脳情報通信融合研究センター 林グループでは、心理物理学や脳機能イメージング等の手法を用いて、ヒトの脳が知覚体験を生み出すメカニズムを研究をしています。また、磁気刺激や電流刺激を脳に与えて知覚体験がどのように変化するかを調べることで、脳と知覚の間の因果関係に迫ります。さらにこれらの研究から得られた知見を応用し、ヒトの主観的感覚を意のままに制御したり、これまでに経験したことのない新たな知覚体験を作り出す技術を開発することを目標としています。

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  • 大阪国際サイエンスクラブ「金曜サイエンスサロン」(1月31日)で林が講演します。

APPROACH

神経相関を明らかにする

心理物理実験や、脳機能計測を通して、知覚や認知に関わる神経基盤を明らかにします。最近では特に、「時間」や「数」の情報処理に関わる神経メカニズムに注目し、それらの情報の脳内表現や、知覚との関係について研究を進めてきました。今後はこれらの研究をさらに深化させるとともに、脳が情報を効率的に表現・処理するメカニズムや、脳における情報表現の様式がヒトの思考や言語にどのような制約を与えているのかについても、研究を進めていきたいと考えています。

因果関係を明らかにする

脳機能計測の弱点は、知覚や認知と脳活動の相関関係を明らかにできる一方で、それらの因果関係を明らかにできないことです。そこで私達は、体を傷つけることなく脳を刺激できる経頭蓋磁気刺激(TMS, tSMS)や経頭蓋電気刺激(tDCS, tACS)といった手法を用いることで神経活動を一時的に干渉・操作し、知覚や認知がどのように変化するかを明らかにすることで、因果関係を明らかにします。現在は主に、時間や数の知覚が、脳刺激によってどのように変化するかを調べています。

能力を拡張・創生する

心理物理実験や脳機能計測、脳刺激実験等によって得られた知見をベースに、ウェアラブルデバイスによる外界情報の収集や生体情報の計測、機械学習、および感覚刺激や脳刺激の手法を組み合わせ、ヒトの知覚や認知能力を向上させたり、自らの意思で制御したりすることができる技術を開発します。さらに将来的には、これまでヒトが持ち合わせていなかった新たな能力を獲得する手法を開発し、これを社会実装することを目指します。

PUBLICATIONS

プレプリント

  1. Kido T, Yotsumoto Y, Hayashi MJ (2024) Hierarchical representations of relative numerical magnitudes in the human frontoparietal cortex. Research Square. [Full text]
  2. Kawashima T, Hayashi MJ, Amano K (2022) Attentional rhythmic blink: Theta/Alpha balance in neural oscillations determines the rhythmicity in visual sampling. bioRxiv. [Full text]

