千野さんは、自動車のモーター制御技術や自動運転システムの研究開発に携わっていたそうですね。なぜ、「あしらせ」を開発することになったのでしょうか?
千野:きっかけは目が不自由だった妻の祖母が、川に転落して亡くなったことでした。そこから視覚障害について調べたり、実際に視覚障害者の方たちと交流したりするようになりました。その中で、健常者にとっては無意識レベルになっている「自由な歩行」が、視覚障害者の皆さんにとってはそうではない、ということを知って、これは社会課題として何とかしなくてはと考えました。
それから社外活動のようなかたちで、技術者の友人たちと「あしらせ」の原型となる構想を練りはじめました。プロトタイプが完成したときに、Hondaが主催していた社員の起業を応援する新事業創出プログラム「IGNITION」に挑戦し、我々は起業第一号として、株式会社Ashiraseを設立しました。
現在、どのようなメンバーが開発に携わっていらっしゃるのでしょうか?
千野:自動運転制御の開発に携わっていた技術者や、パソコンの回路設計やロボットの開発ができる技術者、大学生のエンジニアなどが携わっています。視覚障害者を取り巻く社会課題の解決をしたいという想いや、スタートアップで新価値を想像したいという想いなどを持つメンバーが集まっています。
2021年6月に起業した千野氏。社長そして研究者として「あしらせ」の開発を牽引している