鹿島26mアンテナ (1968-2003)

26m antenna 26m antenna old

設置の経緯

鹿島26mアンテナは1968年に送受信機能を持つ衛星通信実験用のアンテナとして設置された。 当初ニアフィールドカセグレンアンテナとして建設され、途中から鏡面修整カセグレンアンテナに設計変更された[尾崎,1970]。 1960年代は、電波天文学が大きな発展を遂げ、世界観を変える大きな発見(1963年クエーサの発見、1965年宇宙背景放射(3K)の発見、1967年パルサーの発見)が相次いだ時代であった。 日本において電波天文観測用の大型アンテナがなかったこの時代、東京天文台などから電波天文学者(敬称略:赤羽賢司、森本雅樹、大師堂経明など)が鹿島を訪れ、26mパラボラアンテナの空き時間を使って電波天文学の研究が行われた。 1975年より超長基線電波干渉計(VLBI)に関する研究開発が開始され、26mアンテナは日本で最初のVLBI局として米国NASAの主導する地殻動力学プロジェクト(Crustal Dynamics Project:CDP) に参加し、プレートテクトニクスの実証、TDRS衛星VLBI実験への参加、世界初の南極VLBI実験成功(1990)など数々の成果を残した。
鹿島26mVLBIアンテナの諸元
形式 鏡面修整カセグレン,Az-Elマウント* 開口直径26m
総重量512トン(鉄筋コンクリート基礎を除く)
周波数Sバンド2.20〜2.32GHz(利得52.8dB)
(利得) Xバンド7.86〜8.60GHz(利得64.8dB)
鏡面精度0.71mm(rms)
駆動速度0.002〜1.0°/秒
製造年月1968年10月
製造者日本電気,三菱重工業,大林組
*方位角(Az)軸・仰角(El)軸周りにアンテナが回転する。

プレート運動の検出

1980年頃からNASAの地殻動力学プロジェクトCDPや、地球回転計測IRISプロジェクトに参加し国際的なVLBI観測が活発に行われるようになった。 その成果の一つは、プレート運動の検証である。アラスカ、ハワイそれぞれとの距離が精密に測定され、地球表面のプレートの動きが実際に測定されるようになった。
baseline Measuerment Kas26-Gilcreek
Kas26m - Kauai

1992年以降の運用

26mアンテナの運用は、1992年に当時の通信総合研究所(現NICT)から国土地理院に所管替えされ、日本の測地VLBI観測の拠点として国際・国内観測に参加して、国際測地基準系の構築と日本の測地基準系改定に大きな役割を果たした。
日本の経緯度の測定についての基準を世界標準(世界測地系)に適合させるため、2001年6月測量法の改正(2002年4月施行)により日本の経緯度の変更が行われた。 長年のVLBI観測によって世界測地系の中での位置が精度良く求められていた26mアンテナの位置は、この改定の際の基準として使用された[辻,2004;高島,2008;]。
アンテナな2002年5月まで運用され、2003年に解体された。 現在、26m アンテナ跡地の座標点にはモニュメントが設置されている。
26m アンテナ跡地の座標点に設置されているモニュメント。
26m Remaining Monument 26m antenna

参考文献