論文

  1. Kimura I, Hayashi MJ, Amano K (2024) Immediate effect of quadri-pulse stimulation on human brain microstructures and functions. Imaging Neuroscience, 2: 1–15. [Full text]
  2. Protopapa F, Kulashekhar S, Hayashi MJ, Kanai R, Bueti D (2023) Effective connectivity in a duration selective cortico-cerebellar network. Scientific Reports, 13:20674. [PubMed] [Full text]
  3. Gallego Hiroyasu EM, Laje R, Nomura K, Spiousas I, Hayashi MJ, Yotsumoto Y (2023) Longitudinal analysis of social isolation effects on finger tapping in the Blursday database. Scientific Reports, 13:11277. [PubMed] [Full text]
  4. 川島 朋也, 澁澤 柊花, 林 正道, 池田 尊司, 田中 悟志 (2023) 脳刺激研究の現在:認知心理学との接点. 認知心理学研究, 20(2): 91-101. [Full text]
  5. Li L, Yotsumoto Y, Hayashi MJ (2022) Temporal perceptual learning distinguishes between empty and filled intervals. Scientific Reports, 12: 9824. [PubMed] [Full text]
  6. Kimura I, Ugawa Y, Hayashi MJ*, Amano K* (2022) Quadripulse stimulation: A replication study with a newly developed stimulator. Brain Stimulation, 15(3): 579-581. *Equal contribution. [PubMed] [Full text]
  7. Kimura I, Oishi H, Hayashi MJ*, Amano K* (2022) Microstructural properties of human brain revealed by fractional anisotropy can predict the after-effect of intermittent theta burst stimulation. Cerebral Cortex Communications, 3(1): tgab065. *Equal contribution. [PubMed] [Full text]
  8. 杉山 翔吾, 廣康 衣里紗 まり, 野村 圭史, 林 正道, 四本 裕子 (2021) 外出規制が孤独感・不安・抑うつに及ぼす影響ーー日本在住者を対象とした縦断的研究ーー. 心理学研究, 92(5): 397-407. [Full text]
  9. Hayashi MJ, Ivry RB (2020) Duration selectivity in right parietal cortex reflects the subjective experience of time. Journal of Neuroscience, 40(40): 7749-7758. [PubMed] [Full text] [Covered in Nature as "Research Highlight"]
  10. Protopapa F, Hayashi MJ, Kulashekhar S, van der Zwaag W, Battistella G, Murray MM, Kanai R, Bueti D (2019) Chronotopic maps in human supplementary motor area. PLoS Biology, 17(3): e3000026. [PubMed] [Full text] [Recommended in Faculty Opinions]
  11. Hayashi MJ, van der Zwaag W, Bueti D, Kanai R (2018) Representations of time in human frontoparietal cortex. Communications Biology, 1(1): 233. [PubMed] [Full text]
  12. Kanaya S, Hayashi MJ, Whitney D (2018) Exaggerated groups: Amplification in ensemble coding of temporal and spatial features. Proceedings of the Royal Society B, 285(1879). [PubMed] [Full text]
  13. Okamoto Y, Kosaka H, Kitada R, Seki A, Tanabe HC, Hayashi MJ, Kochiyama T, Saito DN, Yanaka HT, Munesue T, Ishitobi M, Omori M, Wada Y, Okazawa H, Koeda T, and Sadato N (2017) Age-dependent abnormalities in body- and face-sensitive activation of the EBA and FFA in individuals with ASD. Neuroscience Research, 119: 38-52. [PubMed] [Full text]
  14. 林 正道 (2016) 時間を計る脳のしくみ—時間長の集団コーディング. BRAIN and NERVE, 68(11): 1385-1391. [PubMed] [Full text]
  15. Hayashi MJ, Ditye T, Harada T, Hashiguchi M, Sadato N, Carlson S, Walsh V, Kanai R (2015) Time adaptation shows duration selectivity in the human parietal cortex. PLoS Biology, 13(9): e1002262. [PubMed] [Full text]
  16. Okamoto Y, Kitada R, Tanabe HC, Hayashi MJ, Kochiyama T, Munesue T, Ishitobi M, Saito DN, Yanaka HT, Omori M, Wada Y, Okazawa H, Sasaki AT, Morita T, Itakura S, Kosaka H, Sadato N (2014) Attenuation of the contingency detection effect in the extrastriate body area in Autism Spectrum Disorder. Neuroscience Research, 87: 66-76. [PubMed] [Full text]
  17. Hayashi MJ, Kantele M, Walsh V, Carlson S, Kanai R (2014) Dissociable neuroanatomical correlates of subsecond and suprasecond time perception. Journal of Cognitive Neuroscience, 26(8): 1685-1693. [PubMed] [Full text]
  18. Yoshida Y, Tanabe HC, Hayashi MJ, Kawamichi H, Kochiyama T, Sadato N (2013) The neural substrates of the warning effect: A functional magnetic resonance imaging study. Neuroscience Research, 76(4): 230-239. [PubMed] [Full text]
  19. Sakai H, Uchiyama Y, Shin D, Hayashi MJ, Sadato N (2013) Neural activity changes associated with impulsive responding in the sustained attention to response task. PLoS One, 8(6): e67391. [PubMed] [Full text]
  20. Hayashi MJ, Valli A, Carlson S (2013) Numerical quantity affects time estimation in the suprasecond range. Neuroscience Letters, 543: 7-11. [PubMed] [Full text]
  21. Hayashi MJ, Kanai R, Tanabe HC, Yoshida Y, Carlson S, Walsh V, Sadato N (2013) Interaction of numerosity and time in prefrontal and parietal cortex. Journal of Neuroscience, 33(3): 883-893. [PubMed] [Full text]
  22. Tanabe HC*, Kosaka H*, Saito DN, Koike T, Hayashi MJ, Izuma K, Komeda H, Ishitobi M, Omori M, Munesue T, Okazawa H, Wada Y, Sadato N (2012) Hard to “tune in”: neural mechanisms of eye contact and joint attention in high-functioning autistic spectrum disorder. Frontiers in Human Neuroscience, 6: 268. *Equal contribution. [PubMed] [Full text]
  23. Saito DN*, Tanabe HC*, Izuma K, Hayashi MJ, Morito Y, Komeda H, Uchiyama H, Kosaka H, Okazawa H, Fujibayashi Y, Sadato N (2010) “Stay-tuned”: inter-individual neural synchronization during gaze and joint attention. Frontiers in Integrative Neuroscience, 4: 127. *Equal contribution. [PubMed] [Full text]
  24. Hayashi MJ, Saito DN, Aramaki Y, Asai T, Fujibayashi Y, Sadato N (2008) Hemispheric asymmetry of frequency-dependent suppression in the ipsilateral primary motor cortex during finger movement: A functional magnetic resonance imaging study. Cerebral Cortex, 18(12): 2932-2940. [PubMed] [Full text]

