時刻周波数比較 (Two-way satellite time and frequency transfer, TWSTFT) は、相対する地球局が商用静止衛星を経由し、信号を送受信することで行われる時刻・周波数比較測定です *1。 地球局には日本標準時などの基準信号が接続され、協定世界時のための比較測定法の1つとして用いられています。 TWSTFT は携帯電話などと同様の CDMA による通信を行い、コード位相を計測目盛りとして使用するためコード位相の変調速度が計測精度に比例します。 より精度を上げるためにはより速い変調信号が必要となり、結果として衛星上のより広い周波数帯域を必要とし、高価な衛星回線費を支払う必要が出てきます。 このことから計測精度向上が進まず、進歩目覚ましい光時計の比較には精度が不充分です。

 そこで我々はコード位相ではなく、より目盛りの細かい搬送波位相を利用する方法 (TWCP) の開発に成功しました *2。 商用静止衛星は GPS 衛星とは異なり精度のよい原子時計は搭載していないため、衛星上で受ける周波数変換時にもたらされる大きな位相雑音をどう取り除くかが問題の1つでしたが、我々は自局の折り返し信号を含む4つの信号を用いて数式的にキャンセルする方法を考案しました。


 TWCP により短期の計測精度は約 1,000 倍向上し、1秒平均でサブピコ秒が得られています。 また、最長基線(基線長 9,000 km)の1つとなる日本-ドイツの時刻標準機関との間で、世界初の衛星経由による光時計の比較実験を行いました *3, *4。 これらの測定は従来の 1/10 の周波数帯域で行っており経済的効果もあげています。 我々はこの TWCP 法について更なる精度向上、他機関への普及を目標として研究を行っています。

*1; D. Kirchner, Rev. of Radio Science, 27-44, 1999.
*2; M. Fujieda et al., IEEE TUFFC, 59, 12, 2625-2630, 2012.
*3; M. Fujieda et al., Metrologia, 51, 253-262, 2014.
*4; H. Hachisu et al., Optics Letters, 39, 14, 4072-4075, 2014.