第1回IVS CRL技術開発センターシンポジウムを開催しました

(2001年9月19日鹿島にて開催)

近藤哲朗 

去る9月19日、鹿島宇宙通信研究センターでVLBIの技術開発に関するシンポジウムを開催しました。シンポジウムの名称として使用しているIVSというのは2年前に発足した測地VLBIの国際団体の事でInternational VLBI Service for Geodesy and Astrometry の略称です。日本語では「国際VLBI事業」と呼んでいます。我々CRLのVLBIグループはIVS準備の段階から積極的にその発足に貢献してきました。発足後は評議委員会の委員も輩出しています(現在は小山さんが評議委員です)。そのIVSの中で、CRLは技術開発センターの一つとして指名されました。これはCRLの今までの高いVLBI技術開発力が認められたものです。このIVSのもと、VLBIの国際規格統一への努力を行い、VLBI標準インターフェース規格制定を実現しましたが、こうしたIVSの活動が評価され、今年の電波の日にはIVS評議委員会が大臣表彰を受賞しました。

さて、私たちは、IVS技術開発センターとしての日本でのVLBI技術開発を世界に発信するため「IVS CRL-TDC News」というニュースレターを年に2回発行しています。このニュースレターは今まで、CRLのVLBI関係者および外部の一部の人を交えた報告会での報告事項を元に発行していました。独立行政法人化を機会にこのスタイルを改め、シンポジウムとして開催し、広く講演を募集することにしました。今回の開催が、その新スタイルでの第1回目の開催です。講演申し込みが何件来るのか心配しましたが、当初の予想を上回る講演申し込みがあり、急遽、半日開催を午前中からの全日開催としました。最終的に講演数は21件に達しました。(プログラムはここをクリックしてください。集録はここをクリックしてください。)

地方での開催と言うことで、午前10時半のシンポジウム開始時には、出席者が少なく主催者として気をもみましたが、午後には40名近くのVLBI関係者が集い、午後6時まで休憩時間なしのハードスケジュールにも関わらず、活発な議論、意見交換を行うことができました。

午前中は、データ解析、現状報告のセッション、午後は具体的技術開発報告、および実時間VLBI等、最先端のVLBI技術報告が行われました。「衛星、深宇宙」のセッションでは、我が国の火星探査機「のぞみ」が地球を利用したスイングバイにより、火星への到達軌道に乗ることができるが、その際に「のぞみ」の精密位置決定がミッションの成功の可否を握ることになるとの報告があり、相対VLBI技術の今後の重要性が指摘されました。また、宇宙研の次期スペースVLBI構想の発表では、日本のVLBIコミュニティが現在非常に仲が良いが、その良好な関係を更に発展させて、計画を実現させたい旨のお話しがありました。最後は、大型アンテナの世界展開構想も語られ、大いに夢を膨らませました。マイク、スピーカーを必要としない小さな会議室で開催したことが、結果として議論しやすい雰囲気作りに貢献したようです。

終了後、会費制による懇親会を開催し、大いに懇親を深めました。VLBIは1局だけでは観測できないというその原理から、本質的に各研究機関間の良好な協力関係が求められます。シンポジウムの開催により、関係者が一同に会すること、さらに懇親会により懇親を深めることは、今後の協力関係の発展、研究の加速のために重要な役割を果たすと信じています。次回は、来年3月に開催を予定しています。最後に、シンポジウム開催にあたり、ご協力をいただきました鹿島センター管理グループの方々に御礼申し上げます。ありがとうございました。

シンポジウムの様子
懇親会の様子

2001年11月20日更新