フィンテックにおけるイノベーション創出を目指して
複数の異なる業種・組織が有する実社会の膨大なデータを統合して利活用する際に、プライバシー保護やデータ機密性の確保が課題となっています。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、国立大学法人神戸大学、株式会社エルテスは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」(研究総括:栄藤 稔)のもとで進めている研究課題「複数組織データ利活用を促進するプライバシー保護データマイニング*」(研究代表者:NICT 盛合 志帆、共同研究者:国立大学法人神戸大学 小澤 誠一 教授、株式会社エルテス 菅原 貴弘 代表取締役)において、暗号技術や機械学習を活用し、プライバシーを保護した状態で高速にデータ分析や異常検知を行う技術の研究開発を行っています。
例えば、金融業界においては、不正送金のリスクを低減させるために、各金融機関が個別に対策を講じることも重要ですが、組織横断的に送金履歴などのデータを分析することも有効と考えられます。しかしながら、プライバシー保護の観点等から金融機関を横断してのデータ共有は難しいのが現状です。
本シンポジウムでは、各金融機関のデータを互いに開示することなく、暗号技術を活用して安全に横断的なデータ解析を行える技術のご紹介等、本研究課題での進捗状況を報告するとともに、金融分野において不正送金検知や顧客に合わせた金利決定の支援に応用していくなど社会実装を進める上で何が課題になるか、多くの皆様からご意見を頂戴し、フィンテックにおけるイノベーション創出を目指した次のステップを議論したいと思います。多くの方のご参加をお待ちしております。
*課題番号 JPMJCR168A
プログラム | |
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13:00 | 開会挨拶 門脇 直人 (国立研究開発法人情報通信研究機構 理事) |
13:05 | 来賓ご挨拶 村井 英樹 (衆議院議員 前内閣府大臣政務官(経済再生・金融庁担当)) 赤阪 晋介 (総務省 サイバーセキュリティ統括官付参事官) |
13:15 | オープニングトーク 「金融庁のフィンテックへの取組み -これまでの実践と金融デジタライゼーション戦略を中心に-」 三輪 純平 (金融庁総合政策局 総合政策課 フィンテック室長) |
13:30 | 基調講演 「金融分野におけるセキュリティ:高機能暗号や機械学習」 宇根 正志 (日本銀行金融研究所 情報技術研究センター 企画役) |
13:55 | 成果報告 「複数組織データ利活用を促進するプライバシー保護データマイニング」 盛合 志帆 (NICT セキュリティ基盤研究室 室長) |
14:15 | 招待講演 「プライバシー保護データマイニングの法律上の位置付けと展望」 板倉 陽一郎 (ひかり総合法律事務所 弁護士、理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員主管研究員、国立情報学研究所 客員教授) |
14:40 | コーヒーブレイク |
15:00 | 招待講演 「分散台帳におけるデータ分析・プライバシー・犯罪対策のトリレンマ」 楠 正憲 (Japan Digital Design株式会社 Chief Technology Officer) |
15:25 | 招待講演 「真のイノベーションには非物理的対処が欠かせない」 大野 博堂 (株式会社NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長) |
15:50 | 休憩 |
16:00 | パネルディスカッション 「プライバシー保護データマイニング技術の実社会での活用について」 パネリスト :宇根 正志 (日本銀行金融研究所 情報技術研究センター 企画役) 板倉 陽一郎 (ひかり総合法律事務所 弁護士、理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員主管研究員、国立情報学研究所 客員教授) 楠 正憲 (Japan Digital Design株式会社 Chief Technology Officer) 大野 博堂 (株式会社NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長) 佐久間 淳 (筑波大学大学院 システム情報工学研究科 教授、理化学研究所 革新統合知能研究センター グループリーダー) 竹之内 隆夫 (日本電気株式会社 セキュリティ研究所 主任研究員) モデレーター:盛合 志帆 (NICT セキュリティ基盤研究室 室長) 「データ結合と秘密計算」 佐久間 淳 (筑波大学大学院 システム情報工学研究科 教授、理化学研究所 革新統合知能研究センター グループリーダー) 「NECの秘密計算技術」 竹之内 隆夫 (日本電気株式会社 セキュリティ研究所 主任研究員) |
