第008回KARCコロキウムのご案内
第008回KARCコロキウムは終了しました。ご参加ありがとうございました。
開催日時 | 2002年1月 8日 (火) 14:00 ~ 15:30 |
開催場所 | KARC第1研究棟2階小会議室 |
講演 | 「知覚の可塑性・記憶と初期視覚における広範囲に渡る空間相互作用」 |
講演者 | 田中 靖人氏 (カリフォルニア大学バークレィ校・眼科部門) |
講演概要 | 最近の心理物理学・神経生理学の研究の進展によって、視覚の初期過程の相互作用により視覚系の可塑性が励起されることが見いだされた(Karani &Sagi,1991; Kapadia, Westheimer& Gilbert, 1999)。低次視覚系の空間相互作用(Polat &Sagi 1993, 1994; Ishai&Sagi 1995) の可塑性を追究するため、先行マスキング法(Breitmeryer 1984)を用いて被験者のガボール刺激に対するコントラスト感度を検定する実験を行った。その結果、閾値付近の低コントラストのガボール刺激を短時間提示(90ミリ秒)することにより、長時間持続する記憶痕跡を形成することに成功した。即ちガボール刺激に対する視覚検出閾の低下(30から50%)が、16.3秒に渡って持続される。この持続時間は、いわゆる知覚統合時間(=visual integration time<200ミリ秒)の約100倍である。この知覚記憶は、方向、網膜上の位置、空間周波数といった局所的なパラメータ (Hubel & Wiesel, 1962) に特異的なだけでなく、大域的な配置(一列に並んだ配置=collinear configuration)にも特異的であることがわかった(Tanaka & Sagi 1998, Vision Research 38:2591-2599) 。更にこの効果は視覚刺激のコントラストに特異的である。即ち、低コントラスト刺激の先行提示にのみ生じ、高コントラスト刺激の先行提示により妨害される。こうした結果は、初期視覚過程が、視覚短期記憶の生成に直接関与していることを示唆する (Tanaka & Sagi 1998 Proc.Natl. Acad. Sci. 12729-33)。この視覚記憶痕跡は、方向・コントラストといった低次の視覚特性と、より高次の、タイミングによって引き起こされる調節機構 (attention gating;Reeves & Sperling, 1986) との両方に依存する。このタイミング調節効果は、タイミング手がかりから視覚刺激までの時間が、300?500ミリ秒で最大である (Tanaka and Sagi 2000 Vision Research 40:1089-1100)。このタイミング調節効果はコントラストの弁別ガボール刺激による広範囲に渡る空間相互作用 (Polat & Sagi 1993) を増強する。最近、我々は長期に持続する視覚記憶の同定に成功した。上述のタイミング調節刺激と視覚刺激のセットを数分間、数百回にわたり連続提示することにより、空間相互作用の増強が数ヶ月に渡り持続する (Tanaka & Sagi 2001) 。これは、こうした広範囲の視覚相互作用が及ぼす記憶効果が長期的に強化(memory consolidation, Karni & Sagi 1995)されたことを示唆する。 |
使用言語 | 日本語 |
参加費 | 無料 |
担当者 | 脳機能グループ、宮内、芝原 |