NICTは現在、約600名の研究員たちが情報通信技術(ICT)分野の最前線で新たな道を切り拓くべく研究に取り組んでいます。
そんなNICTがいま必要としているのは、「若者の視点」。
様々なものへの好奇心と柔軟な発想力を持ち、既存の枠組みにとらわれず変革を実現できる、若き研究者を必要としています。
そこで今回、若者の代表者として、世界を変える若きクリエイターの2人をNICT本部にお招きし、
NICTを代表する2人の研究者と業種の枠組みを超えてトークをするという、突拍子もない企画を実施しました!
若きクリエイターの2人は、発明家の藤原麻里菜さんと株式会社ヘラルボニー代表取締役社長の松田崇弥さん。
「Forbes JAPAN」が選ぶ『世界を変える30歳未満の30人』に、
藤原さんは2021年に、松田さんは2019年に選出されたという、今注目の若きクリエイターです。
2人とトークを繰り広げるのは、サイバーセキュリティ研究所
研究所長の盛合志帆氏と、
サイバーセキュリティ研究所サイバーセキュリティネクサス
ネクサス長の井上大介氏。
NICT×藤原麻里菜×ヘラルボニー。
一見、共通点のなさそうな組み合わせですが、ジャンルが異なるからこそ、
それぞれの意見が刺激となったり共通点が新鮮だったりと、座談会は期待をはるかに上回る盛り上がりとなりました!
大学院博士課程後期修了後、2003年、独立行政法人通信総合研究所(現 NICT)に入所。2006年よりインシデント分析センターNICTERを核としたネットワークセキュリティの研究開発に従事。博士(工学)。
ネクサス長としてサイバーセキュリティに取り組む井上氏。
世界中からのサイバー攻撃をNICTで観測・分析をして、特に日本がどうなっているのかという大局的な動向を知るための可視化エンジンを作っています。そもそもデータを可視化しようと思った原点は何だったのかお聞きしました。
井上: 一番最初はもうひたすらテキストのログを見るところから始まってるんですよね。今このリアルタイムで可視化してる情報は、ログにすると数万行の情報が一気に続いているものになるんです。僕たちは子供の頃、SFってなんかすごいカッコいいなって思ってサイバーセキュリティもそのイメージでいたのですが、蓋を開けてみたら、実際はログが数万行の世界で、ひたすら地味な世界なんですよね。そういうのをなるべくもう1回カッコいい仕事にしたいなっていうのが一番大きくありましたね。
NICTER。無差別型サイバー攻撃の大局的な動向を把握することを目的としたサイバー攻撃観測・分析システム井上: あとはもう1つ、例えばセキュリティの仕事をやり始めて1、2週間の人でも、何が起こってるのかはわかるというところまで持っていきたいなっていうのがあって、可視化するというのはそういうオペレーションを簡単にするためって意味でもあります。テクノロジーの側でやることを簡単にしていって、裾野を広げるっていうことも必要かなと思ってやってます。
1993年生まれ。2013年から頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2016年、Google社主催の「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展- 無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。25000人以上の来場者を記録した。2021年「考える術(ダイヤモンド社)」「無駄なマシーンを発明しよう(技術評論社)」を上梓。「総務省 異能vation 破壊的な挑戦者部門 2019年度」採択/「オンライン飲み会緊急脱出マシーン」文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門審査委員会推薦作品に選出/ 2021年 Forbes Japanが選ぶ「世界を変える30歳未満」30 UNDER 30 JAPANに選出される。
無駄なものを社会に作り続ける、ということに取り組んでいる藤原さん。
だいたい週に1つのペースで新作を作り続けているそうですが、そんな藤原さんにとって『無駄』とは何かをお聞きしました。
藤原: 無駄づくりの無駄っていうのは、有用性かどうかっていうのを考えずに手を動かして、とりあえず思いついたものをつくるってことですね。研究とかもそうだと思うんですけど、『これやりたい』とか『これ興味あるんだけど』っていうものを、『それって何になるの?』って言われて却下されちゃったことって、実は有用性のあることだったってこともあると思うんです。それは長期的に見たらすごい損失になっちゃうことで、それって無駄を大切にしないから起こることなので、私はそういうのってちょっと嫌だなぁと思うんです。だから無駄をつくるっていう行為をして、無駄とか余白とかを肯定することで何か社会にゆとりが生まれるんじゃないかなと思ってやってます。