16:50 | 閉会挨拶 小澤 誠一 (神戸大学 数理・データサイエンスセンター 副センター長、研究部門長、神戸大学 大学院工学研究科 教授) |
(敬称略)
宇根 正志(日本銀行金融研究所 情報技術研究センター 企画役)
金融サービスや金融業務におけるセキュリティと効率性の両立に資する技術としての高機能暗号や、近年注目を集めている機械学習に主に焦点を当てて、今後の活用やセキュリティ上の課題について説明します。
盛合 志帆(NICT セキュリティ基盤研究室 室長)
複数の異なる業種・組織が有する実社会の膨大なデータを統合して利活用する際に、プライバシー保護やデータ機密性の確保が課題となっています。NICTでは、JST CREST「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」のもとで、神戸大学、株式会社エルテスと連携して暗号技術や人工知能技術を活用し、プライバシーを保護した状態で高速にデータ分析や異常検知を行う技術の研究開発を行っています。本講演では、各組織のデータを互いに開示することなく、暗号技術を活用して安全に横断的なデータ解析を行える技術のご紹介等、本研究課題での進捗状況を報告いたします。
板倉 陽一郎(ひかり総合法律事務所 弁護士、理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員主管研究員、国立情報学研究所 客員教授)
プライバシー保護データマイニング(PPDM)に属する技術については、近年の個人情報保護法制の改正において匿名加工情報制度が取り入れられたことによって、適切な加工のための手段としての法律上の位置付けが与えられました。また、PPDMの中でも注目が集まりつつある秘密計算技術は、匿名加工の手段として用いられる技術とは異なり、安全管理措置の手段として考えられる他に、立法論を含めれば、個人情報や営業秘密の取扱いに関する規制自体への影響も考え得るものといえます。本講演では、これらの法律上の位置付けを整理すると共に、新たな解釈上・立法上の提案に連なる活動についても可能な限り紹介します。
楠 正憲(Japan Digital Design株式会社 Chief Technology Officer)
暗号資産にはじまった分散台帳は、貿易金融、債権発行など組織を超えた金融事務で活用が進んでいます。分散台帳を用いた組織間でのデータ共有は効率的な自動処理やデータ分析の可能性を広げる反面、プライバシーや機密保護との両立が課題です。暗号資産で実現しつつある匿名性はAML/KYCといった資金洗浄対策が難しく、匿名通貨の扱いは規制されました。本講演では暗号資産や分散台帳の動向を紹介し、金融分野におけるデータ分析とプライバシー、犯罪対策のトリレンマを概観します。
大野 博堂(株式会社NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長)
サイバーセキュリティやAIといったキーワードへの対応においては、とかく、ハード・ソフト・回線制御といった物理的対処が中心となりがちです。ただし、これらを単に組織に組み込むだけでは、有意な対応態勢には程遠いのが実態です。物理的対処を有効に機能させるためには、組織間での連携態勢の確立を含めた組織的対応態勢の整備や、実効性を高めるための拠り所となるマニュアル類の整備が欠かせません。ここでは、金融機関における対応事例などを参考に、金融業界における取組上の課題や対処方針について提起します。
宇根 正志(日本銀行金融研究所 情報技術研究センター 企画役)
板倉 陽一郎(ひかり総合法律事務所 弁護士、理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員主管研究員、国立情報学研究所 客員教授)
楠 正憲(Japan Digital Design株式会社 Chief Technology Officer)
大野 博堂(株式会社NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長)
佐久間 淳
(筑波大学大学院 システム情報工学研究科 教授、理化学研究所 革新統合知能研究センター グループリーダー)
竹之内 隆夫
(日本電気株式会社 セキュリティ研究所 主任研究員)
盛合 志帆(NICT セキュリティ基盤研究室 室長)
プライバシー保護データマイニングシンポジウム事務局
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