書籍

  1. 林 正道. 時間感覚の文脈依存性とその神経機構. Clinical Neuroscience (中外医学社) 41巻 8号, 2023年8月.
  2. 林 正道. Q&A-神経科学の素朴な疑問. Clinical Neuroscience (中外医学社) 40巻 2号, 2022年2月.
  3. 林 正道. 素顔のニューロサイエンティスト. Clinical Neuroscience (中外医学社) 36巻 124号, 2018年1月.
  4. 林 正道. 時間感覚を担う脳領域. Clinical Neuroscience (中外医学社) 33巻, 2015年5月.

FACILITIES

研究センター共用設備

磁気共鳴画像装置(MRI)

Siemens MAGNETOM Prisma, PrismaFit, Vida (3テスラ)
Siemens MAGNETOM Terra (7テスラ)

脳磁計(MEG)

Elekta Neuromag 360-channel MEG System

研究室専用設備

経頭蓋磁気刺激装置(TMS)

Magstim 2002, BiStim2
Deymed DuoMAG MP-Quad

TMSナビゲーションシステム

Rogue Research Brainsight

TMSコボット

Axilum TMS-Cobot

経頭蓋静磁場刺激(tSMS)

Neurek MAG45r+, MAG50r+

この他にも、経頭蓋電気刺激装置(tDCS/tACS)、アクティブ脳波計(EEG)、眼球運動計測装置、心理物理実験室(防音室)などが利用可能です。

TEAM

チームリーダー

林 正道

林グループPI
脳情報通信融合研究センター テニュアトラック研究員
大阪大学大学院生命機能研究科 招へい准教授

  • 主観性
  • 時空間知覚
  • 人間拡張

協力研究員

上田 奈津貴

脳情報通信融合研究センター 特別研究員
国立精神・神経医療研究センター 研究員
日本学術振興会 特別研究員(PD)

  • 時空間知覚
  • 記憶
  • 精神疾患

杉本 匡紀

脳情報通信融合研究センター 協力研究員
大阪大学大学院生命機能研究科 大学院生
超域プログラム Advancedコース履修生
「社会と知の統合」フェローシップ履修生

  • 脳刺激
  • MRI
  • 時間知覚
  • 認知神経科学

金地 旅生

脳情報通信融合研究センター 協力研究員
大阪大学大学院生命機能研究科 大学院生
次世代挑戦的研究者育成プロジェクト生

  • 時間知覚
  • 時間分解能
  • 心理物理学

高橋 智輝

脳情報通信融合研究センター 協力研究員
大阪大学大学院生命機能研究科 大学院生
次世代挑戦的研究者育成プロジェクト生

  • 数知覚
  • 共感覚
  • 多感覚統合

坂本 洋輔

脳情報通信融合研究センター 協力研究員
大阪大学大学院生命機能研究科 大学院生

  • 時間知覚
  • メタ認知
  • 意識
  • 計算モデリング

代 泽瑞(DAI Zerui)

