補聴器の基本構造はいたってシンプルで、集音(マイク)・増幅(アンプ)・出力(スピーカー)の3つの部品で構成されています。20世紀初頭には弁当箱大の補聴器が開発されていましたが、その進化は小型化と音質改善の歴史でした。一般的に利用者にとって、補聴器は隠したい物であり、長時間の装着時には疲労感なども出てきます。また、マイクは周囲の音すべてを拾うので、騒音が大きいところでは不要な音が邪魔に感じることがあります。
補聴器の小型化は各部品の改良、省電力化により小さいサイズの電池を選択できることによって進み、1990年代には耳穴にすっぽり入るサイズが実現されました。そして2000年に入り、音質向上の技術的転換点となった「アナログからデジタル化」が進み、ICチップの開発によって格段に性能が向上しました。集音された音を増幅するだけではなく、例えば周囲の騒音を出来る限り抑制し、話し手の声を聞きやすくすることが可能になりました。また、デジタル化により、使用時間や使用環境などの記録(ログ)が取れるようになり、使用者の利用状況に合わせた補聴器調整を行うこともできるようになりました。
現在では、ICチップの更なる進化によって、使用環境に合わせて補聴器が最適な音設定を自動的に選択することで、使用者が手動で調整する必要もなくなってきています。小型化と高性能化によって、聴覚障害者の生活がより快適なものとなるよう、日々研究開発を続けています。
耳かけ型タイプのフォナック製品。
右から1978年発売アナログ世代の補聴器、2005年発売第一世代のデジタル補聴器、一番左が2016年発売最新世代のデジタル補聴器と、40年で体積比4分の1まで小型化が進んでいる。