宇宙空間は、真空で何もないところだと思われていますが、 実は、太陽系空間には、「太陽風」と呼ばれる、電離した粒子の風が常に吹いています。 太陽風は、太陽の上層大気(コロナ)が太陽の重力を振り切って流れ出したものです。 最も外側の惑星である冥王星の軌道よりずっと外まで吹いていると思われています。
地上の風と太陽風との比較地上の風 | 地球近傍の太陽風 | |
密度 | 1立方cm当たり約10の19乗個 | 1立方cm当たり約5個 |
速さ | 20 m/秒(台風) | 400,000 m/秒 |
太陽面で爆発が起こると、太陽風の津波が生じます。 この津波が、約4日かけて地球に到達すると、 太陽風と地球の磁場(地磁気)との相互作用によって、 磁気嵐が起こったり、オーロラが光ったりします。 したがって、 太陽風を宇宙空間で地球に到達する前に測定すれば、磁気嵐やオーロラの予報ができることになります。
この測定に適したところが、太陽と地球との間のラグランジュ点(L1)とよばれるところです。 ここは、太陽と地球の重力、そして、遠心力が釣り合うところで、 太陽と地球との間をだいたい100:1にわけるところです。 地球からの距離は150万km(地球の半径の約235倍)です。 ACE衛星はここで、太陽風の密度、速さ、磁場などを測定しています。
磁気嵐は、濃くて、速い太陽風が地球の磁場にぶつかったときに起こります。 磁気嵐の時には、宇宙空間には高エネルギー粒子があふれ、人工衛星の搭載機器を壊したり、 姿勢を変えたりすることがあります。
磁気嵐に似た現象としてサブストームがあります。 サブストームはオーロラ発光現象で、太陽風の磁場が南向き成分をもつと生じやすくなります。 このとき、地磁気が大きく変化し、送電線やパイプラインに誘導電流が流れます。 この電流が大きい場合、電力供給に問題が生じることがあります。 また、長期的には、パイプラインの腐食を進めます。
現代の生活は、宇宙空間の人工衛星なしに語ることはできません。 人工衛星を利用した放送や、飛行機、船舶、自動車の航行システム、防災無線システムなど すでに実用化されています。 今後、人工衛星を利用したさまざまなシステムの普及は間違いないでしょう。 私たちは、宇宙空間での人工衛星の安定性をはかるため、 また、地球上の自然電磁環境の変動を予測するため 宇宙環境の予測(宇宙天気予報)をおこなっています。