第120回KARCコロキウムのご案内

第120回KARCコロキウムは終了しました。ご参加ありがとうございました。


開催日時 2013年11月5日(火) 13:30~15:00
開催場所 未来ICT研究所 第一研究棟 2F 大会議室
講演 「すばる望遠鏡から顕微鏡へ:高解像度観察を可能にする補償光学の新展開」
講演者 服部 雅之氏
(基礎生物学研究所光学解析室 NIBBフェロー 元 ハワイ観測所補償光学グループから移籍)
玉田 洋介氏
(基礎生物学研究所 生物進化研究部門 助教)
講演概要 「補償光学」は、観測対象と光学系との間に存在する屈折率分布の擾乱による影響を補正し、回折限界に迫る高い分解能を得る技術であり、地上望遠鏡を用いた天体観測において有効性が示されている。服部の発表では、補償光学の原理、さらにその実例として、国立天文台ハワイ観測所で稼働中の188素子レーザーガイド星補償光学系を中心に、天体観測に応用されている補償光学について解説する。すばる望遠鏡の補償光学系は、赤外線の波長で回折限界に近い分解能を達成している。また、上空100 kmの中間圏に存在するナトリウム層をレーザーで励起・発光させ、補償光学に必要なガイド星を人工的につくり、補償光学で観測可能な天域の拡大に成功している。現在、すばる次世代補償光学システム (ULTIMATE-SUBARU) が計画中であり、他の大型望遠鏡で計画されている次世代補償光学システムとあわせて、補償光学の将来像について概説する。また近年、補償光学は天体望遠鏡以外へも応用が広がりつつあり、それらについても簡単に紹介する。 一方、顕微鏡を用いたライブイメージングでは、光が多様な屈折率を有する生体内構造を通過して屈折するため、得られる像が劣化する。そうした光の屈折を補償光学によって補正すると、複雑かつ多様な生体組織の内部でも鮮明な像が得られると期待される。玉田の発表では、補償光学を備えた顕微鏡システムの新規開発とその試作機を用いた細胞ライブイメージングの進捗について報告する。まず、一層の細胞内でも像が著しく乱れるモデル植物ヒメツリガネゴケを生物材料として用い、細胞の光学特性を詳細に解析した。その解析結果をもとに、ヒメツリガネゴケの光学特性をモデル化した人工試料を製作し、像の劣化を評価し、生物材料として模擬できることを確認した。さらに、その像の劣化を補正することのできる補償光学顕微鏡の試作機を開発した。最後に、その試作機を用いてタマネギ鱗片葉表皮細胞やヒメツリガネゴケ細胞のライブイメージングを行い、精細な画像を得ることに成功した。以上の結果は、補償光学がライブイメージングに適用しうることを示したものであり、今後の補償光学顕微鏡発展の基礎となるものである。また、補償光学は「観察系」だけでなく「照射系」への応用も可能である。光シート顕微鏡や多光子顕微鏡はもとより、オプトジェネティクスやIR-LEGOといった生体細胞光操作技術への展開についても今後の方向性を示したい。
使用言語 日本語
参加費 無料
担当者 情報通信研究機構 未来ICT研究所
バイオICT研究室 招聘専門員 平岡 泰