「喚語屋言兵衛」をリリースしてからは、さまざまな反響をいただいております。ひとつは失語症者の生活スタイルに対する意識の変化です。失語症でコミュニケーションが上手くいかないという失敗体験があると、どうしても家にこもりがちになってしまいます。その一方で、失語症の治療のためには、同じ症状の人と交流することも効果があるといわれています。というのも、失語症を乗り越えて、ある程度回復している人など、いろんな段階の症状の人に出会うことで、回復に向けた希望を持てる第一歩になるからです。
そのため、特に家族や介助者は、「どうやったら外出に対して前向きになってくれるのだろう」と心配が絶えないと聞きます。そうした中、「喚語屋言兵衛」を持参していることが自信につながったという声もいただくようになりました。もしかしたら、外国に行く時に分厚い辞書ではなく、電子辞書を持っていけるような感覚に近いのかもしれません。また、写真を撮って単語帳を作り上げる楽しさがあるという声も聞きます。また、当事者だけではなく、言語聴覚士など介助者の皆さんからも、「喚語屋言兵衛」を使うことが言語回復の手助けになる訓練ツールとしても有効だろうと評価いただいております。
ICT端末であるタブレットやスマートフォンは、ハンディを補ううえでも有効なツールです。「喚語屋言兵衛」の普及にあたっては、言語聴覚士が読まれる専門誌に広告を出すなど、まずは認知度の向上に努めています。また、「手書き屋言兵衛」という、失語症でも使いやすいようなタブレットやスマホ上に文字を手書きできる、無料の意思伝達用のアプリもリリース予定です。失語症者は、日本全国に推定20万人から50万人いるともいわれています。今後も言兵衛シリーズが、すべての失語症者の社会参加に向けた後押しとなれるよう、アプリケーションのブラッシュアップに取り組んでいきたいと思います。