この大きなお皿は雨水をためるためでも、お天気を調べるためでもありません!
とても遠い星から来る『電波』をキャッチしています!!
この34mアンテナは、それまであった26mアンテナの後継者として、1988年(昭和63年)に建てられました。
これまで鹿島宇宙技術センターには30mや26m、18mといったいろいろな大きさのアンテナがあり、人工衛星との通信実験やTV信号を伝送する技術の開発に成果をあげてきました。
その中でも特に26mアンテナは、お皿がでこぼこしていなくてとてもきれいなカーブで、効率良く電波を集めることができるアンテナだったので、天体や宇宙空間の物質からの自然の電波を受信することによって天体や宇宙の性質や成り立ちを研究する『電波天文学』に使われるようになりました。
そもそも電波ってなあに?
私たちがふだん見ている「光」は電磁波と呼ばれるものの一部です。電磁波にはレントゲンなどに使う「X線」、日焼けの原因になったり消毒などに使われる「紫外線」、私たちが普段目にする「可視光線」、リモコンや暖房などにも利用される「赤外線」、そして携帯電話やテレビなどの情報を遠くへ運ぶ為に使われる「電波」があります。可視光線以外は私たちの目には見えませんが、すべて光と同じ「電磁波」の仲間です。
電磁波はその名前の通り、波の性質を持っています。でも、X線や赤外線などは同じ電磁波の仲間なのに、ずいぶん性質が違いますよね。じつはこうした様々な電磁波で違っているのは、波一つ分の長さ「波長」です(ちなみに、波の山の高さは光の強さに相当します)。X線は短く、紫外線、可視光線、赤外線、電波と順に「波長」が長くなります。たとえば、私たちがふだん目にする可視光線の波長は0.00038ミリメートル0.00078ミリメートルぐらい。そして鹿島宇宙技術センターの34mアンテナがキャッチする「電波」は、波長が1ミリメートルより長い電磁波です。
みんなはハワイが日本に近づいていると聞いたことがあるかもしれんが、遠い遠い星から届く電波をキャッチして位置と時間をはかるVLBIという研究によってその事実をつきとめたのは、鹿島宇宙技術センターの34mアンテナなんじゃよ!
VLBIとは、はるか数十億光年の彼方から地球に届く電波を利用して、数千kmも遠く離れた場所の距離を、わずか数mmのちがいで測る測量技術です。
VLBI(ブイエルビーアイ)で何がわかるの?
VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)とは、はるか数十億光年の彼方にある電波を発する星から放射される電波を、複数のアンテナで同時に受信し、その到達時刻の差を1000億分の1秒の違いで精密に計測する技術です。この到達時間の差から特殊な計算によって観測地点の位置が分かります。とても精密な観測ができるので、数千km離れたアンテナの距離をわずか数mmのちがいで測ることができます。
鹿島宇宙技術センターには直径34mのアンテナがあり、このVLBIの実験で活用されています。1990年から続けている観測では、鹿島34mアンテナとハワイ9mアンテナとの間のVLBI観測により、ハワイが一年間にやく6.1cm動いて日本に近づいていることがわかりました。このように大陸の移動を測ることは、正確な地図を作ったり、カーナビが正しく使えることに役立ちます。
地球は1日に一回転していて、これを自転といいます。自転の速さ(1日の長さ)や自転の軸の向き(北極の向き)は月の引力、大気や海の動き、つまり強い西風(偏西風)や海流、あるいは地球内部の動きによって変化します。はるかかなたの天体を基準に測量を行うVLBIでは、この地球の自転や姿勢に関する情報も得ることができ、地球の一日の長さは、数ミリ秒ほど揺らぎながらゆっくりまわったり、はやくまわったりしていることがわかりました。この情報は地球内部の研究や人工衛星の制御、うるう秒の決定などに欠かせません。