テラヘルツ波スペクトルが測定できる高感度ヘテロダイン検出器

  • #Beyond 5G(6G)
  • #テラヘルツ波
  • #超伝導
  • #ホットエレクトロンボロメータミキサ
  • #ヘテロダイン検出器

特徴・優位性

  • 他の技術では困難な2~5THz帯域の微弱信号を、高感度・高周波数分解能、実時間でスペクトル測定

用途・応用分野

  • THz帯発振器の性能を精密に評価
  • 位相ロックや、ガスセルによる分子放射電波スペクトルの検出
実証実験済

概要

超伝導を利用した高感度ヘテロダイン検出器を研究しています。ヘテロダイン受信とは、受信信号(f1)と局部発振器信号(f2)をミキサによって低周波信号(f1-f2)に周波数変換してスペクトルを測定する方法です(図1)。

ミキサには、NICTで作製したホットエレクトロンボロメータミキサ(HEBM) (図2)、局部発振器には、THz量子カスケードレーザ(THz-QCL)又はマイクロ波の増幅・逓倍発振器(AMC)を用いています。HEBMの高速応答特性により、RF(Radio Frequency)とLO(Local Oscillator)の差周波が数GHzであれば信号を波としてとらえることができます。ミキサによって中間周波数(数GHz)に周波数変換された信号はアンプで増幅され、マイクロ波のスペクトラムアナライザでスペクトルが検出されます。NICTでは実際にこのシステムでTHz波スペクトルの検出に成功しています(図3)。

特徴は、THz波(特に他では測定が難しい2~5 THz)のスペクトルを高感度、高周波数分解能かつ実時間で正確に測定できることです。発振器出力は、数十pW程度以上あれば検出可能です。特定のTHz周波数で測定を希望される場合はご相談下さい。LOの確認が必要です。

応用として、THz-QCLの位相ロック(図3)や、ガスセルによる分子放射電波スペクトルの検出実績もあります(図4)。(2025年6月19日更新)

テラヘルツ波RFがビームスプリッタを通過し基準信号LOと合流、4K冷凍庫内のHEBMによって低周波信号に変換される。さらにRFとLOの差周波を波として増幅、スペクトラムアナライザでスペクトラムが検出される
図1 ヘテロダイン受信機の原理図
左上は準光学型ホットエレクトロンボロメータミキサのストリップ部分拡大写真。左下は準光学型の全体撮影。IF出力、バイアス入力部分と、超半球高抵抗シリコンレンズが確認できる。右上は導波管型ホットエレクトロンボロメータミキサの、デバイスブリッジ部分拡大写真。右下は導波管型の全体写真。正面にコルゲートホーンが確認できる
図2 HEBMデバイスとミキサマウント、準光学型(左)、導波管型(右)
左のPLL OFF、右のPULL ON、共に400メガヘルツに急激なピークのあるグラフ
図3 検出された3 THz-QCLのスペクトル(左)と位相ロックへの応用例(右)
複数の周波数帯で、それぞれ高さや特徴の違うピークを見せるグラフ
図4 検出されたメタノール分子からの2 THz帯放射電波スペクトル

関連情報

  • 文献: 25Y. Irimajiri, M. Kumagai, I. Morohashi, A. Kawakami, N. Sekine, S. Nagano, S. Ochiai, S. Tanaka, Y.Hanado, Y. Uzawa, and I. Hosako, “Development of a Superconducting Low-Noise 3.1-THz Hot Electron Bolometer Receiver,” IEEE Trans. THz Sci. Technol., vol. 5, no. 6, pp.1154-1159, Nov. 2015.

担当部門

Beyond5G研究開発推進ユニット テラヘルツ研究センターテラヘルツ連携研究室

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