Proactive Desk image

五感メディア研究室 [SEM]

プロジェクト | Proactive Desk 机型力覚提示装置

力を伝える不思議な机


概要 | 力を生み出すメカニズム | フォースフィードバックの仕組み | LIM方式の力覚提示装置の利点 | 資料 | 発表文献 | メンバー

概要

Proactive Desk

Proactive Deskはコンピュータの世界からの物理的な応答を可能とさせるインタフェースのひとつである.現在のコンピュータからの応答は,主に視覚と聴覚に頼った物であるが,このシステムを用いて利用者に対して物理的な「力」を感じさせることにより,触感を伴った物体操作もが可能になる.例えば既存のGUIへ応用し,致命的な結果を引き起こすボタンに対してはボタンに進入しづらい力を発生させ,奨励するような操作に対してはそちらへ誘導する力を発生させることにより操作支援を行うことが可能である.また机上に投影された映像の地図の上を,車の模型が移動して道順を示すといった,コンピュータグラフィックスだけではなく,実物を用いた視覚的な情報提示なども可能となる.

力を生み出すメカニズム

「力」という物理的な情報を生成するために,本システムではリニア誘導モータ(Linear Induction Motor: LIM)を用いている.1次元のLIMの動作原理は一般的な三相交流モータと同じである.1次側には3組で対となるコイルが動作方向に対して複数個並べ,これに三相交流が印加するとコイルを並べた方向に進行磁界Bが生じる.すると2次側となる導体内にはこの磁界の進行を妨げる方向に磁界を発生させる渦電流Iが励起される.この渦電流に対して進行磁界が作用し,フレミング則に従い2次側の導体に並進力Fが生じる.Proactive Deskでは2組のLIMのコアを直交するように配置する方式により,机の下に2自由度を持つLIMを構築し,机上の非磁性体の導体(Forcerと呼ぶ)に対して平面方向に自由に駆動させる力を発生させている.Forcerに生じる力はその面積や厚さに比例する.試作機では200mm×100mm,10mm厚の銅製Forcerにて最大11N程度の力を計測することができた.

LIM

フォースフィードバックの仕組み

これを入出力装置として用いるためには,Forcerの位置を追跡しフィードバック処理を行う必要がある.ForcerにはLEDが取り付けられ,この光を頭上に配置した位置検出素子(PSD: Position Sensitive Detector)にて検出する.これにより,机上の任意地点へのForcerの位置制御や,特定箇所における任意量の力の発生などの制御を行う.なお,机上へはプロジェクタにより映像も投影されるため,LEDには赤外線光を発するものを用い,PSD側に可視光カット,プロジェクタ側に赤外線光カットフィルタを取り付けた.また利用者はForcerを手にすることにより力という物理的な情報をデジタルな世界から得ることが可能である.
さらにForcer上にはマウスや筆の形をしたグリップを取り付け,入力インタフェースとして用いる.Forcerはキャンバスと同一の白色に塗られ,上から投影される映像が重畳されるために一見ガラスの板がおいてあるかのように見える.マウスの代わりとして利用できるよう,グリップ部にボタンも配置されている.ボタンを押した際にはパルス的な明滅がLEDに起きる.数kHzでもサンプリング可能なアナログデバイスであるPSDによって,これをトリガとして検出することによりクリック操作を実現する.

フォースフィードバックの仕組み

LIM方式の力覚提示装置の利点

本システムにおける力覚提示の仕組みの特徴として,利用者に見えるのはキャンバスと同一の色に塗られたプレート状のForcerだけであり,ほぼその構造をキャンバスである机の下に隠蔽することが可能な点が挙げられる.これは,頭上から投影されるコンピュータの映像を阻害するものが少ないことを意味し,利用者は通常のタブレットを扱うかのように机上での操作が行える.さらにLIMを用いる利点として,LIMのサイズに比例して強力な力をキャンバス全体にわたる広い範囲に容易に発生させることが可能な点が挙げられる.結果として,Digital Deskに要求されるような2次元での作業が,磁気的な吸引力による机上物体の位置制御装置や,機械的なリンク機構による他の力覚提示装置らと比較してより簡単に行うことが可能である.

資料

system overview   desktop   forcers

発表文献

  1. The Proactive Desk: A New Haptic Display System for a Digital Desk Using a 2-DOF Linear Induction Motor
    Haruo NOMA, Shunsuke YOSHIDA, Yasuyuki YANAGIDA, Nobuji TETSUTANI
    Presence, Vol.13, No.2, pp.146-153, April 2004
  2. Proactive Desk: 力覚提示が可能なデスクトップ操作環境(論文賞受賞)
    Proactive Desk: New desktop environment with haptic display

    吉田俊介,柿田充弘,野間春生,鉄谷信二
    インタラクション2003, 情報処理学会, IPSJ Symposium Series Vol.2003, No.7, pp.211-212, 2003
  3. Proactive Desk: リニア誘導モータを用いた力覚提示が可能な電子机 Proactive Desk: Digital Desk with force feedback function using Linear Induction Motor
    吉田俊介,野間春生,鉄谷信二
    2003年電子情報通信学会総合大会公演論文集, 2003信学総大, A-16-24, p.319, 2003
  4. 二次元リニア誘導モータの特性に基づいたProactive Deskの設計に関する考察
    Design of the Proactive Desk Based on Characteristics of 2-DOF Linear Induction Motor

    柿田充弘,吉田俊介,野間春生,鉄谷信二
    ヒューマンインタフェース学会研究報告集, Vol.5, No.3, pp.83-88, 2003
  5. Proactive Desk を用いた力覚付き情報キオスクの提案
    A Proposal of Information Kiosks with a Force Feedback using the Proactive Desk

    吉田俊介,柿田充弘,野間春生,鉄谷信二
    ロボティクス・メカトロニクス講演会2004, 1A1-H-75, 2004.6
リンク:Project"Sumi-Nagashi"

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