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ICT時代だからこその「ヘレンケラースマホ」
-可能性への挑戦! 人間の新しい情報チャネルは、盲ろう者用電話の体表点字から- (3/4)

3 課題と今後の展開

【3Dプリンタの今後の可能性】
  2001年10月に、NTTドコモがテレビ電話機能を備えた携帯電話FOMAを発売しました。この携帯電話で遠くにいる晴眼者に電話を掛け、テレビ電話機能を用いて私の目の前の光景を写した画像を見てもらい説明してもらいました。この機能に「テレサポート*6」(テレビ電話視覚障害者遠隔支援)と名前をつけました。これも重要なことですが、人を介さないで自分自身で理解できるようにすることがなお大切だと考えています。

  私は、80歳になる全盲の視覚障害者です。失明前の15歳の弱視の頃に見た、あの富士山の美しい姿を、この手で触れてみたいと思い続けてきました。それから、眼前の光で見えるもののすべてを、例えば、望遠鏡で星を、顕微鏡で微生物などのレンズに映るものさえも手の触覚で分かるようにしたいと思っています。

  私は、国土地理院の地図の3Dデータを用い、富士山、御岳山、東京の一部分の立体地図、そのほか、家の形、大きなサイコロなども印刷したことがあります。確かに、全盲の私には、これらの立体印刷物で富士山の形、噴火口の直径と深さ、東京の山手線の駅近くの立体地図などがよく分かりました。しかし、知りたい物がある度に、このような容積を占める物体が製造されるのでは困ります。また、印刷には、数十分から数時間を要し、印刷材料費もかかります。

3Dプリンターによって制作された富士山
  3Dプリンターによって制作された富士山

【「ヘレンケラースマホ」を基に触知できる3Dディスプレイの開発が可能】
  そこで視覚障害者も、視覚のある人のように、何とか三次元ディスプレイで、必要な画面だけを見て、理解を深められればと考えました。そうすれば、画像の拡大、縮小が自由で、見る方向なども自由に選べます。その上、データだから、保存に面積も容積も不要です。こんなに便利なことはありません。私の経験では、このようなシステムを開発するには、ロボットアームなどを応用すれば、現在なら、充分に開発できるのではと考えています。ハードとソフトの開発により、このような願いも順に実現できるのです。このような構想に「ヘレンケラー3D触知ハンズ」と名付けました。開発を進めれば、視覚障害者、盲ろう者に役立つので、これまでの点訳ボランティア、朗読ボランティアのように、技術のある人や団体が、社会貢献として尽力していただきたいと思っています。恩恵を受けるのは、世界的に見れば、盲ろう者と視覚障害者で数百万人以上に相当するはずです。

  私は、約20年前の1994年の雑誌TRONWARE27号、1997年の同47号において、コンピュータ上で作られた20種以上の仮想物体に手の触覚で触れた体験を発表しています。それから、約20年も経た今日では、以前より技術は、圧倒的に進歩しています。NHK放送技術研究所では、既にそれらの実験を行なっており、三次元で触知できる3Dディスプレイの開発が可能と考えています。

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