脳情報通信融合研究センター 協力研究員
大阪大学大学院生命機能研究科 大学院生

  • 時間知覚
  • 言語

研修員

橋本 みんと

脳情報通信融合研究センター 研修員
大阪大学大学院生命機能研究科 研究生

  • 同時性の窓
  • 時間知覚
  • 視覚

研究補助員

小幡 椋平

(株)メディアックス
開発支援グループ システムエンジニア(派遣)

  • フロントエンド
  • バックエンド
  • ボルダリング

多久和 由加里

脳情報通信融合研究センター 短時間一般職

  • 茶道
  • 京都散策

インターン生

Ankit Maurya

インド工科大学ルールキー校
人文社会学科 大学院生

共同研究者

杉本 尚哉

上智大学 総合人間科学部
心理学科 学部生

日髙 聡太

上智大学 総合人間科学部
心理学科 教授

阿部 十也

国立精神・神経医療研究センター
脳病態統合イメージングセンター 部長

Tony Thomas

インド工科大学ルールキー校
人文社会学科 助教

木村 司

大阪大学大学院
人間科学研究科 助教

木戸 照明

東京大学大学院
総合文化研究科 大学院生

木村 一晧

理化学研究所
基礎特別研究員

川島 朋也

金沢工業大学
情報フロンティア学部 講師

四本 裕子

東京大学大学院
総合文化研究科 教授

過去の所属メンバー

細谷 昂平

大学院生
2021.4~2024.3

藤原 夏葉

研究補助員
2019.9~2023.7

寺西 正樹

インターン生
2023.3

中西 希天

インターン生
2023.2~2023.3

市川 直人

研究技術員(派遣)
2022.11~2023.3

川崎 詩歩未

協力研究員
2022.6~2023.3

VACANCIES

研究員募集中

当グループではJST創発の研究プロジェクトを一緒に推進する研究員を1名募集しています。時間・空間情報を柔軟かつ効率的に表現・処理する脳内メカニズムの探求に興味がある方は、ぜひご検討ください。公募締め切りは 11月28日16時です。

  • 勤務地:CiNet (大阪大学吹田キャンパス内)
  • 任期:2025年4月着任、最長2年
  • 給与(本給):45万2千円/月

選考では研究プロジェクト(JST創発)とのマッチングを重視します。脳機能イメージングまたは心理物理学実験の経験・実績があれば望ましいですが、ない方の応募も歓迎します(詳細は公募ページ参照)。

応募を検討される方は、事前に一度林までご連絡・ご相談頂けますと助かります(emailにCV添付のこと)。

日本学術振興会 特別研究員の受け入れが可能です。林までご相談ください。

大学院生・インターン生募集中

大学院生は、大阪大学(または他大学)に在籍しながら、協力研究員またはインターン生として当研究室で受け入れることが可能です。
学部生はNICTの研修員、あるいはインターン生としての受け入れが可能です。林までご相談ください。

研究補助員募集中

当グループにおける研究をサポートしてくださる研究補助員を募集しています。業務内容は、研究遂行のための事務および実験補助等です。週3日(6時間/日)勤務を予定しています。応募要件は大学卒業以上で、ワードやエクセルなどのパソコンの基本操作ができ、コミュニケーション能力が高い方。これまでに大学等研究機関で研究支援業務の経験があれば望ましいですが、そのような経験のない方の応募も歓迎します。詳細は下記の公募ページをご覧ください(契約期間についての詳細は林まで直接お問い合わせください)。

実験参加者募集中

CiNetでは、行動実験、脳機能イメージング、脳刺激実験等の実験参加者を随時募集しています。
CiNet実験参加者登録システムにてアカウントを作成の上、ご参加ください。

ACCESS

連絡先

情報通信研究機構 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-4
E-mail:m.hayashi[at]nict.go.jp

公共交通機関

モノレール

大阪モノレール彩都線「阪大病院前」下車 徒歩約5分

バス

阪急バス 千里中央発「阪大本部前行」または「茨木美穂ケ丘行」
近鉄バス 阪急茨木市駅発「阪大本部前行」(JR茨木駅経由)
いずれも、「阪大医学部前」下車 徒歩約1分