脳性まひや脊髄性筋萎縮症(SMA)、頸髄損傷などにより重度の身体障がいがある人は、手や体、顔(目や口)のわずかに動かせる部分を使って、家電やパソコンを操作します。
例えば、手や指を動かせない人が室内照明の電源をオン・オフにする場面を想像してください。もし、その人が首を少し傾けることができる人ならば、車椅子やベッドの柵にアームを固定し、ちょうど頬の部分にあたるように、物理的なスイッチ(ボタン)を置いておきます。首を傾けることにより頬でスイッチを押し、スイッチと接続された学習リモコンから赤外線の信号を飛ばし、照明の電源をオン・オフと切り替えることができます。
スイッチから学習リモコン、各家電への信号の流れ
スイッチは上の図のようなプッシュボタンの形状のもののほか、触れるタイプ、紐を引っ張るタイプ、スティックを倒すタイプ、握るタイプ、吐く息や吸う息を検知するものなど、使う人が動かせるからだの部分に応じて様々なものがあります。
学習リモコンとは、一般家庭では複数のリモコンの機能を1つのリモコンに集約させるための器具です。あらかじめ照明やテレビなど、操作したい家電の動作内容を登録して使用します。重度の身体障がい者が使う場合は、その機能を活用して、スイッチを押したときにどの家電を作動させるか登録しておきます。 (このようなシステムを環境制御装置ということもあります)
パソコンを使うときを例にあげると、スイッチとスイッチインターフェイスとパソコンをつなぎます。パソコンにはオンスクリーンキーボードを表示させます。スイッチを押すと、画面上のオブジェクトが順にハイライトされますので、目的のオブジェクトがハイライトされたときに、スイッチを押すことでオブジェクトを選択することができるスイッチコントロール機能を使います。少ない動作で複雑な機器を操作できるしくみで、現在ではiPhoneのようなスマートフォンの一部にも標準搭載されています。
そんなふうにスイッチで家電やパソコンを操作しているのですが、身体の動く場所や動かし方がそれぞれ異なるため、スイッチは様々な形状の中からその人に適合したものを購入する必要があります。また、その人がどんなふうにどこを動かせるのか熟知している家族や医療スタッフでなければ、車椅子やベッドの柵などにちょうどよい高さで使いやすい角度でスイッチを設置することは難しいという問題もありました。外出先では思うようにスイッチを設置できないのです。また、操作したい家電が増えれば、さらに別のスイッチを用意しなければならないという不便さもあります。