研究成果
2016.8.8

宿主を操作する細菌の秘密兵器の実体が明らかに!

 世界中の昆虫の半数が感染しているともいわれる細胞内共生細菌、Wolbachia(リケッチア)は、宿主の雌を介して母系伝播をするため、感染雌を利するように宿主操作をすることで有名です。すなわち、雄の雌への性転換、雄殺し、雌の単為生殖、細胞質不和合(非感染雌が感染雄と交尾すると受精が起きない)といった宿主操作が知られています。キイロショウジョウバエが宿主の場合、Sex-lethal (Sxl)変異によって生殖幹細胞を失い不妊となった雌に、Wolbachiaは妊性を回復させます。このたび山元研究室の大手学研究員らは、この不妊治療効果を媒介するWolbachiaのタンパク質、TomOの同定に成功しました。TomOはToxic Manipulator of Oogenesisの頭文字をとって命名したものですが、共生を仲立ちするその機能に照らして「友」の意をも込めました。Wolbachiaが宿主操作に用いる分子の実体を解明したのは、本研究が初めてです。

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図:Wolbachiaは宿主の生殖細胞の小器官、P-bodyに局在し、
生殖幹細胞の維持因子をコードするnanos mRNAに働きかけて
Nanosタンパク質の増加をひき起す結果、生殖幹細胞の存続を促す

出典

Ote, M. et al. (2016)

Wolbachia protein TomO targets nanos mRNA and restores germ stem cells in Drosophila Sex-lethal mutants.

Curr. Biol. 26, 2223-2232.







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