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ろう者が安心して生活できる社会を目指して 〜映画『ゆずり葉』の製作〜(2/4)

2.全国的な上映会の実施

映画が完成すると、次はいよいよ公開となるわけですが、私たちはここでもひとつの壁にぶつかりました。それは、上映する場所の問題です。映画館としてはなるべく採算が取れるものを上映したいのですが、そういう意味で『ゆずり葉』は決してメジャーな作品ではなく、さらに動員数も読めないため、積極的に手をあげるところはなかったのです。そこで私たちは大手映画館での上映を諦め、全国各地で上映会を開催する、という方法を取ることにしました。

この上映会方式が、結果として吉と出たのかもしれません。加盟団体や支援団体の協力のもと、全国に広く呼び掛け、関心を持っていただいた先々で上映会を行っていたところ、各所から思わぬ反響を得まして。一度観ていただいた方がリピーターとなって、また違う上映会を地域で企画し、それがまた波及するという、想像以上のムーブメントが全国的に広がりました。おかげさまで、現在までに全国約600か所の会場で上映し、上映回数は1000回以上、観客動員も17万人を突破しました。最近では日本を飛び越え、韓国やキルギスなど海外でも上映が行われています。

現在は、行政関連団体や、小中高校の人権啓発の授業などでも利用いただいており、「いい映画だった」「勇気をもらえた」というコメントのほか、「ろう運動について理解できた」「耳が聞こえないことの大変さを、この映画を観るまで知りませんでした」「手話を学んでみたいと思った」など、全国からたくさんのご感想いただいています。

聴覚障害者というのは、外見だけではわかりにくいので、まわりの人たちが「耳が聞こえない」ことに気づかなかったり、正しく理解できないということがあります。この『ゆずり葉』には、例えば「緊急時に電話で情報を伝達することができない」など、どういうシチュエーションでどのような困難が生じるのかということが、エピソードとして随所にちりばめられているので、映画を通して、「気づき」のきっかけになっていただければ大変嬉しく思います。

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