お持ちいただいた発明品『ゴミプラモ』。組み立てると、紙くずを丸めたような『ゴミ』になるというプラモデル。大学ではコンピュータアーキテクチャを学び国内有数の大手通信企業へ就職。「暗号」分野の研究に携わる。その後、大手電機メーカーへ転職。有名ゲーム機のセキュリティ機能やコピーガードの設計開発に携わる。2012年、NICTへ入所。2021年4月より現職。
2021年4月にNICT初の女性「研究所長」に就任された盛合さん。
サイバーセキュリティ分野におけるNICTのミッションについてお聞きしました。
盛合: いまNICTに課せられてるミッションの1つとして、我が国のサイバーセキュリティ対策の力をみんなで上げるんだぞ、というところがあるんです。例えば企業のサイバーセキュリティが狙われるということが毎日起こっているように、地方公共団体とか国の機関とかも同じように狙われています。そこに向けて『もしこんなの起こっちゃったときどうすればいいの?』っていう初期対応がとっても大事なんです。その初期対応の演習を、もう5年近く毎年3000人以上の方を相手にやっています。
それから広がりを見せるIoT機器のサイバーセキュリティ対策のために、パスワード設定などに不備のあるIoT機器を減らしていくための調査も行っています。
あと先ほどサイバーセキュリティの可視化の技術がありましたけれども、そこの裏にはいろんな研究基盤的な研究があるんですよね。それをしっかり着実にやっていこうというのもあります。
また、暗号技術もやはりサイバーセキュリティ的に重要な観点です。いま各国で量子コンピュータの開発競争が激しくなっているのですが、大規模な量子コンピュータができてしまうと、いまインターネット上で私達の生活の安全性を守っている暗号技術は破られてしまうんですね。それに向けて、次の一手を考えるというところもやっています。このようにサイバーセキュリティ研究所は広い範囲に取り組んでいるところです。
小山薫堂が率いる企画会社オレンジ・アンド・パートナーズ、プランナーを経て独立。4歳上の兄・翔太が小学校時代に記していた謎の言葉「ヘラルボニー」を社名に、双子の松田文登と共にヘラルボニーを設立。異彩を、放て。をミッションに掲げる福祉実験ユニットを通じて、福祉領域のアップデートに挑む。ヘラルボニーのクリエイティブを統括。東京都在住。双子の弟。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。
株式会社ヘラルボニー代表取締役社長の松田さん。
全国の福祉施設でアート活動をされいてる作家さんとライセンス契約を結び、そのアートを洋服や靴などファッションから、街づくりにまで生かしていくという活動をされています。松田さんは4歳上のお兄様も重度の知的障害のある自閉症であるという。そんな松田さんに、知的障害とアートについてお聞きしました。
松田: 例えば、ウチの兄貴は日曜日の18時はこの番組を絶対見なきゃいけないとか、この昼は必ずお蕎麦食べなきゃいけないとか、強烈なこだわりみたいなものがあるんです。重度の知的障害のある人たちはそういう生活の中で生きてる人が多かったりするんですけど、その生活ってものが画面上のアートにも現れるんです。
例えば私が着てるシャツも、佐々木早苗さんという作家さんがボールペンでひたすら黒丸を塗って描いたものなんです。家にある当たり前の画材で、ひたすら丸を塗るとか、ひたすら点を打ち続けるとか、そういうものが柄になっていくっていう大きな面白さがあって、それをいま様々な形で展開してるんです。
今までは福祉施設さんや親御さんだと社会とコネクトするって非常に難易度が高かったんで、ヘラルボニーってものがあることによって、すごく素敵な作品を描いてるけど繋がれなかった人たちが、社会にフェアに繋がれるっていう状態になったらいいなと思ってます。
作家の佐々木早苗さんがボールペンで描いた柄が素敵なシャツ藤原さん松田さんには発想豊かな若者の代表としてお越しいただき、お2人に、ご自身のお仕事や活動の領域と、『サイバーセキュリティ』や『NICT』を掛け合わせたら、こんなことできるんじゃないか? という新しい視点でのアイデアを投げ掛けていただきました。 藤原さんと松田さんの、異なるジャンルだからこそ考えられる斬新なアイデアに、井上氏と盛合氏も大変刺激を受けたようで、議論が盛り上がりました!
2024年4月現在、NICTには約480名の研究者が様々な研究を進めています。
その研究をさらに発展させるために、その起爆剤となる新しい視点や新しい問いを持つ20代、30代の若き研究者を募集しています。
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