私たちの研究室では、動物の行動が起こる仕組みを、分子(遺 伝子)・細胞(脳)・個体のレ ベルで解明していくことを目指しています。
Drosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)の雄成虫には、腹部第5節の背板に付着する一対の筋肉、ローレンス筋(Muscle of Lawrence: MOL)が存在します。MOLは、支配運動ニューロンが雄決定因子のFruitless(Fru)タンパク質を発現する時にのみ形成される雄特異的筋肉です。同じDrosophila属の種でも雄がMOLを持たない種が多数あり、またMOLを二対持つD. subobscuraも存在します。この種差の原因を特定するため、fru遺伝子プロモータ5’側配列約6kb領域をD. subobscuraからクローニングし、D. melanogasterに導入して、その配列を用いてfruの強制発現を行ったところ、雌にMOLが形成されました。D. melanogasterの対応する配列にはMOLを誘導する能力はありません。そこで種間キメラの配列を作成することで、MOL誘導能を持つゲノム領域を1.5kbの範囲に狭めることに成功しました。今後は、さらにこの範囲に含まれるどのモチーフがMOL誘導に関わるのかを決定することが急務です。
J. Neurogenet. 29, 23-29.
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