最初に、発達障害児向けの放課後等デイサービスをはじめることになったきっかけから教えてください。
中村尊裕さん(以下、中村):私は所得や地域による教育格差をなくしたいという想いから、大学在学中に同立有志会を立ち上げました。当時から発達障害と診断されるかどうかの狭間にいる、いわゆるグレーゾーンに該当する子どもたちが塾に通っていたんです。とはいえ、私たちは発達障害の専門家ではないので、すぐに発達障害の子ども向けの教育プログラムをつくろう、とまではなりませんでした。
転機になったのは、発達障害のお子さんを持つ、一人の親御さんの言葉でした。その方から「いつか子どもの首を絞めないといけないときがくると思うから、何とかしてもらえないか」という相談をされました。その親御さんは、自立できない子どもを残しては逝けないと、苦しい胸の内を打ち明けられたわけです。これには、衝撃を覚えました。
身体の障害であれば施設に入りやすいのですが、発達障害のグレーゾーンですと支援が十分ではありません。また、定型発達の子どもと比べると学校生活に馴染まない子どもも多いため、自己肯定感が育たず、引きこもりやうつ病になるケースもあります。発達障害の子どもたちの置かれている状況を知るにつれ、これは何とかしなければいけない問題だなと感じ、2017年から放課後等デイサービス「学習サポートscrum」をはじめました。
他の放課後等デイサービスとは、どのような違いがあるのでしょうか?
中村:学習支援を軸にしているところです。学習サポートscrumをはじめるにあたって、全国の放課後等デイサービスを見学したり、事例を調べたりしました。すると分かったのは、ほとんどの場合、おやつを食べながらテレビを見たり寝転んだりしているだけだということ。私には、ただ時間を潰しているようにしか見えませんでした。私たちは、放課後等デイサービスを「得意なことを伸ばせる成長の場」にしたいと考え、一人ひとりの個性にあわせた指導を行う方針にしました。その方針をもとに、教材の開発から教育プログラムの設計まで、ゼロから取り組みました。
発達障害の学習傾向を研究し、エビデンスに基づく療育で、発達障害の生徒を支援している中村さん